表題にもなっている「伊豆の踊り子」は多くの教科書に載っており川端の代表作といったふうにみられがちであるが、実はこの文庫本で特に読むに値するのは「踊り子」ではなく、「禽獣」ではないかと思われる。鋭利な刃物のような研ぎ澄まされた川端の視線にえぐりだされた世界は短い文章の中に凝縮され、未解決のままほおりだされている。生まれつき孤独で愛情がなんたるか体験したことのない男の偏執的な「禽獣」への執着・愛情。それは一見わかりにくい屈折であるが、本当の孤独を感じたもののみが描き出せる、愛情の逆説的表現なのである。 この新潮文庫に収められている作品は他に三島由紀夫が往復書簡のなかで誉めていた「抒情歌」と「温泉…
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