紙の本
予想外に軽く爽快な本格物
2002/02/12 18:27
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投稿者:ひろぐう - この投稿者のレビュー一覧を見る
1987年の作とは思えない古色蒼然とした本格物。名門の家系と姻戚関係のある多数の人物が登場し、一族の宗主の遺産をめぐって陰湿な連続殺人事件が起きる。そして、事件を解く鍵は一族の過去の歴史の中に秘められている…。
まるで横溝正史の世界だが、読んでみると予想外に軽く、読後感は爽快なものだった。それは作者の本格推理小説に対するひとかたならぬ愛情と造詣の深さが、決してスノッブでひとりよがりにならずに、良質なエンターテイメントとして結実しているからだろう。プロット自体はとりたてて優れているというわけでもない。しかし、肩ひじ張らないユーモアあふれる語り口で、魅力的なキャラクタと設定を自在に描ききった作者の手腕は素晴らしい。
紙の本
スケルトン探偵シリーズ、堂々の開幕
2002/02/27 23:05
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投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公のギデオン・オリヴァー教授は、後1000年といった死体(骨)を見ることが大好きな人類学者。生々しい新しい死体は苦手だが、物言わぬ骨から情報を得ることに関しては、非情に高い能力を持っている。
世界中の捜査官に対して講演するために、FBIの友人と共にフランスに滞在していたところ、白骨化した死体が見つかり、さらには事故と思われる状況で人が潮が満ちて流れ込んできた流砂に飲み込まれて溺死する。
主人公が専門的な知識をあてにされ、事件に巻き込まれ、過去のナチスによる占領時の出来事と、現代の事件との繋がりが明かされていくというストーリー。
非情にアカデミックで、高い分析能力を持っている主人公が、骨という物証から得られる情報でもって推理する。この過程の部分がとても面白いシリーズ。
事件の舞台が変わるごとに、新たに登場してくる警官のキャラクターも魅力的。作者が警察に対して、もしくは個人の警官に対して非情に好意的であることが反映されているのかもしれない。
紙の本
骨の存在感
2001/03/30 00:29
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投稿者:松内ききょう - この投稿者のレビュー一覧を見る
とある老富豪の死。直前、彼に呼び寄せられていた親族達。葬儀の直後、発見された第二次世界大戦中のものとおぼしき骨。そして親族の一人の死。人類学教授ギデオン・オリヴァが鑑定する骨を通して、語られる真実とは?
オリジナリティーあふれる切り口がなんともいい味を出している。孤独な骨のその存在感と、老富豪の置かれた環境との描写がまた秀逸。なぜ好きだかわからない、でも好き、そしてあまり人には勧めたくない、独占したい、そういう小説だ。
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スケルトン探偵シリーズの名作。専門用語はちんぷんかんぷんだが、鑑定結果で二転三転する推理が面白い。個人的にはジョリ警部が好き。
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スケルトン探偵初登場。アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。
検死医ものが好きな人なら、きっと好きになるんじゃないかな?
主人公は人類学者。骨相学の専門家。残された骨から、犯人を割り出していきます。この薀蓄が楽しい。
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現在と過去(ナチ時代)の殺人を死体の骨から解き明かしていく大スケール探偵小説。最初の始まりが好きです。
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フランス、モン・サン・ミシェル湾の干潟で、体の不自由な老人が満ち潮の危険に曝され命を落とした。老人の名はギヨーム・デュ・ロシェ。かつてレジスタンスの英雄だった富豪で、同日自邸のロシュボン館に親族を呼び寄せていたのだった。今回の招集の目的が知らされないまま彼の死に戸惑う親族たち。そして、館では古い人骨が発見され、親族の一人が急死するという不穏な出来事が続いた。フランス警察に講義に来ていた人類学教授のギデオン・オリヴァー博士が捜査に携わるが…。やっと読めた“スケルトン探偵”シリーズ。しかもこれはシリーズの1作目ではないらしいのだが(古本で)入手できたのがたまたまこの「ミステリアス・プレス文庫1」だった。シリーズものはできるだけ1作目から読むことを信条にしているものの、今回はよしとした(適当〜。面白かったからよし!)っと脱線。本書の内容は、序盤に出てくるデュ・ロシェ家の人々の名前と相関(親戚関係がややこしい)を覚えるのがちょっと苦だっただけで、あとは不満なし。主人公のギデオン・オリヴァー教授が人類学研究者として人骨を見ていろいろと推理していくというスタイル。人骨のスペシャリストが人体や骨を評価分析する場面も(こういう場合、某書のように蘊蓄だらけで読みにくくなりがちだがそうならず)くどくなくて専門的知識のない素人にも噛み砕いて記述されている(ワトソン役のジョン・ロウ(FBI捜査官)氏が共に行動しているため、分かりやすく説明するという設定が効いている)。むしろ蘊蓄を知る楽しみが付随しているのがいい。アメリカ人(ギデオン、ジョン)とフランス人(ジョリ警部)間で互いに生じる摩擦や先入観がユーモラスだ。特に博士と警部が持論の歩み寄りを見せ互いに認め合ったころ、「ギデオン」「ジョリ」とファーストネームで呼び合い始めたあたりのぎこちなさが個人的にツボ。ほかにも、眉間にしわを寄せずにすむユーモアがあちこちにちりばめられている。ギデオンが導き出した第一の推論、そしてみずからそれを覆した第二の推論を展開していく過程は、オーソドックスだからこその確実さを持っていて、初読の作者ながら安心して読み進めることができた。この安定感は意外に簡単には味わうことができないいぶし銀の技かも(いいすぎ?)。オーソドックスだからありがち=退屈、という訳ではなく、意外性はちゃんと用意されているので、最後までわくわく感は持続される。続き(というか1作目以降の前作)を読みたくなる魅力的なシリーズに出会えてよかった♪
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自然人類学の教授が骨から殺人事件を推理するというもの。ギデオン教授シリーズの3作目らしいが、1、2作目は読んでない。
なんか最近の海外ドラマで似たものがあった気がするが、こちらは80年代の作品みたいだから、こちらが先。
とはいうものの、イマイチかなぁ。
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今は亡きミステリアス・プレス文庫で購入。買ったのは20年前なのねー、うわー。
この本から始まって、いまだに大好きなシリーズ。
シリーズ4作目から始まった邦訳だけど、前を読んでなくても十分に楽しめる。謎解きの面白さもスケルトン探偵ことギデオンの博識もキャラも。
モンサンミッシェルは行ったことがあるんだけど、その前にこれを読み返していればなあ、と後で地団駄。
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スケルトン探偵ギデオン・オリヴァー教授シリーズ第4作目にして本邦初紹介第1作目。なぜ4作目から紹介されたのかといえば、本書がMWA賞、通称エドガー賞受賞作であったことが要因として大きいだろう。本作の出版は実は現在流布しているハヤカワ・ミステリ文庫ではなく、廃刊となったミステリアスプレス文庫から出版されていた。しかも本書はその叢書の第1冊目でもあり、新規固定客を掴む重要な役割として大きな期待がかけられていたのだろう。
物語の舞台はフランスのモン・サン・ミシェル。プロローグは富豪のギョーム・ロッシュが干潮時に貝の収集をしている最中に満潮に巻き込まれ、命を失うシーンから始まる。骨の鑑定家であるギデオンは彼の館で見つかったナチス時代と思われる古い骨が見つかったことで親友のFBI捜査官ジョン・ロウと共に鑑定に訪れる。そしてその最中、一族の1人が毒殺されるという事件に巻き込まれる。
ミステリという観点から云えば、このギデオン・オリヴァーシリーズは非常にオーソドックスな作りである。因縁となる過去の事件を発端とし、なんらかの形でギデオンが関係者に関わり、そこに骨に関する事件や出来事が起き、そして過去の因縁が基になる殺人事件が起き、ギデオンが真相に近づく中、彼も一命を失うような危機に陥るが、大団円に至る。シリーズ全てがこのパターンを踏襲している。派手な演出、驚愕の真相を期待する方にとっては物足りなさを覚えるだろうが、逆にこのマンネリさがこのシリーズに安定感をもたらせ、安心して読めるシリーズと云えよう。
とはいえ、このシリーズにさしたる特徴はないかと云えばさにあらず、本書の目玉はギデオン・オリヴァーが毎回行う骨の鑑定にある。この場面の描写は毎回微に入り、細を穿ち、専門的かつ学術的である。では一般読者の理解に困難を強いるかといえば全くそうではなく、専門知識を誰もが解りやすいように噛み砕いて説明しており、読後新たな知識が得られたという満足感がある。この骨の鑑定という読者の知的好奇心をそそる演出がこのシリーズの人気の半分を占めていると云えよう。
さてエドガー賞を受賞した本書の出来はといえば、確かによく出来ており、非常に卒が無い。上に述べたように物語の起承転結がはっきりしており、なおかつサプライズもある。巷間に様々なミステリが溢れている今ならば、本書に収められているミスディレクションは特段話題にするほどの物でもないが、読んで損を感じることはないだろう。
さて本書は版元である早川書房が新規創刊した文庫シリーズの集客戦略の一手として出版されたであろうことは冒頭に述べたが、幸いにしてこの作品はその期待を損ねることなく、ミステリファンのみならず広く親しまれたようだ。特にその年の『このミス』では第3位という高評価を持って迎えられた。その後この叢書が廃刊になり、本国アメリカで新作が出版されても長らく訳出されないという不遇な時代もあったが、ファンからの熱い要望により、版型をハヤカワミステリ文庫に移して再出版され、その後コンスタントに新作も出版されている。
本邦刊行から今に至って私はこのシリーズを読み続けているが、最も新刊が待たれる���リーズの1つになっている。もし何を読もうか迷っている方がいれば、まず手にとっても貴重な時間を失うことはないことを保証しよう。
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ハヤカワミステリプレスの記念すべき第1作になります。
評判も非常に高いものでした。シリーズ化もされてます。