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収録作品一覧
無口になったアン夫人 | ||
---|---|---|
お話の上手な男 | 25-38 | |
納戸部屋 | 39-52 |
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紙の本
ブラックユーモアに笑う
2024/01/15 21:43
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投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
ボルヘスが選んだ幻想小説の第二巻は英文学からブラックユーモアにあふれる短編の名手として知られるサキの小説だ。
序文でサキについて紹介されていて、本名はヘクター・ヒュー・マンロウといってスコットランドのさる旧家の生まれだそうです。
父親がインド警察に勤めていたためビルマで生まれ、その後妊娠した母と兄姉とイギリスに行くも母が亡くなったため二人の伯母を保護者として育つ。
ロンドンでジャーナリストとして生活しつつ小説を執筆し、第一次世界大戦に志願兵として参加し戦死するという人生だった。
表題作となっている「無口になったアン夫人」では、昼にちょっとした夫婦喧嘩をした夫が妻のアン夫人の様子をうかがっているシーンで始まります。
お茶の時間になっても黙り込む妻に、機嫌取りと不満の入り混じった態度で接する夫の姿が現代にも通じる。
夫の心の動きと態度を克明に描いているが、驚きのラストはまさにサキのブラックユーモアだ。
「お話の上手な男」では、三人の騒がしい子供たちとその伯母と同じ車室に乗ることになった男が子供たちのうるささに辟易してどうしたかが描かれています。
少年が小言の多い伯母さんを雨水受けのタンクに放置した「納戸部屋」はまだかわいい方だが、「スレドニ・ヴァシュター」では甥の感情が憎悪にまで高まってしまった結果が描かれていた。
幻想小説に相応しいのは人語を話すようになった猫の引き起こす騒動を描いた「トーバモリー」と、人狼の影が見え隠れする「ゲイブリエル‐アーネスト」かな。
一番面白かったのは「あけたままの窓」という神経を休めるために田舎でしばらく暮らすことにした男の話だった。
以前その土地に滞在したことがある姉が紹介状を書いてくれて、とある屋敷を訪ねてみると奥様と十五歳になるという姪が留守番をしているところだった。
奥様が席を外した時に姪が語るには、夫と二人の弟が狩りに行ったままどこかの沼にはまってしまったのか行方不明になって一年、奥様は精神を病んでしまって彼らが帰ってくると信じて大きな窓を開けたままにしているという。
家族を失った悲しみの中に来訪してしまったことを察して男が帰ろうとすると、狩猟服を着た三人の男が可愛がっていたというスパニエルと共に屋敷に近づいてくるのが見えてしまう。
恐慌を起こして屋敷を飛び出した男だったが、その真相には笑ってしまう。
どれもサキの人生と心を切り取ってきたかのような短編で楽しめました。