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アーサー王の死 (ちくま文庫 中世文学集)
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紙の本
無茶振り王の物語
2012/12/13 23:14
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
アーサー王伝説というのが中世ヨーロッパの定番中の定番でもあるし、この地域の精神史に関わりがあるのではあろう。そう思って読むと、ちょっとびっくりする。これがほんとに騎士道とういうものなのか。
何しろ話が古い。物語自体がとても素朴で荒削りだ。
どっから湧いて出た話なんだと。
この本がイギリスでまとめられたのが16世紀。それはフランスなどで広まっている様々な伝承を翻訳し、ひと繋がりに編集したものという。とにかく民間伝承であるので、いわゆる王朝文学の繊細さはないにしろ、説教節や説話などの洗練も無い。アーサー王も円卓の騎士達も、ただひたすら強く、強くあろうとし、ひたすらに戦う。それが表すのは、民衆の中にある荒々しい力への渇望であり、その力による現状脱出の希望なのだろうかと想像する。
アーサー王はローマ帝国に攻め入って、皇帝となる。フランスの民衆がそこに快哉を感じるのは、救世主による解放だからだろう。海の向こうから訪れる解放者なのだ。その異邦人伝説を、現地イングランドに逆輸入するという構図があり、それを偉人伝としてしまうわけだ。
アーサー王は出生の秘密、魔法使いマーリンの庇護と石から剣を引き抜く力など、はっきり伝説的だ。時代からするとヤマトタケルみたいなものかもしれない。次から次へと剛の者が円卓の騎士として現れて来るのは水滸伝みたいな。
この本では聖杯探求やトリスタンとイゾルテははしょって、後半の中心はラーンスロットと王妃の恋だ。知らないのは王様だけ。わーい、どきどきと思いきや、王様の方が同情されるようなキャラでもないせいか、やはり大雑把でむしろコミカルですらある。技巧のある語り手が媒介しているのでない証左のようなところかもしれない。
ワンダラーなところは全体の大雑把さ。おおらか、とは言わないだろうなあ。なんかやたら戦争する。何かにつけて決闘をしたがる。戦争も無い時は馬上試合をする。試合と言っても真剣で名誉をかけるので、重傷を負う者も死ぬ者もたくさん出る。現代の目からすればかなり無茶苦茶だ。結局騎士道というのは、言葉にすれば名誉を重んじるということかもしれないが、果たしてこの物語から後世に伝えられたものだったのだろうか。
たぶん後の時代に執筆されたアーサー王ものは、もっと洗練されて、現代にも通じるのだろう。しかしこれはその原石。
とにかくゴツゴツとして強引で、王も王妃も無茶振りはなはだしい。そういう大騒ぎのドラマ、ただ感心して見とれるばかり。
紙の本
アーサー王の死
2013/05/24 19:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ホームズ - この投稿者のレビュー一覧を見る
何回読んでもランスロットとグイネヴィアの関係が理解できない。アーサーの死が悲しかった。高潔な騎士たちの活躍もいいですね(笑)
紙の本
せっかくのアーサー王伝説の集大成の和訳だが、省略が多いのが残念
2004/09/13 23:21
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
アーサー王伝説の集大成と言われるのは、15世紀にトマス・マロリーがまとめたもの。それを、同時代の印刷業者ウィリアム・キャクストンが編集し、"Le Morte Darthur(アーサー王の死)"のタイトルで出版した。本書は、その一部を抜粋して和訳したものである。キャクストン版は以下の21巻から成るが、うち★印を付けたものが本書に収録されている。
★第1巻 アーサー王の誕生と即位
第2巻 騎士バラン
第3巻 アーサー王とグウィネヴィア王妃の結婚、その他
第4巻 マーリンうつつをぬかす、アーサー王が挑まれた戦
★第5巻 ローマ皇帝ルーシヤスを征服
第6巻 ラーンスロット卿とライオネル卿
第7巻 ガレス卿
第8巻 トリストラム卿の誕生及び業績
第9巻 ケイ卿、ラ・コート・マル・タイエ卿、トリストラム卿
第10巻 トリストラム卿の冒険
★第11巻 ラーンスロット卿とガラハッド卿
★第12巻 ラーンスロット卿の狂気
第13巻 ガラハッド卿のアーサー王宮廷訪問、聖杯探索開始のいきさつ
第14巻 聖杯探索
第15巻 ラーンスロット卿
第16巻 ボールス卿とライオネル卿
第17巻 聖杯について
★第18巻 ラーンスロット卿と王妃
★第19巻 グウィネヴィア王妃とラーンスロット卿
★第20巻 最後の戦い
★第21巻 アーサー王の死
予想以上に省略が多い。トリストラム(トリスタン)の物語と聖杯探索が省かれたのは、まだ仕方ないかもしれない。個人的には興味あるが、サイドストーリーとも言えるからだ。だが、2〜4巻と6〜7巻は載せてほしかった。決着は次巻にとあるのに、その次巻が抜けていたり、過去の出来事が引き合いに出されているのに、その過去が抜けていたりして、欲求不満を感じる。また、アーサーとグウィネヴィアの結婚、マーリンの表舞台からの退場など、重要なトピックスが省略されているのにもガッカリ。ラーンスロットとグウィネヴィアが恋に落ちた経緯も、ぜひ読んでみたかった。入門書「アーサー王ロマンス」で全体の骨子はわかっているが、それ以上の血肉を知りたくて本書を読んだのに、残念である。
以上、大いに不満はあるが、それでも読んで良かったと思う。話はなかなかおもしろかったし、翻訳がこなれているおかげもあり、とても読みやすかった。そして終盤、ラーンスロットとグウィネヴィアの不倫をきっかけに、円卓の騎士たちの団結にひびが入り、ついにアーサー王の最期に至る過程には、それなりにジーンと来るものがあった。だが、アーサーとグウィネヴィアとラーンスロットの三角関係の始まりの部分が省略されていなければ、もっとおもしろかったかもしれない…と思うと、やはり残念である。
紙の本
聖剣、聖杯、魔法使い
2022/05/28 02:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩波少年文庫「アーサー王物語」の和訳を
手掛けた厨川文夫氏が夫人とともに、
マロリーの原書から半分程の章を選び出して、
一般向けに訳したものです。
話の筋や結構は、現代の小説と比べてしまうと、
とっちらかっていて、漱石が「簡浄素樸」とか
「散漫の譏そしりは免がれぬ」と表現しているのも
宜なるかな、と思ってしまいます。