作品一つ一つから、軽くて明るいふんわりとした味わいを感じる。肺病で療養中の妻との日々を綴った「春は馬車に乗って」「花園の思想」、妻の気持ち少しでも浮き立たせようとして、世界の明るい方角を見て、暖かな未来を語ろうとすると、たちまちその通りに陰鬱さは消えて花ほころびる風景の裏側に隠れてしまう。悲嘆に暮れる日々であるのに、まるで主人公に接するだけでその周りに春が訪れるようで、あるいは作者が天来で持っている素質のような気がする。他にも貧しい人々の暮らしを題材にした「火」「笑われた子」なども、シビアな現実を描きながら、どこかほっとするような終わり方をするし、悲劇的な結末の「蠅」「赤い着物」でさえ、流れて…
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