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紙の本
編み出された思考力
2001/11/26 15:36
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投稿者:あや - この投稿者のレビュー一覧を見る
「日本にはすばらしいSF作家がいる」。海外ミステリを紹介する本で何度となく紹介されていた広瀬正。タイムマシン物では随一といわれるこの作品を手にとって見たのは、その紹介文がきっかけでした。
時代は昭和。冒頭は一人の少年が空襲に会うシーンから始まる。その少年が青年になった頃、青年はひとつの約束を果たすためにある場所へ向かう…。
この作品のすばらしさは、紳士的で落ち着いた文章にもあると思いますが、サブタイトルから察せられるタイムマシン・トリックにも注目してほしい。所々にユーモアの聞いた、まさに夜の読書に最適の本です。特にSF好きではない人にもとってもお薦めな一冊です。
紙の本
僕の原点…ゼロ
2000/11/26 04:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KON太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
僕の心に深く刻み込まれた本である。
出会いは高校の図書室だった。当時の僕は星新一の虜となって、図書室にある星新一の本をほとんど読み尽くしていた頃だった。星新一の作風に似たような他の作家はいないかな、と僕は本棚を漁っていた。そんな折にふと見つけた「マイナス・ゼロ」という奇妙なタイトル。目次を見ても、「プラス・ゼロ」、「プラス18」、「マイナス31」、「ゼロ」、「マイナス・ゼロ」と意味不明の項目が並んでいる。そして、裏表紙の宣伝文には、タイムマシン物だということが書かれている。さてはハードなSFなんだろうな、と僕は思っていた。ハードな──何て説明したらいいんだろう。それは、より人間味のない、機械が主体の、空想に支配された物語というような──イメージを僕はその本の外見から持ってしまったのだが、その考えは本を読み始めてすぐに根底からくつがえされた。
話は太平洋戦争の東京大空襲に始まる。
星新一で覚えたSFの味──抽象的な世界の奇妙な雰囲気の中での話の展開──とは似ても似つかぬ、あまりに現実的で、そのうえ、少し前の日本の懐かしい雰囲気の漂うストーリーに、僕はすっかりのめりこんでしまった。
時代は戦中、戦後、戦前と昭和初期を行き来しながら、物不足から豊かさへと、人と人との暖かさから戦争での悲しみへと、主人公とともに時の流れを振り返ることになる。
そして、時間旅行につきもののタイムパラドックスが…なんてこんな書き方をすると、広瀬正の書いたこの小説があまりに陳腐なものになってしまうほど、精巧に組み立てられ、積み上げられたすべてが、物語の最後になって収束していくのである。それはまるで、難解な数学の計算式を解いていって、その式が最後には互いに打ち消しあった末に、答えがゼロになったかのような爽快感を味わわせてくれるのだ。
僕は、この作者の本をこれから読み漁ろう、とこの本を読んだときに決めたのだったが、それは思うほど多くはなかった。僕がこの本と出会ったときにはすでに、広瀬正は若くしてこの世を去っていたのだから。
紙の本
和製『夏への扉』?
2002/02/07 13:29
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投稿者:ひろぐう - この投稿者のレビュー一覧を見る
これを読んだ人は、今から30年も前に日本でこんなに素敵なタイムトラベル小説が書かれていたことを知って、誇らしい気持ちになるに違いない。
R・A・ハインラインの名作SF、『夏への扉』の影響を受けていると思われるが、ユーモアあふれる語り口とは裏腹に、アイディアそのものは本家も真っ青の、パラドキシカルな本格SFといえるものだ。
この作品の素晴らしい点は、日本の風土・風俗に、まったく違和感なく本格SFのプロットを溶け込ませたことだろう。というか、逆に、SFストーリーよりも昭和初期の風俗を描くことが主眼だったのではないかと思えてくるほど、その詳細でリアルな描写に、作者の熱い思いを感じ取ることができる。
もちろん僕にとっては、昭和初期の日本の日常など、古代エジプトの情景と同じくらい遠い過去の出来事なのだけれど、不思議にノスタルジーのようなものを感じてしまう。
いま読むと、さすがに他愛のない部分もあるにはあるが、『バック・トゥー・ザ・フューチャー』のような話が好きな人には、ぜひ読んでもらいたい小説だ。