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商品説明
イヌやネコと「心が通じている」と感じたことのある人は多いに違いない。ではほかの動物たちは? かれらの心はヒトの心とどう似ており、どう違うのか。人間とは「違った世界」をみている動物たちの心の多様性と普遍性に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
藤田 和生
- 略歴
- 〈藤田和生〉1953年大阪市生まれ。京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。同大学院文学研究科教授。理学博士。専門は比較認知科学。著書に「比較認知科学への招待」など。
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紙の本
心とは
2011/07/15 22:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
動物の行動とそれを促す心の動きを探る研究法は大きく2つあるという。1つはフィールドで動物を観察するもので、もう1つは実験により探索する方法である。個人的には前者が正当で、後者はやや都合のいい方法のような気がしていた。なぜなら自然界にない物で自然界にはあり得ない状況を生み出して心の動きを探るのだから。しかし、後者の立場で研究を進める著者は、実験の重要性を以下のように解説してくれた。
近所の人が事件を起こした時によく耳にするコメント、「信じられない。いい方ですよ」というエピソードを引き合いに出し、見ているだけでは分からないことも多いとする。そして、「実験はさまざまな要因を統制しておこなわれるので、知りたい要因の効果、知りたい認知機能だけを、確実に取り出すことができ」(29頁)るとした。妙に納得した。
というわけで本書には様々な実験を通じて解明してきた動物たちの心の動きが分かりやすく紹介されている。
本書は全4章からなり、さらにコラムを6本加えている。
第1章 動物たちから見える世界
第2章 「モノ」を扱う-物理的知性
第3章 欺く、協力する-社会的知性
第4章 意識と内省
いずれの章で紹介されている実験も条件としては自然界にはないものばかりで行われている。ただ、検証は心の動きでも特定のもの、例えば協力や欺きなどに標的を絞って実施される。自然界ではありえないが、目的を絞ることで、より確実に心の機微を捉えることができるようだ。そのため条件付けは厳しくする必要があり、様々な要因が考えられるような実験では特定の心の動きを突き詰めることはできないとのこと。
我々は、ややもすると心は人間にだけあると考えがちだ。著者は「心」の定義が重要としながらも、明確な言語はないものの様々な生き物が驚くほど多くの思考を持つことを示してくれた。対象は多くの事例が提示されたサルやチンパンジーにとどまらず、イルカやイヌ、ラットやカラスにハトなど幅広い。さらに第1章目に「動物たちから見える世界」を置いているところが秀逸で、ここで動物や昆虫が色や形をいかに人間と異なる認識をしているかを示して、動物の認知のあり方を追及する面白さの下地を作っていた。この認識を著者と共有することで、第2章以降が素直に読めてしまうのだと思う。
動物の心について興味がある方はもちろんのこと、実験の妙実験的手法による認知科学の追及に疑念を持つ方にも一読をお薦めしたい良書である。