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商品説明
メキシコの新たな聖人サンタ・ムエルテ。骸骨姿の聖母を信仰し、そこに癒しや救済を求めるメキシコの人々の新しい精神生活と、そこからあふれ出るように生まれている多彩な図像表現を、写真200点を交えて紹介する。【「TRC MARC」の商品解説】
いまや信者数300万人超とされるメキシコの精神現象。
そこには民衆の手になる「新しい美術」があった!その活力を克明に記録
メキシコという国の美術に魅せられ、通いはじめて40年近くになる。その間、大きな社会変動を何度も目撃してきたが、なかでも2006年末に発足したカルデロン現政権が推進する麻薬撲滅作戦と、それに抵抗する麻薬犯罪組織との間の抗争は、多数の一般市民をも巻き込むきわめて凄惨な事態を生み出し、痛ましさにたえなかった。都市部はいまも不穏な空気に包まれている。
このような時期に、噂でしか知らなかった、非常に興味深い信仰集団と美術の現象に出会うことになった。「骸骨の聖母」(サンタ・ムエルテ、直訳すれば「死の聖母」)がもたらす奇蹟を信じる人々と、かれらが奉じる聖母像である。かつては犯罪者のカルトとされ、秘教的な位置づけだったこの信仰が、いまや信者300万人を超える一大勢力となっており、その図像は街路に溢れ出している。政府の麻薬撲滅作戦により、官憲に追われた麻薬組織が全国に分散したことでカルトが拡大した、という分析も可能であろう。しかしそれだけでは説明しきれない。この現象は、「表社会」のシステムに何か大きな亀裂が生じ、民衆がもはや法もモラルも伝統的な宗教をも超えた、魂の救済の新たな方法を希求していることを示唆するものではないだろうか。
サンタ・ムエルテが美術現象として興味深いのは、伝統的な宗教美術に見られる図像規範というものがまだ無く、民衆の日々の信仰活動の中で新しい図像が考案され、取捨選択されながらいくつかの定型が残ってゆくというプロセス、それが今まさに進行中であることだ。そのプロセスを追うことには、いわば創造の現場に立ち会う面白さがある。しかもそれがプロの美術作家の仕事でなく、無名の民衆たちの創意工夫によるものである点も興味深い。
多彩でキッチュな図像に込められた、正統な美術の世界とは無縁な民衆の大胆な発想は、世俗的欲望と生の活力に満ちており、着せ替え人形やゴス・ファッションと通底する要素も見られる。この「キモかわ」図像を信奉する心性の奥には何があるのか、本書を通じて読者の皆様とともに考えてみたい。(かとう・かおる)【商品解説】
著者紹介
加藤 薫
- 略歴
- 1949年生。神奈川大学教授。中南米美術研究者、評論家。主著:『ラテンアメリカ美術史』(現代企画室)、『ニューメキシコ 第四世界の多元文化』(新評論)、『メキシコ壁画運動』(現代図書)、『ディエゴ・リベラの生涯と壁画』(岩波書店)他多数。
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紙の本
文化を勉強し、理解していくことの重要さを知ってほしいです。
2017/12/30 11:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:汗牛充棟マン - この投稿者のレビュー一覧を見る
このサンタムエルテは、メキシコの3分の1の州で信仰が確認されているようで,表紙のこのグロテスクな肖像を見て誰もが、黒魔術や死神信仰ととらえがちですがそうではないようです。
骸骨姿の聖母を信仰し、そこに癒しや救いを求めるメキシコの精神生活をこの本で見ることができます。
死が、日常生活の中に当たり前のように存在している国において骸骨のイコンも図像も頭骸骨の台座や版画も、宗教施設以外にも存在し、サンタムエルテのキーホルダーやTシャツもそこかしこで売られて、それをつけている人も多くいるようです。
死=骸骨が生の時間と対等に存在し、しかも一体化したイメージが紀元前の昔からメキシコ先住民から受容されていたようです。
ゆえにメキシコにおいては土葬が基本のようです。
このように社会背景を持った国ならではの文化が形成されるのであって、一見してグルテスクであるからといって、その文化を否定、卑下するようなことがあってはならないなと思いました。
それはサンタムエルテ以外の多くの文化に当てはまるでしょう。
そういう表面だけでない、奥の部分を深く知り、認識する作業は誰もがしなくてはならないことと思いました。
そのことをこの本を読み、知り、勉強してほしいなと思いました。