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紙の本
数学者以上に愛すべき人間として
2011/10/28 11:36
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐吉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
家庭も財産も持たず、わずかな身の回り品を詰めたスーツケースを手に世界中を飛び回り、常に多くの仲間と問題を共有したハンガリーの天才数学者ポール・エルデシュ。本書はそんな彼の破天荒な生涯と彼を取りまく数学者仲間たちのことを綴った一冊である。
エルデシュは数学以外のことには一切関わろうとせず、1日に19時間数学の問題を解き、83歳でその生涯を閉じるまでに実に1475本の論文を発表した。しかも、そのいずれもが重要な論文であるという。しかし、本書を彼がいかに傑出した天才だったかという話として読むなら、それは単にそういう人物がいたというだけのことにすぎない。本書が読者に強い感銘を与えるのは、そこに、エルデシュがいかに周囲の人々に愛されていたかがありありと描かれているからである。
エルデシュの残した論文の膨大さもさることながら、そのうちの1000本以上が、485人にも及ぶ他の数学者との共著であることにはさらに驚かされる。数学者たちの間にも他の世界と同じように、いや、それ以上に熾烈な先陣争いがある。『定理を解くのがわしでなければ、だれも解かないほうがましだ』という数学者さえいるほどだ。しかしエルデシュは、発想や洞察を誰とでも寛大に分かちあった。そしてそのことによって、多くの数学者が育てられた。共著論文の連鎖によって彼との協力関係の遠近を示す「エルデシュ数」なるものが存在するのも、単に彼が伝説的な天才だったからだけではあるまい。
エルデシュは才能あふれる新たな数学者を探し出すことに熱心だったし、何より子どもが好きだった。若い数学者に対しては、相手の実力を本人以上によく見極め、それを伸ばすことのできる適切な問題を出題する能力を持っていた。専門的な技術を必要とせず、それゆえ天才児たちが才能を発揮しやすい初等整数論に終生こだわったのも、そのことと無関係ではない。
エルデシュの奇矯な行動はしばしば他の数学者たちを困らせた。しかし、それでも誰もが喜んでエルデシュの世話をし、また、したがったのは、云うまでもなく、エルデシュの才能以上にその豊かな人間性を愛したがゆえである。エルデシュは決して禁欲的な生活を送っていたわけではない。ただ数学に対する好奇心に、生涯子どものように素直だったのだ。エルデシュはこの上なく幸福な人生を生き、周囲の人々をもまた幸福にした。
こうした愛すべき人物が実際にいたことを思うと、純粋数学からはほど遠い世界に生きる評者にも、それがちょっと身近な存在に思えてくる。そして同時に、どこかあたたかい気持ちになれる。
ちなみに第一回本屋大賞を受賞し、ベストセラーにもなった小川洋子の小説『博士の愛した数式』に登場する「博士」は、しばしばこのエルデシュがモデルではないかと云われる。『博士の愛した数式』も秀作だったが、本書を通じてエルデシュの生涯に触れた読者は、きっとバイロンのかの有名なフレーズを思い出すに違いない。事実は小説より奇なり。
紙の本
小説『博士の愛した数式』のモデルとなった天才数学者の伝記です!
2018/11/26 19:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『博士の愛した数式』のモデルともなった天才数学者エルディッシュについて書かれた伝記です。彼のカバンの中には着替えの下着と本だけ入れて、世界を放浪し、毎日数学三昧の日々を過ごしたということです。なかなか面白い人物で、内容も非常に興味深い深いものとなっています。『博士を愛した数式』を読まれた方は、本書もぜひ、お読みください。