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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.7
- 出版社: 幻冬舎ルネッサンス
- サイズ:20cm/251p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-7790-0453-7
紙の本
なぜうつ病の人が増えたのか
著者 冨高 辰一郎 (著)
1999年には約44万人だったうつ病患者は、2005年には約92万人に増加している。なぜ日本ではこれほど急激にうつ病患者が増えているのか? その原因を明らかにし、うつ病診...
なぜうつ病の人が増えたのか
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商品説明
1999年には約44万人だったうつ病患者は、2005年には約92万人に増加している。なぜ日本ではこれほど急激にうつ病患者が増えているのか? その原因を明らかにし、うつ病診療の問題点と解決策を提示する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
冨高 辰一郎
- 略歴
- 〈冨高辰一郎〉1963年大分県生まれ。九州大学医学部卒。精神科医。パナソニック健康保険組合東京健康管理センターメンタルヘルス科部長。専門は、産業精神医学、精神薬理、性格学、医療情報。
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紙の本
「うつ病増加」の要因とは? その真実を詳細かつ多角的に分析した優れた一冊
2010/01/18 18:43
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いえぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年、うつ病などの精神疾患がマスメディアで取り上げられることが、非常に多くなったように感じます。それに伴って、いわゆるメンタルクリニックなどの、精神面での治療を行う病院はぐっと身近になり、心理的な敷居が随分低くなったようにも感じます。SSRIなどの新しい薬の存在も広く知られるようになってきました。しかし、にも関わらず、うつ病に悩む人が減少したという報道ではなく、逆に増加したとの話を良く耳にするようにもなりました。治療を受けられる環境が整い、新薬が用いられるようになったのにも関わらず、減少に転じないのは、一体何故でしょうか?
本書は、そんなうつ病などが「増加」した原因を、詳細なデータを用いて多角的に分析した一冊です。失業等のストレスが増加し、うつ病患者が増加したのだという言説に、日本とは景気動向が異なり、九十年代中頃以降、景気回復基調を辿っていたイギリスでも、年々新型抗うつ剤SSRIの処方量が増加していったというデータで反証し、更に、他の先進国でも一致して、SSRI導入後に抗うつ剤処方総量が増加したことを示し、ストレスの増加がうつ病増加の主要因ではないという仮説を、さらに補強しています。では、何故「増加」したかという点について、本書は、「受診率の増加」という重要な要素を挙げています。ある病気について、受診率が二割から四割に、あるいは三割から六割に増加すれば、統計上の患者の数は二倍に増加します。
では何故、SSRI処方の増加と、受診率の増加が一致するのかという部分ですが、本書では、その点に関する分析も示されています。製薬会社が大々的なプロモーションの一環として、疾患の啓発・広報活動を行い、「誰にでもかかりうる病気で」、「治療することができ」、「早期治療こそが重要だ」というようなメッセージを送ったことが要因として挙げられています。従来の抗うつ剤と比べ、SSRIは薬価が高く、利率も高いので、大々的なプロモーションを行うだけの「価値」があったからでもあります。プロモーションを行うことによって、人はうつ病的な傾向に敏感になり、また、受診率の増加によって、統計上の患者数が増えます。この相乗効果によって、短期間にうつ病患者が数倍以上にまで「増加」するという「SSRI現象」が発生するのだと、本書では指摘しています。また、新たな診断方法の導入によって、非定型うつ病など、従来では病気と診断されなかった症例も疾患として扱われるようになったことにも言及がなされています。
また、本書で紹介されている、製薬会社のプロモーションは、注目すべきものがあります。様々な方法で、市民に啓発・広報活動をしていく一方で、医師に対しては、セミナーや学会をサポート、SSRIが従来の抵うつ剤よりも優れているといった趣旨の研究にも援助を行って、次々に作られる論文によって、医学界の「世論」が形成され、もちろんオーソドックスな営業も大々的に行っていくといった具合で、その戦略性は、洗練され、徹底されていると言っていいでしょう。
本書では、他にも、各国によるうつ病治療の違いや、SSRIの実際の効用はどの程度か等の、専門的な話にも言及がなされています。いずれのテーマにも、徹底したデータ、理詰めでの分析を行っていますが、その中でも最も評価されるべきは、最近、マスメディア等で「社会問題」化されているうつ病「増加」の原因が何かを突きとめ、分かりやすく解説していることです。受診率が増加すれば、統計上患者は「増加」しますし、診察を受けた人が敏感になった結果、診断を下されやすくなれば、当然「増加」するわけですが、それは事態の悪化を示すものではありません。製薬会社等が強力に介入することで中立性が損なわれかねない等々の懸念・問題はあるものの、診察や治療の敷居を低くする啓発活動の結果、受診率が向上することは、基本的に悪いことではないのですから、結果として患者数の「増加」も、特別警戒するにはあたらない状況なのです。
後は、「増加」の事実を、マスメディア等がどう報じるかが課題になって来るところではありますが、本書は発売以来、既に何度も増刷され、新聞各紙でも書評等で取り上げられています。統計上の患者数の「増加」そのものを「社会問題」とするような、報道上の「空気」も、変わりつつあるのかも知れません。