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紙の本
現代アメリカ (有斐閣アルマ Interest)
著者 渡辺 靖 (編)
見る者の立場によって多様な側面を見せるアメリカ。現実のエピソードを手がかりに、豊富な図表と写真を用いながら、アメリカの「政治」「経済」「社会・文化」「外交」をわかりやすい...
現代アメリカ (有斐閣アルマ Interest)
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商品説明
見る者の立場によって多様な側面を見せるアメリカ。現実のエピソードを手がかりに、豊富な図表と写真を用いながら、アメリカの「政治」「経済」「社会・文化」「外交」をわかりやすい文章で説明する。【「TRC MARC」の商品解説】
目次
- 第Ⅰ部 アメリカの政治
- 第1章 「アメリカ民主主義」の原動力
- 第2章 アメリカ流「保守」と「リベラル」の対立軸
- 第3章 「アメリカ大統領」はどれだけ強大な存在か?
- 第Ⅱ部 アメリカの経済
- 第4章 アメリカの経済政策と経済学
- 第5章 アメリカ経済をめぐる3つの疑問
- 第Ⅲ部 アメリカの社会・文化
- 第6章 「多様性の中の統一」は可能か?
- 第7章 「日系アメリカ人」の歴史
著者紹介
渡辺 靖
- 略歴
- 〈渡辺靖〉1967年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部教授。著書に「アフター・アメリカ」「アメリカン・デモクラシーの逆説」など。
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『スター・トレック』と『スター・ウォーズ』を比較した論考には違和感を覚えた。
2011/02/19 21:46
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日読んだ『アメリカン・デモクラシーの逆説』(岩波新書)の著者が中心となり、13人の研究者が 政治、経済、文化、外交の4側面から現代アメリカを読み解いた書です。
宗教について論じた第8章のうち「宇宙SF作品に表れたアメリカの2つの宗教性」について著者のいう「宗教性」については一理あると認めます。しかしその一方で、それぞれの映像作品が作られた当時の文化的背景に照らすと、少し違った見方を私はします。
著者は60年代の『スター・トレック』と70年代の『スター・ウォーズ』について論じています。
『スター・トレック』は「乗組員たちは行く先々で、モンスターを倒して人々を救い文明をもたらしたり、独裁者を倒して民主主義をもたらしたりするというモチーフが目立つ」ドラマで、著者はこれを「伝統的宗教性を反映している」としています。
一方で、『スター・ウォーズ』を1960年代の「カウンター・カルチャーから生じた新しい宗教性を反映している」と見なします。
しかし、私が思うに、『スター・トレック』は1950年代までのアメリカの古き良き伝統的価値観がベトナム戦争の泥沼化によって大きく揺らぐ中で、新しい価値観を紡ぎだそうという考えがバックボーンにある作品です。ですから宇宙人との戦争については大変懐疑的であり、著者が指すように必ずしも地球的価値観にあわない宇宙人を倒しておしまい、という展開ではない点が斬新であると考えます。
『スター・トレック』の1エピソード「宇宙基地SOS」はロミュラン星人とUSSエンタープライズの死闘を描いていますが、ロミュランも地球人側も戦争というものの空しさ、正義の戦争というものがまやかしであることを知っているという物語です。
「カヌーソ・ノナの魔力」は当時の米ソの代理戦争であるベトナム戦争を、舞台を宇宙に置き換えた作品ですが、一つの惑星で二つに分かれて対立している宇宙人の片方を地球人が、もう片方をクリンゴン星人が後方支援するという話です。しかしそれでも必ずしもクリンゴン側が卑劣で邪悪な存在として描かれているわけではありません。ここにもベトナム戦争における米国の価値観が絶対のものではないということが示唆されています。
このほかにも「危険な過去への旅」など、第二次世界大戦とアメリカの参戦という問題が必ずしも一筋縄ではいかないものだったということをみつめるエピソードもあります。
このように、『スター・トレック』が60年代のカウンター・カルチャー以前の価値観を体現しているという見方はあたらないと私は考えます。
その一方で70年代後期から80年代にかけての『スター・ウォーズ』はむしろカウンター・カルチャーからの揺り戻しの中で、勧善懲悪という単純な二項対立で世界を見る、そしてもちろんアメリカこそが正義であるという80年代以降のレーガン政権的な世界観の端緒を私は見るのです。事実、レーガンは戦略防衛構想(Strategic Defense Initiative, SDI)のことを盛んに「スター・ウォーズ計画」と読んで悦に入っていましたから。