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紙の本
日本人はどんな大地震を経験してきたのか 地震考古学入門 (平凡社新書)
著者 寒川 旭 (著)
世界で起きる大地震の2割は日本付近で起こる。日本は地震でどう変わり、人々はどうやって乗り越えてきたのか。地震をプレート型、活断層型に大きく分けて、日本人との関わりを紹介す...
日本人はどんな大地震を経験してきたのか 地震考古学入門 (平凡社新書)
日本人はどんな大地震を経験してきたのか
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商品説明
世界で起きる大地震の2割は日本付近で起こる。日本は地震でどう変わり、人々はどうやって乗り越えてきたのか。地震をプレート型、活断層型に大きく分けて、日本人との関わりを紹介する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
寒川 旭
- 略歴
- 〈寒川旭〉1947年香川県生まれ。東北大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。独立行政法人産業技術総合研究所招聘研究員。著書に「秀吉を襲った大地震」など。
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紙の本
想定内は無い
2012/02/06 23:55
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「太平洋プレートやフィリピン海プレートが潜りこむことによって、陸のプレートの先端が強く押されて、シワのように細長く盛り」(18頁)上がってできた日本列島。この形成過程を考えると、日本で暮らすうえで地震と無関係ということは不可能と断言せざるを得ない。そして、その付き合いの長さも推し量ることができよう。本書は日本列島で暮らしてきた人びとと地震との関わりを説いた概説書である。
地震と日本人の関係史を紐解く鍵は文献史料と考古資料の2つがある。前者は、年月日、時刻、被害や人びとの対応などを明確に伝えてくれる。その反面、記録として残らなかった地震はなかったことに等しくなってしまう懸念がある。他方の後者は、文献のような克明な災害の復元は無理だが、文書が失われたために存在が忘れ去られてしまった幻の地震を甦らせる力がある。さらに、文字が使われなかった時代の地震も教えてくれる。文献記録と考古資料の両者が揃っていれば、記録と被害状況との比較検証が可能となる。考古学の調査件数の増加とともに、そういった事例も増えつつあるようだ。
本書の副題は「地震考古学入門」である。地震考古学と言う分野は著者が確立したという。もともと地質学から地震の研究を進めていた著書。地質学でも断層などを対象として発掘調査を行い、地震について研究するそうだ。この場合、時代の特定が困難という問題が付きまとうとのこと。そこで著者は人の生活空間である遺跡における地震災害痕跡の探索を思いついたという。この閃きが新分野の産声に繋がった。
地震考古学とはいかなる手法で研究を進めるのか。例えば、強い揺れによって砂層が上の地層を突き破り、地面へと噴出した痕跡である砂脈。これがいつの時代の地層を突き破り、いつの時代の地表面で拡散し、いつの時代の地層によって覆われているかが分かれば、地震の発生時期を絞ることができる。これは過去に生活空間だった遺跡を対象にするからこそ追求できる研究方法だ。さらに絞り込んだ時期に近い地震記録の探索に成功すれば、被害状況も分かり、地質的データも組み合わせることで過去の地震の規模まで復元することができるという。
人びとがとった災害対応策についても、文献では分からないことまで教えてくれるのが地震考古学である。縄文時代や弥生時代に地震を経験した人たちは、砂脈に土器をかぶせたり、石を突きさしたりする場合があったそうだ。このような事例は地震という未知の現象に対する人間心理まで迫れる稀有な成果と言えよう。
著者はこれから起きる地震を予測することの困難さを指摘しながら、「地震に襲われた場合に、被害をできるだけ軽くする「減災」」(243頁)に取り組むべきこと主張する。「減災」を目標に掲げることで、地震考古学の存在意義は大きく揺るぎないものになると感じた。ただし、過去に発生した地震について、どんなに細かくデータを集めて分析したとしても、「想定内」とする判断は人間の驕り以外の何物でもない。あくまで「減災」を目指し、その先の対応策を練ることが唯一で最善の策なのである。「減災」への第一歩として、本書の一読をお薦めしたい。
紙の本
地学としての地震の科学的分析ではなく、地震が引き起こした歴史を辿る考古学書と言っていい
2023/01/08 11:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
数々の地震関係の著作のある寒川先生による「考古学入門」編。驚いたのは日本列島上にこんなにも多くの大地震が発生していたということ。
あの秀吉が伏見城で被災した1595年の伏見地震を起こした有馬-高槻断層帯はわが家のすぐ近くを通っている。それだけでも本書の描く数々の地震がぐっと身近になった。これは一例ながら、本書は日本じゅうの地震を網羅しているため、読んで私と同じ身近に感じる人は多い筈だし、過去の災害を知って、富士山や東南海を例に出すこともなく、ついそこに迫る次の大災害への準備とすることに何人も異存はないと考える。
それにしても日本はまさに地震多発国であり、それが歴史に与えてきた影響の大きさに驚くばかりである。教科書で習う日本史に登場するのは関東、阪神淡路、東日本の各大震災くらいだろうが、本書を読むとプチャーチン、菅原道真、織田信雄、山内一豊などを語る際には地震を抜くことは明らかに片手落ちと感じる。学ぶ者たちに歴史を身近に感じさせ、災害への備えをもっと自分の問題にするためには今の小中学校の歴史教育は明らかに内容が不足している。「教えるべきことを教えていない」と本書のページをめくりながら、何度もこの思いがよぎった。歴史のみならず、地理・地学・生活などの教科書を執筆する先生方はもっと過去の災害について勉強してもらいたい。
本書は手軽に身近に過去を知るのに大変役立った。ただし、地震の被災現場と時系列的配置がページをめくるたびに前後遡及したり、目まぐるしく飛んでいくため、浅学の私には少々ついていくのが難しかったが。