紙の本
被災者のニーズとは無関係な議論 ?!
2012/04/15 14:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災後にひらかれたシンポジウムの記録であり,震災が建築やコミュニティのありかたをかえるきっかけになることを予想している. 東日本大震災の話題はあちらこちらに登場するが,あまり具体的ではない. 震災前からわかっていた 1 住宅 = 1 家族 の問題点などを追求していて,今度の震災の被災者のニーズとは無関係だという印象をうける.
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三浦展さんほか、建築家が中心になって、東日本大震災の復興を対談して、まとめた本。
職場の平積みから購入。
基本的に納得感があるのだが、自分としては、三浦理顕さんの、国が巧妙に持ち家政策を進め、住宅には一切責任を負わないシステムをつくったので、今回の震災で個人持ち家所有者が最大の被害者になったという、出だしのロジックにはかなり違和感を持つ。
そういう主張があるのも理解できるのだが、みんなで復興をどうやって進めようかと知恵をしぼっているときに、そういう大上段の議論をして、国を悪者にして何か解決するのだろうか。
むしろ、仮設住宅の設計を工夫してコミュニティの維持がはかれるようにするとか、できるところから、それぞれの個人が努力をしていく姿勢、言い方が大切な気がする。
それ以外の点は三浦さんの話も含めて納得感あり。
①大野さん:全体的にひねくれた意見をお持ちでたのしい感じ。「近世の日本は3000万人くらいしか人口がなかった。ですから、その頃はより安全なところに住めたんです。今は1億2800万人もいるわけですから、危険地帯にだって住まざるを得ない。」(p203)
②三浦さん:「持続可能といっても環境だけ持続可能ではしょうがない。子供を産んで育てるという互助的で持続できないと、結局その社会は消えてしまうんですよ。」(p155)
③藤村さん:「先ほど行政側がなかなかスピーディに動かないというお話がでましたが、そういった一見硬直した社会状況のなかで新しいことを提案していくときに、二つのモデルを併存させていくハイブリッド型のモデルというのは有効ではないかと感じました。」(p101)
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震災によって顕在化した社会、建築の問題をデータ・事例をもとにまとめられている。特に住宅やそこに住まう家族の問題を大きくとりあげていて、住宅建築に携わる身として勉強になった。
また「一住宅=一家族」という供給システムを疑問視して、「助けあって住む」ことの可能性を見出そうとする動きは、近年の「シェア」と通底していて、震災によりシェアや共有という考え方は今後いっそう広まっていくと思え、これからの生活を考えるきっかけになった。
そのほかにもさまざまな問題提起があり、特に印象に残ったのはドットアーキテクツ・家成サンの住まい手が暮らしの中でその住宅について熟知していき、自らの手である程度の更新・改築をしていける仕組みの構築ということで、日々住宅をつくっている自分にとっても一つのテーマとなり、今後の住宅には大切なことになると思えた。
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実家が被災した身として、タイトルに引きつけられ読了。もはや一住宅=一家族だとか、土地や家を所有することが標準モデルとされなくなっている現状に拍車をかけるかもしれない今回の震災。それに対し建築家や社会学者は何ができるかを問いかけたシンポジウムの記録。
果たしてここから得られた議論の中身が、少しでも今後の復興や日本の社会システムづくりに反映されると良いのだが。
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漠然とした言い方だが、読後この人達は「懐かしい未来」を理想とし、模索しているのではないかと直感的に感じた。
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これが発刊されたのは昨年の11月。震災から8ヶ月後。私が読み終えたのが、16ヶ月後。本の中では今後の展望が語られ、ひいては日本の行く末がおぼろげながらも明示された。そして今現在、原発は再稼働されつつある。このトンネルはいつ抜けるのだろうか。。。
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土地の私有化より、持ち家制度を推進し、経済は邁進した。そして、土地と建物のリスクは個人が背負う。これでは、リスクが高過ぎると言っていた。
そう思う反面、国に任せたら、道路やダムのように、利権に絡み取られ、衰退する気がする。例えば、改正PFI法が制定されたので、独立採算型の事業として都市計画を推進することは可能なのだろうか?
それと、モノを作るだけでは無く、プロセス・関係を作るのが必要というのは共感出来た。
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「3.11後の社会デザイン」を考えるシンポジウムをまとめた一冊。以前からフォローしている専門家の方々が参加されていて、個人的に非常に刺激的な内容で勉強になった。
経済成長期に効率よく機能していた「一住宅=一家族」がもはや通用しない時代であるということ。高齢社会が目前に迫っている今日、社会システムを本質的に見直さないと立ち行かなくなるという問題意識。その際、中間的な組織を有効に活用しながら新しい仕組みづくりを進めていくことが大事である。「モノからコトへ」(三浦)、「モノを設計するのではなく、モノを動かす前のストーリーを設計するようになっている」(藤村龍)ということ。3.11後の発想で日々を過ごしていかねば。
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シンポジウムの討議をまとめた編著。東北再生に向けた支援事例やアイディアを起点にして既存の社会制度を乗り越える代替モデルを模索した良書。復興の課題点を複層的・立体的に捉えることで地域社会の再デザインを問う試み。
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これからの社会の築き方を考えるヒントが沢山ありました。
山崎亮:そこに住んでいる地域の住民が自分たちの進むべき方向を決めないと、日本の社会はずっと変わらない
ニューディール政策:中山間・離島地域に若者を入れて環境保全の仕事をさせ、住み着かさせた
復興計画:単に経済復興を目指す計画ではなくて、そこに住む人たちの住み方を考え直す
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地域には地域固有の文化があり魅力がある。
過去においてはそれとは離れた経済成長重視の流れがあったが、震災により人々の考えも変わり、日本も高齢化社会を迎えこれからの環境に応じた生きがいや街づくりが必要になる。
そこでは「個」ではなく「シェア」「コミュニティー」が大事であり、それらから「共感」が生まれる社会が期待される。
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今の社会のシステムから作り直さないとという問題提起は同意。その方法論を討議するのもいい。これからは実践してどうだったかが問われると確信。
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まず思ったのは、大月先生の「一番問題だと感じたのは、明らかに非常事態であるにもかわらず、非常事態宣言が出されなかったこと」って意見や、日本で上に立つ人間が無能なのは今も昔も変わらないというような大野先生の発言はもっともだし、民間に比べて行政側の対応の遅さが目立った、社会制度を大幅に変えていく必要があるという共通認識がシンポジウム全体であるのに、だったら何でそちら側の人間を呼ばなかったのかってこと。冒頭で「『3.11後の社会デザイン』を考える上でほぼベストメンバーにお集まりいただけた」とあるのにこれじゃ片手落ちだと思った。
空き家は日本中に何百万戸とあるんだからそこで被災者を受け入れればいいのに、と誰もが思うことは「仮り住まいの輪」が実行してた。
静岡では震災が起きた場合にどの公園にどんな仮設住宅をどのように並べるかというレベルまで予行演習してるらしく、そういった事前復興が今後全国で行われるべき。
被災地の人々の暮らしにとって大事なのは(来月、半年後、一年後、自分はどこで何をしているかという)「見通し」だという大月先生の意見に同意。
理顕さんは「一住宅=一家族」って言い過ぎ。何十回出てくるかわからない。自分が見つけたシステムだ、自分の手柄だと言わんばかりであんま印象よくない。「一住宅=一家族」を推奨してきた国家の罪は極めて重い、ってのも、選択の自由はあったはずだし、僕にはあまりピンとこなかった。
それから、コミュニティや『助け合って住む』ことが恥ずかしく聞こえるのはニーチェの影響だってのも全然ピンとこない(実際そう言ったのは槫沼範久という人らしいけど、その話を持ちだした理顕さんも同意見なんだろう)。コミュニティにあまりリアリティを感じないのはその良さを知らない、経験してないってのが大きい気がする。自分は3年間の一人暮らしの後、金欠でしぶしぶ寮に入ったけど、プライバシーは確保されてる上に、廊下に出れば話し相手がいて、本の貸し借りしたり課題手伝い合ったりできるし、掃除は全然苦じゃないし飯うまいし風呂でかいしで寮最高!ってなった。共同生活に対する偏見の多くはなくなった。プライバシーの問題とコミュニティは対立するものでもないし、とにかく経験させて理解してもらうのがいいかと。異世代間の交流となるとまた違ってくるのかもしれないけど、その場合は三浦さんのあとがきにあるように、「高齢者が自分の資産を活用して若者を支援する、たとえば空いた家や部屋を非常に安く貸すとか、自分の知識や経験や人脈を若い世代に提供していく」ことはしなきゃいけない。若者にもメリットがないと成り立たないだろうし、個人的に、役に立たないのに生きながらえていたくないし。
あとコミュニティについて研究したり、そういう設計をしてる建築家自身がそういう住まい方をしてないのも良くないと思う。いいと思うものなら自ら体現しないと。
大野先生はいつもの感じで鋭いしいろんなとこから話を引っぱってきてくれるしひねくれてるしで面白い。土地の所有権ではなく利用方法について金銭を払う仕組みは必要だと思ったし、震災犠牲者2万人に比べて毎年3万人の自���者にかけられる国費と報道量の少なさを指摘するのも大野先生らしい。「空間の記号性を塗り替えること」(e.g.”荒れくれ物”、”宵越しの金を持たぬ”といった漁業、漁村に負わされた負の記号性を正の記号性に変える)は確かに建築家のできることの一つかもしれない。
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2012.02.29 わずか1冊の本の中に圧倒的な量の「知」が満載されていた。これだけの人が一つのテーマを議論した時に起きる「知」の連鎖に身震いした。
今、日本社会は大きな曲がり角に差し掛かっている。経済の成長局面で出来上がったインフラや社会制度や価値観などがすべて現状とのGAPで機能不全に陥っている。すべてに再定義が必要だと思う。そのうえで新たな社会づくりに向けた行動を起こしていくべきだろう。もちろん自分自身も実践していくつもりだ。
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まったく対抗するものでもないであろうが、東北大学で展示されていた「3.11東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展よりも、よっぽど有益な本だと感じた。
問題は、これをどう実践していくかなのだが。
まあ、本書で共感できた部分で、自分にもやれることはありそうだ。