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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2011.9
- 出版社: 平凡社
- サイズ:20cm/253p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-582-83535-9
紙の本
安全な妄想
お歳暮を巡る某出版社との「闘争」の記録から、大江健三郎氏とのスパークするディスコミュニケーション、木星と土星の巨大さへの一考察、さらには人力発電提案まで—。作家生活十周年...
安全な妄想
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商品説明
お歳暮を巡る某出版社との「闘争」の記録から、大江健三郎氏とのスパークするディスコミュニケーション、木星と土星の巨大さへの一考察、さらには人力発電提案まで—。作家生活十周年を迎え、加速する妄想の筆が織りなす、六十六篇の傑作エッセイ集。【「BOOK」データベースの商品解説】
お歳暮を巡る某出版社との闘争の記録から、大江健三郎とのスパークするディスコミュニケーション、木星と土星の巨大さへの一考察、人力発電提案まで。作家生活10周年を迎え、加速する妄想の筆が織りなす、66篇のエッセイ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
長嶋 有
- 略歴
- 〈長嶋有〉1972年生まれ。小説家。「サイドカーに犬」で文學界新人賞、「猛スピードで母は」で芥川賞、「夕子ちゃんの近道」で大江健三郎賞を受賞。
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紙の本
力強い主張が生む笑いと関心
2011/11/27 21:00
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
長嶋氏のエッセイの魅力は、「主張する」ところにあると、私は思う。例えばこの本に収録されたエッセイのタイトルを見ても、「すぐ洗え!」、「サイン会はしません」、「芥川賞はズルしちゃいけないのだ!」などがある(最後は長嶋氏の主張というよりは引用なのだが)。そして、本文中でも様々な主張がされる。それらは大きな主張ではなく、身近な出来事に対する具体的な主張である。それだけに、力の入った熱っぽい文体と、主張の内容の間にギャップを感じることもあり、笑いを誘う。例えば「焼きそばが好きだ」(p.82)から始まる「肉入り焼きそば」。焼きそばは好きでも、「屋台の焼きそばには肉が入っていない(ことが多い)」(p.82)から、買わないという。結局、長嶋氏は肉が好きなのだが、「『好きな食べ物は?』に対し、『肉』では、回答としての色気がない。憂いがない」(p.83)ということで、「なんとかして肉好きでありつつ(それにありつきつつ)、憂いと色気のある人間であるとの評価も得たい」(p.83)という思いから焼きそば(肉入り)を好物としたという。ご本人は結構真剣に語っているのだが、それだけに面白い。
しかし一方で、本気で主張しているからこそ、はたと膝を打つような話も登場する。例えば「ごはんができたよ」。「『ごはん』が『できた』よー、と人が人を呼ぶからには、惣菜と味噌汁とごはんがすべて盛られていて、こっちはもう『いただきまーす』と箸をにぎるだけという状態であって欲しい」(pp.100-101)。しかし多くの場合、ごはんができたと呼ばれて行くと、ごはんをよそって欲しいとか味噌汁をよそって欲しいとか言われる。ならば「『ごはんもうすぐできるから手伝ってー』と正確にいってほしい」(p.99)。しかし著者はここで、「なぜ人は、まだ『できてない』ごはんを『できたよー』といってしまうのか」(p.101)を考える。そこで思い至るのが、本当にごはんができたタイミングで呼ばれでもなかなかやってこないお父さんという光景。その「家父長制の強固だった時代のお父さんたちが作ってきた『ごはんの声に生返事』」(p.102)が「ごはんができたよ」を言うタイミングを変えたのだと。その上で、自分はすぐに行くから「ほかほかのごはんと、やけどしそうな熱々の味噌汁をよそって、それからどうぞ呼んでほしい」(p.102)と締めくくっている。
ここで感じるのは笑いだけではない。関心だ。だから長嶋氏の文章は魅力的なのである。