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13歳のスフェンは、去年突然「てんかん」という病気になった。いつ倒れるかわからない、倒れている間のことは全く覚えていない。新学期、学校生活では「かわいそうな子」と思われたくなかったが、登校初日に発作が起こってしまった。一方パーケルは、初日の自己紹介のときに、スフェンにそそのかされて犬の鳴き声で歌を歌い、「変な子」というレッテルを貼られてしまう。しかもパーケルには、心の奥にどうしても拭い去れない恐怖があった…。
介助犬のアラスカを通して二人の運命はからみあう。ドキドキする展開から目が離せない。
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去年いきなり始まったてんかんの発作のために新しい学校で中学1年生をもう一度やり直すスフェンは、初日授業中に発作を起こし、クラス全員に奇異な目で見られたことを気に病んでいた。5週間前に両親のやっている写真店が強盗に襲われ、目の前で父親が撃たれたのを目撃したパーケルは、初日の自己紹介のとき、スフェンにけしかけられて犬の声で歌ったことに恥辱を感じていた。スフェンに嫌悪を抱くパーケルだったが、さらにその日の放課後、スフェンを迎えに来た彼の母親が連れていた介助犬を見て衝撃を受ける。それは、彼女が4ヶ月前に弟のアレルギーのために泣く泣く手放した愛犬アラスカだったのだ。彼への怒りとアラスカへの思慕から彼女は彼の家に忍び込みアラスカを取り返そうと目論む。
生きることに不安を感じているふたりが、その不安を乗り越える勇気を持つ過程を、SNSやメディアのトラブルも絡めて、交互に語る物語。
*******ここからはネタバレ*******
てんかん発作についてあまりよく知らなかったので、とても勉強になりました。
発作そのものよりも、突然意識障害が起きることでの事故のほうが大変なんですね。これ、とてもよくわかります。
これが1年で17回も救急車に乗るレベルだったら、本当、外出が不安になりますよね。
それまではスタースポーツマンだっただけに、現実を受け入れるのは難しいと思います。
パーケルが正体を隠してスフェンの部屋に忍び込んだ際の会話がいいですね。帰り際に「もう一度、ここにきてもいい?」「そのとき、あなたはいる?」なんて女の子に言われたら、自分目当てでないことがわかってても、なんかドキドキしてしまいます。
スフェンの発作の動画の印象を、他のクラスメイトのおもしろ動画をたくさん拡散して薄めようという意図はわかりますが、みなさん協力的で良かったですね。
でも、これで薄められる印象は、身内のものだけなので、やっぱりどんな場合でもインターネット投稿には慎重になってもらいたいものです。
アラスカが発作を予期できる介助犬だったのがとてもとても幸いですが、もしそうでなかったらどうなっていたのでしょう?その場合でも彼が強く生きる選択をしてくれることを期待します。
ふたりが交互に語る様式なのはいいのですが、読みながら今どっちだったけ?と思うことが多かったので、頁の上には題名ではなく話者の名前が入っているとわかりやすくてよかったと思います。
この出来事は2週間のうちに起こっていますが、
38頁に「アラスカとは四か月も会っていない」とあるのに、あとがきでは「八か月前に、大好きだったアラスカを手放した」とあります。これはきっと、何かの間違い?
表現は平易ですが、病気についても理解が必要なので、高学年以上の読書をオススメします。
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小学校5.6年生の課題図書。
字も大きく読みやすいが、ずいぶん深い話を読むのだと思った。
男の子と女の子の視点が交互に書かれている。
大好きだった子犬を弟がアレルギーがあるため手放すことに。
中学生になった時、自分をいじめた子が新しい子犬の飼い主と知って夜中に盗み出そうとする。
女の子は、元の飼い主、親が強盗に襲われるのを目撃。フェイスマスクをして犬のところへ
男の子は、てんかんがあり、介助犬としての新しい飼い主
二人はいがみあったりするが、夜中に会う間にお互いの気持ちも変わり
最後は仲良しに。
ハッピーエンドでいい。
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2021年度中学年課題図書。
1年前からてんかんの発作におそわれるようになったスフェンと、5ヶ月前、両親が働く店で強盗を目撃したパーケル。同じクラスになった二人は犬のアラスカの前の飼い主と今の飼い主だった。この二人の視点で交互に語られる話。
最初は場面展開に慣れなかったけれど、パーケルの正体がバレたあたりから読みやすくなり、終わり方もよかった。
「てんかん」や介助犬についても理解が深まるし、スフェンが学校で発作を起こしたとき、クラスメイトたちが動画で撮影して拡散するというのは、現代の問題をよく表してる。犯罪や携帯の所持については日本と異なるので、中学年で読み込める子は少ないかも。
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雑誌「こどもとしょかん」の新刊紹介で知り、図書館で借りた。
スフェン、13歳、男子。
1年前からてんかんの発作が出るようになり、自分自身に不安を抱えている。
パーケル、12歳、女子。
数ヵ月前、両親の写真店に強盗が入ったが強盗は逃げ出し、身の回りに不安を抱えている。
二人は中学校の1年B組で出会い、アラスカという一匹の犬で繋がっていた。
最近の児童文学は、主要登場人物が人生ハードモード設定なのか?
それぞれが抱えている問題をものともしない、それを普通に受け入れていく社会に、っていうことなのか?
LGBTが騒がれて受け入れるタイセイが少しずつ整ってきているように、あらゆる「普通じゃないこと」を登場させる荒療治的な動きが児童文学にも起こっているのか。
物語は、スフェンとパーケル、それぞれの独白で交互に進むので、共感しやすい作りになっています。
てんかんは、名前はきいたことがあるけれど知らない病気の一つで、読んでいて始めて知りました。
みんなの不安はそれぞれ違うところにあるけれど、一つ一つ解決しながら生き続けていくんだよね、と、この物語を読んだ瞬間には思います。
(考えても仕方のないことは考えない大人になってきたのですが)
思春期の男女がちょっとずれた場所で出会い、お互いに支え合っていくというストーリーはYA向きで、小学校高学年から中学1年生にいいと思います。
本書は、2017年に、オランダの児童文学賞である銀の石筆(せきひつ)賞を受賞したそうです。
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今までこうSNSが使われている本を読んだことがなかったから新鮮だった、途中動画が拡散されるシーンなんて心臓が止まるかと思った。でもこれって日本でも当たり前に起きてることで人身事故が起きたりすると動画を撮って載せる人がいる。嫌な時代だと思う、好奇心だけでそんなことができてしまうのだから。
それに自分がいかにてんかんについて無知かを知った。私は現在19歳だが義務教育の一環でもう少し病気や障がいについて学ぶ機会があってもいいんじゃないのだろうか、今は多様性の時代らしいし。
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パーケルの心の傷が分かりにくいのと、弟達の症状が流れにあまり生きていなくて、語りがどんどん変わる所や引っ越しなどの流れが読みにくいから★4。でも、話の内容も、てんかんへの理解・興味が進む意味でも、不用意なSNS拡散を考える意味でも、介助犬の理解的にも良い話だった。あと、挿絵でボルゾイ系?と勘違いした。これから読む方、ゴールデンレトリーバーですよ。
正直「ぼくとテスの~」の作者と知り、不安一杯で読み始めたけどこれは良かったです。
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相手の事を考えて行動するということネット等との付き合い方など考えさせられる話だった。でもパーケルの強盗などの心情が少し分かりにくいと感じた。
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てんかん、ADHD、SNS、インターネット…難しいテーマが扱われている作品でした。
外国の物語は苦手。
登場人物の名前が覚えづらかったり、訳の言い回しの独特な感じが受け入れにくかったり…。
二人の視点が交互に変わるのも最初は少し読みづらかったかな。
でも、今の時代の子どもに読んで、考えてみてほしい作品であると感じます。
SNS、メディアの問題だけでも難しいのに、さらにそこにてんかんへの不安や、強盗事件の経験などを絡めた作品になっているのは読み応えがあります。
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■2021全国課題図書高学年■
数ヵ月前のトラウマを忘れられない前飼い主パーケルと、突然てんかんを発症し1年遅れて入学した現飼い主スフェン。
二人の視点を交互に行き来して物語が語られるわけだけど、交代が少し慌ただしくチカチカする。
日本では主に交通事故なんかの時に取り上げられることばかりが多い「てんかん」という病気のことを、正直今まで少しもわかってなかったなと、読めて良かったと思った。
スフェンはすげえムカつくイケメン(おそらく)ですげえいい奴。
パーケルは優しくて突飛。
何となくハンデを負った人も事件の被害者も努力家の善人であるに決まってるような先入観や風潮があるけど、人の性質は良いとか悪いとかではなくただその人であるだけだ。
アラスカという犬を介した巡り合わせで近づき親しみ衝突し反発するトンガった二人が、図らずも互いに共有することになった事情を通じ、思わず唯一相手に助けを求めそれを受け即座に助けに入る様には、本物の信頼が見えた気がした。
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2021年課題図書高学年。弟に犬アレルギーが見つかり愛犬のアラスカを手放し、しかも親が強盗に襲われた所を見てしまったパーケルと、突然てんかんの発作が出てしまうスフェン、そのスフェンの家でアラスカは介助犬として飼われていた。訳された小説ってなんでこうも読みにくい言葉運びなんだろう…。テーマは良いし展開も良いと思うけど、なんか、途切れ途切れのガタガタした物語になるのはどうしてだろう。日頃、長編を読みなれてない子にこれで感想文は至難の業なのではないのだろうか、と思ってしまう。
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2021年、高学年読書感想文課題図書。
とても、面白かった。
スフィンとパーケルの物語。二人が交互に語り手になって(それも、短い文で交互に)進む。
読み手は、伏線または匂わせと言って良いのか、はっきりとは語られない主人公の言葉をそれってどう言う事?とか、考えながら読んでいく事になるので、先が知りたくなる。で、どんどん読んでしまう。スフィンは去年てんかんになった事で、人生は一変する。留年もした。だから中学1年生からやり直している。
パーケルは、アラスカと言う犬を手放してしまったが、一時も忘れられないでいる。
二人は同じ1年B組、スフィンは、「かわいそうな男の子」と思われる前に、何かみんなをあっと言わせる事をしたいと考えていた。パーケルはフランス語の最初の授業で、犬の声でジングルベルを歌い周りから笑われるハメに。フランス語の先生が自己紹介に、全員おもしろい事を3つ書きなさい。2つは本当のことを1つはウソをと言ったからだし、アラスカとの思い出だからどし、スフィンが、促したからだ。
パーケルは、学校でアラスカの声を聞く。なんとスフィンの介助犬になっていたのだ。パーケルは、夜中アラスカに会いにスフィンの家に目出し帽を被り忍び込むことに。パーケルは素性を明かさず、二人は本音で話す。
スフィンの苛立ち、パーケルは、アラスカを失った悲しみに加えて、ある事件が、ずっと心に重く影を及ばしている。読み進める内に、スフィンとパーケルの置かれている辛い状況が明らかになっていく。
世界が悪い方向に急に変わったら、悪い事が起こると不安に押しつぶされそうになっら、どうしたら良いのだろうか。この本は、絶望しないで生きていけば人生は悪い事ばかりではないと思わせてくれる。
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突然、発作におそわれる。その間に何が起こったかわからない。もしかしたら、2度と意識を取り戻せないかもしれない。
てんかんの症状が現れ、誰も自分の事を知らない学校に進学したスフェンは、両親の送り迎えも、自分だけエレベーターを使うことも、クラスメートの好奇心も心配も、介助犬も、何もかもに嫌気が差していた。以前のクールな僕はもういないんだ。
ある事件の犯人を捜しているパーケルは、大好きだった飼い犬アラスカのことを考えている。弟がアレルギーで手放さなくてはならなかったのだ。だけど、思いがけない場所でアラスカを見かけ、取り戻す決心をする。
・男の子はてんかんという病気と生きていけると気付くまで。
・女の子は飼い犬の成長を喜ぶことができるようになり、家族とPTSD に向かい合っていく。
・SNS は人を傷付けることも、エールを送ることも出来る。
・てんかんのこと、介助犬のこと、犯罪が人に深い心の傷を負わせること。
・読後、幸せな気持ちになる。二人も学校の友人たちも、これからも壁があったらよじ登る方法を思いつくだろうな!
・犬とジングルベル!
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2021年読書感想文コンクール小学校高学年の部
子どもはたくさんの不安を感じながら生きている(と思う)。
未来へのこと、家族のこと、クラスのみんなからどう見られるか、不安は尽きない。
その上、スフェンのように病気やパーケルのようにトラウマを抱えた子どもの不安はどれ程だろう。
その中で子どもたちは、他者の痛みを知り、助けあい、折り合いをつけていく力を持ってる。子どもは逞しい。
ゴールデンレトリバーのアラスカがふたりを繋ぐ。アラスカの愛と賢さに助けられていく。
ラストが良かった。個性を尊重し合えたらいいね。日本はどうだろう。
新しいクラスの自己紹介に「自分のおもしろいところを三つ書きなさい。二つは本当のこと、あとひとつは思いついたウソ」という先生が日本にいるだろうか。
ラスト、パーケルが起こしたアクションを思いつく子がいるだろうか。
海外の児童文学を読むおもしろさのひとつでもある。
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#2021 #読書感想文課題図書 #高学年
章ごとに語り手が変わる形。同じクラスの2人。1人は転入生で重いてんかんを持ち、突然倒れるかもしれないという危険からストレスを抱えている男の子。もう1人は両親の経営する店に強盗が入り危険な目にあった父親がショックで日常を取り戻せず、生活が変わってしまい、自分も大きな不安を抱えている女の子。互いに心に傷を持つ2人が、アラスカという名前の犬という共通点から導かれて、互いに課題を乗り越えていく。読後感良し。