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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.6
- 出版社: 白水社
- サイズ:20cm/249p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-560-09003-9
紙の本
通話 (EXLIBRIS)
『通話』—スペインに亡命中のアルゼンチン人作家と“僕”の奇妙な友情を描く『センシニ』、第二次世界大戦を生き延びた売れないフランス人作家の物語『アンリ・シモン・ルプランス』...
通話 (EXLIBRIS)
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商品説明
『通話』—スペインに亡命中のアルゼンチン人作家と“僕”の奇妙な友情を描く『センシニ』、第二次世界大戦を生き延びた売れないフランス人作家の物語『アンリ・シモン・ルプランス』ほか3編。『刑事たち』—メキシコ市の公園のベンチからこの世を凝視する男の思い出を描く『芋虫』、1973年のチリ・クーデターに関わった二人組の会話から成る『刑事たち』ほか3編。『アン・ムーアの人生』—病床から人生最良の日々を振り返るポルノ女優の告白『ジョアンナ・シルヴェストリ』、ヒッピー世代に生まれたあるアメリカ人女性の半生を綴る『アン・ムーアの人生』ほか2編。【「BOOK」データベースの商品解説】
【サンティアゴ市文学賞】スペインに亡命中のアルゼンチン人作家と「僕」の奇妙な友情を描く「センシニ」、メキシコ市の公園のベンチからこの世を凝視する男の思い出を描く「芋虫」など、絶望的な状況を生きる人々の声をたぐり寄せる14の物語を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
通話 | 9−76 | |
---|---|---|
刑事たち | 77−158 | |
アン・ムーアの人生 | 159−241 |
著者紹介
ロベルト・ボラーニョ
- 略歴
- 〈ロベルト・ボラーニョ〉1953〜2003年。チリ生まれ。詩人として出発し、84年に小説家としてデビュー。「通話」でサンティアゴ市文学賞受賞。
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紙の本
自分の無知をさらけ出すようで恐縮してしまいますが、全く知らない作家でした。で、読みながら、ああ、これもまたラテン文学なんだ、って思いました。でも、マルケスよりははるかにヨーロッパナイズされちゃってますけど。中には村上春樹テイストもあったりなんかして・・・
2010/01/09 22:11
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は現代文学に欠かすことのできないラテンアメリカ作家の一人なんだそうですが、1984年に小説デビューして作品が大きな賞をとっていくのは1997年頃からで、日本ではラテン文学ブームが一段落した時期だと思います。しかも、ボラーニョはそのわずか6年後には亡くなってしまうわけですから、日本での知名度は低い、といっていいのではないでしょうか。私は存在すら知りませんでした。
で、そんな私が思わず手を伸ばしてしまったのは装丁です。私はてっきり河出書房新社の本かと思っていました。それほどに素敵で、印象的な造本です。正直、この手のチョッと固めのソフトカバーで角背の本は、白水社としては珍しい。私は初めてみます。装丁に緒方修一を起用したことが、よかったのでしょうが、カバー写真 《Sally Robertson》 Ann Rhoney がなければ、これほどの成功はなかったでしょう。
それにしてもこのモノクロ写真はいい。写真は1960年代のものでしょうか。今とは違う、でも戦後の硝煙こそ消えたものの、まだまだ豊かさに向かって歩み始めたといった雰囲気がよく出ています。それにしても、この丈の光沢のあるゆったりとしたワンピースをまとった女性の後ろ姿は、よく見れば足が太めではあるものの、ピシッと決まっていて、背筋をのばすっていうのは美しいなあ、って思います。
カバー後の案内は
*
日常のはざまにふと現われる
圧倒的な瞬間。
絶望的な状況を生きる人々の声を
たぐり寄せる、14の物語。
「一個人など軽々しく押し潰してしまう激動を体験したあとでもなお真摯に言葉を発しようとする無数のセンシニやクララたち、日のあたる世界では悪い冗談の種にしかなりえない詩人やならず者や落伍者たち、彼らの声にボラーニョは静かに耳を傾けるのだ。」(「訳者あとがき」より)
『通話』
スペインに亡命中のアルゼンチン人作家と〈僕〉の奇妙な友情を描く「センシニ」、第二次世界大戦を生き延びた売れないフランス人作家の物語「アンリ・シモン・ルプランス」ほか3編。
『刑事たち』
メキシコ市の公園のベンチからこの世を凝視する男の思い出を描く「芋虫」、1973年のチリ・クーデターに関わった二人組の会話から成る「刑事たち」ほか3編。
『アン・ムーアの人生』
病床から人生最良の日々を振り返るポルノ女優の告白「ジョアンナ・シルヴェストリ」、ヒッピー世代に生まれたあるアメリカ人女性の半生を綴る「アン・ムーアの人生」ほか2編。
*
となっています。で、この小説を理解するには著者略歴が不可欠なので出版社のHPからコピーしておきます。
*
ロベルト・ボラーニョ Roberto Bolano
1953年、チリのサンティアゴに生まれる。現代文学に欠かすことのできないラテンアメリカ作家の一人。1968年、一家でメキシコに移住。その後、エルサルバドル、フランス、スペインなどを放浪して青年時代を過ごす。詩人として出発し、1984年に小説デビュー。『通話』Llamadas telefonicas(1997)でサンティアゴ市文学賞を受賞。1998年に発表した長編小説Los detectives salvajes(仮題『野生の探偵たち』、弊社より刊行予定)で同年のエラルデ小説賞を受賞、さらに1999年にはロムロ・ガジェゴス賞を満場一致で受賞した。その後も重要な作品を次々と発表するが、2003年、50歳の若さでこの世を去る。没後、遺作の大長編2666が刊行された。
*
です。以下、目次に従って各話のさわりを簡単に紹介しますが、この経歴を見ていると、その殆どが彼の体験の反映ではないのかと思ってしまいます。
1 通話
センシニ:スペインに亡命中のアルゼンチン人作家と〈僕〉の奇妙な友情を描く
アンリ・シモン・ルプランス:第二次世界大戦を生き延びた売れないフランス人作家の物語
エンリケ・マルティン:エンリケは僕と同い年で、一九五三年生まれ、詩人。詩人たるもの何事にも耐えられる・・・
文学の冒険:売れている作家Aと売れない作家B、AをけなしたBの小説をAが褒めて・・・
通話:BはXに恋している。二人は電話で別れ、再会する。そして実際に会ってセックスする・・・
2 刑事たち
芋虫:メキシコ市の公園のベンチからこの世を凝視する男の思い出を描く
雪:五年ほど前、バルセロナのバルで僕と彼は知り合った。ロヘリオは今世紀最大の作家はミハエル・ブルガーコフだと言い・・・
ロシア話をもう一つ:ドイツ軍の前線で働かされることになったスペイン人がロシア軍につかまえられて・・・
ウィリアム・バーンズ:彼が僕の友人で警官に話し、友人が僕に話したウィリアム・バーンズの不運な話。
刑事たち:1973年のチリ・クーデターに関わった二人組の会話から成る
3 アン・ムーアの人生
独房の同志:たまたま同じ年の同じ月に別々の刑務所にいた僕とソフィアの出会いと別れの物語・・・
クララ:胸が大きくて、すらりと伸びた足、青い瞳のクララが自分の街に帰ってからすべてが狂いだした・・・
ジョアンナ・シルヴェストリ:病床から人生最良の日々を振り返るポルノ女優の告白
アン・ムーアの人生:ヒッピー世代に生まれたあるアメリカ人女性の半生を綴る
訳者あとがき
面白かったのは、なんだか村上春樹の小説のような若々しい甘さをもった「センシニ」と、売れない作家の空回りする思いを描く「文学の冒険」。短いけれど落とし噺的な雰囲気のアル「ロシア話をもう一つ」、殆ど改行がなく、句点だけの文章の「ウィリアム・バーンズ」、逆に会話だけでスピーディに展開するものの、飛躍があって読者が想像で補う必要がある「刑事たち」でしょうか。
それと女性が話の中心にいる第3章はどれも面白い。奔放に生きながら、ただ悲劇に向かって走っていくような元恋人の様子を描く「独房の同志」、恋多き女性、クララの転々とする運命「クララ」、アメリカのポルノ撮影現場と俳優たちの行動が面白い「ジョアンナ・シルヴェストリ」が好きです。
訳者あとがきも、長いものではありませんがボラーニョの位置づけや、各作品のありかたがよくわかります。1998年に発表した長編小説Los detectives salvajes(仮題『野生の探偵たち』)が一日でも早く訳出されることを願ってやみません。
紙の本
全体的にはおもしろかったです
2009/07/11 13:30
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K・I - この投稿者のレビュー一覧を見る
白水社の「エクスリブリス」シリーズの中の一冊。
この本は三部構成になっている。「通話」「刑事たち」「アン・ムーアの人生」の三部。
「通話」には、「書くこと」をめぐる短編たちが収められている。この本を読んでいた当時は、僕は小説や詩を書くことに望みを持っていたから、登場人物たちの行動に共感しながら読んでいた。
ユーモアのある文章もあり、「通話」は全体的にとてもよかった。
「刑事たち」に収められている小説は、まあまあだった。ただ、僕は裏社会を描いたものが好きではないので、あまり好きになれないものもあった。
「アン・ムーアの人生」は主に女たちについての話だ。これは読んでいて退屈な話もあった。ただ、こうなって、ああなって、それから、こうなって、という連続で、これは僕の頭がよくないせいだろうが、そういうことをただ並べられてもおもしろくないと感じてしまう。ただ、ポルノ女優を扱った「ジョアンナ・シルヴェストリ」はよかった。彼女は最後に言う。「わたしたちはみんな、あまりにも早く幽霊映画の世界に入り込んでしまったのよ」。ポルノ映画は日本のAVとやっていることは一緒だ。そう考えると、ジョアンナの言葉は深く胸に突き刺さってくる。