モビリティ・エコノミクス ブロックチェーンが拓く新たな経済圏

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モビリティ・エコノミクス（深尾三四郎・クリス・バリンジャー）

■ブロックチェーンとは
・取引データを多くのコンピューターが共有し、検証しあって正しい記録を蓄積する技術。
・ブロックチェーンで世界的に注目されているのは自動車産業
・自動車産業は、持続可能な開発やスマートシティ構想などの国際的なテーマにおいて、中心的な存在。

■SDGSを加速させスマートシティの基礎技術となるブロックチェーン
・SDGｓの最重要課題である「ソーシャルインクルージョン（社会的包摂）」を実現するためにブロックチェーンは重要
・「データは新しい石油」と言われる中で、データが生み出す価値を享受する者とそうでないもの野間で貧富の差が広がる。
・ブロックチェーンはそのデジタルデバイド（デジタル格差）の解決として、富を分散させる仕組み

■自動車メーカーが直面する規模の不経済
・ある一定の生産数量を超えると、生産規模を増やすことにより収益性が悪化し、ゆくゆくは減益に陥ってしまう状況
・限界利益がマイナスに陥る

■自動車業界の破壊的変化の背景
・大量生産を競う時代が終わりに近づき、自動車メーカーは都市のデータを資源とする新しいモビリティのエコシステムでどう生き残るかを模索する新しい土俵にたたされている。
・新しいエコシステム
　①自動車産業の根底に流れるデジタル「社会」への対応
　②脱炭素の追求と都市化（人口の都市への集中）への対応という地球環境問題を解決する時代の到来
　③ミレニアル「世代」やポストミレニアル世代といった若者世代の台頭

■デジタルツイン技術
・現世界の人や物の情報をIoTを活用して、ほぼリアルタイムでサーバー空間に送り、サイバー空間内に実世界の人や物、そして環境をさいげんする。
・サイバー空間上で効率的にモニタリング。シミュレーションすることにより、実世界のモノや設備の故障や変化を事前予測する。
・デジタルツインをブロックチェーンに記録することで、複製されたり改ざんする事がなくなり、固有性を保護される。
→ブロックチェーンはデジタルツインの基盤技術となる。

■国を丸ごとデジタルツインにするシンガボール
・スマートシティとは、自動車や街頭に設置されているセンサーなど、町中のありとあらゆるモノをインターネットでつないで、そのネットワークから膨大なデータを収集し、データを活用して作られる安全で便利な未来型都市の事。
・５Ｇの登場により、今や世界中の都市でスマートシティの構想が模索されている
・最も意欲的にスマートシティプロジェクトを行っているのがシンガポール

★シンガポールのスマートシティ
・2014年にスマート国家構想を打ち出し、デジタル技術を活用した住みやすい社会を作るという理想を掲げている
・その実現に向けて、国土に関する情報のデジタル化と、各種センサーの整備によるＩｏＴの発展を推進している。
・より具体的なプロジェクトとして、国を丸ごと３Ｄデータ化し、都市のデジタルツインをサイバー空間上に再現する試み「ヴァーチャルシンガポール」
→各種インフラ設備計画の立案
→発電量のシミュレーションによる太陽光発電パネルの設置場所検討
→自動車等の交通シミュレーションによる渋滞解消・交通機関の改善

■ブロックチェーンがＳＤＧｓ達成に貢献する６つのこと
①金融包摂の促進
・銀行口座の保有が貧しい地域の人には必要だがハードル高い
・フィンテック企業とブロックチェーン活用の国際送金ネットワークとモバイルアプリで、電話番号とデジタルＩＤで口座開設可能
②エネルギーのアクセスを改善する
・地域コミュニティがブロックチェーンを活用すれば、再生可能エネルギーやスマートメーターなどＩｏＴを駆使しながら、スマートグリッドで電力の地産地消・余剰電力の販売ネットワークを構築できる
③責任ある生産・消費
・効率的で透明性の高いサプライチェーン管理の実行
・数千年の歴史のあるエクアドルのカカオ栽培、今まで多くの農家が適正な報酬を受け取れなかったがブロックチェーンにより適正化
④環境保護
・緑林に対して報酬としてトークンを付与するプロジェクト
・太陽光発電技術への投資など脱炭素社会へ貢献する行為にトークン
⑤法的アイディンティディの提供
・アイディンティディの証明は、医療や配給、法的保護、金融サービスへのアクセスにとって必要不可欠
・世界中には7000万人以上の難民がパスポートなどの法的アイディンティティを持っていない。
・デジタルＩＤをブロックチェーンで管理することで、難民への適切かつ迅速なサービスを提供できる。
・難民に紛れ込んだ犯罪者・テロリストをあぶりだすこともできる
⑥寄付の効果向上
・暗号資産を使った寄付で、透明性の担保と送金における仲介者の排除
・非効率な寄付の収集を識別し、寄付の効果を向上させ、贈賄や腐敗と戦うためにブロックチェーンを活用する

■コロナショックで露見したサプライチェーンの脆さ
・世界規模の危機により、サプライチェーンのレジエンス（危機耐性・復元性）が低いことが露呈した

■イタリアで３Ｄプリンター活用
・コロナ禍で３Ｄプリンターで人工呼吸器の弁を生産
メリット
①適切な原材料と設計図があれば、金型は必要ないので数多くの種類のものを同一機械で柔軟性高く、迅速に製造できる。
②利用される場所の近くで製品を作ることができ、物流コストの削減と現場ニーズへのダイレクトな対応が可能
③オンデマンドで製品を製造し、即座に使うことができる

■アマゾンが自動車会社になる
・2020年6月自動運転技術開発を手掛ける新興企業の買収
・自動車の製造から販売・物流・アフターサービスといったバリューチェーンの上流から下流までカバーする総合モビリティサービス企業になる

■スマートシティとブロックチェーン
・中国はスマートシティの基盤にブロックチェーンを据えている
・北京郊外のスマートシティ実験都市（雄安新区）でテンセントやアリババなど大手企業や大学・献金機関がスマートシティを研究するコンソーシアムを立ち上げた
　

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今、構造的な変化に苦しむ自動車業界が復活するカギは、ブロックチェーンにある。今後、様々な業界に拡がっていく、このブロックチェーンの技術と活用事例を紹介する書籍。

2019年以降、大手自動車メーカーによる生産能力の削減計画が相次いでいる。
それは、自動車産業が、生産規模を増やすことにより収益性が悪化する「規模の不経済性」に直面したから。その背景には、様々な取引コストの増大がある。

今後、自動車メーカーは、都市のデータを資源とする新しいモビリティのエコシステム（生態系）で、どう生き残るかを模索しなければならない。
そのためには、「CASE（コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化）」や、「MaaS（サービスとしてのモビリティ）」に対応する必要がある。

近年、MaaSの実証実験が数多くなされているが、多くのケースで儲けが出ていない。
収益を上げるには、ブロックチェーンを活用する必要がある。その具体的な方法は、次の通り。
①車両がコミュニティに有益なデータを提供し、見返りにトークン（暗号資産）を受け取るなど、稼ぐ仕組みをつくる。
② MaaSの利用者にトークンを与えるなど、インセンティブ設計を施すことで、利用者を増やす。

ブロックチェーンは、サプライチェーンのレジリエンス（危機耐性、復元性）を高める上でも有効。
サプライヤーの情報をブロックチェーンに記録しておくことにより、未曽有の災害が発生しても、トレーサビリティ（追跡可能性）を実現し、サプライチェーンを迅速に再構築できる。

3Dプリンターで作る製品など、デジタルプロダクトは知的財産（IP）の保護が難しい。ブロックチェーンは、こうしたIPを仲介者なしで管理する技術として有望視されている。

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モビリティの未来について思索するヒントにと思い読書。
モビリティのみならず、WEB3.0.スマートシティに関しても触れられており、認識の整理、思考を広げる参考になる良著。
ブロックチェーンのユースケースマップなども整理に非常に役立った。
よくある海外版ほど事例によっておらず、事例と概念のバランスが個人的には程よく読みやすかった。

メモ
・完全自動運転は依然として遠い未来の話だが、それより前に、自律型決済、移動経済が行われる世界観が先に実現される。
・ブロックチェーンで難しいのは実装の技術ではなく、規模に乗せてスケールのある形にしていくという部分。ティッピングポイントをいかに超えるかという部分。ブロックチェーンはチームスポーツだと。
・CASEにおいて、事業付加価値が既存自動車関連企業からテック企業を中心としたデータアグリゲーターに移行し、新規参入が増え、競争激化で収益性低下が続いている。
・ブロックチェーンはさまざまな取引コストの回避または大幅削減を可能にするもの。モビリティを持続可能なものにするために有効な技術。
コスト削減のみならず、スマートコントラクト的な運用で、トークンを活用し、望ましいモビリティ利用を推奨・誘導することにもつながりうる。ハード投資なく、ソフト施策の設計・実装が容易になる。
・儲かりMAaSには売上の創造が必要。２つあり、１つは車両がお金を稼ぐ仕組み。渋滞解消や事故防止につながるコミュニティに有益なデータを都市や自治体につなぎトークンを稼ぐもの。もう一つは利用者がコミュニティに望ましいサービスを消費した際に、トークンを与えるようなインセンティブ設計。
・web3.0ではフィジカル空間との接続性がより高まった世界観。
・ブロックチェーンは三式簿記が特徴の一つ
・SDGS達成のためにブロックチェーンができる6つのこと
　金融包摂の促進　現金送金が迅速簡単に
　エネルギーへのアクセスを改善　エネルギー流通をスムーズ明確に
　責任ある生産消費　トレーサビリティ向上と取引コスト削減
　環境保護　トークン付与プロジェクトで個人の貢献を可能に
　法的アイデンティティの提供　デジタルID生成と個人紐付けの実現
　寄付効果向上　透明性担保と仲介者排除
・ユーティリティトークン　暗号資産資金調達の証明として配布されるもの
　セキュリティトークン　特定資産の所有権を表す暗号資産。アセットバックトークンとも。
　ステーブルトークン　安定価格を実現するよう設計されたトークン。法定通貨等と連動性を持たせるものなど
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