紙の本
人物描写が豊かな良作
2012/01/24 22:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジアラト - この投稿者のレビュー一覧を見る
ディヴァイン、本格ミステリの偏見を覆すほどに、人物書くのが巧すぎるな。この作品では、三人の語り手が存在するのだが、それぞれの語り手の主観で、各々の人物に対する嫌悪や偏見や、フィルターが通されている結果が生じている為、全人物があまり感情移入できない人物に思えてしまったのは、皮肉なことだ。
この作品もディヴァインの特徴が良く出た、田舎の村で生活する人々を活き活きと描きながら、13歳の少女連続殺人におけるサイコな動機のミッシングリンクと、三つの要素――誰が犯行が可能であったか・アリバイの有無・動機の有無から見事なフーダニットが繰り広げられる良作である。
それぞれの章の前に設けられた、次の被害者が殺される直前を描いたプロローグの数々という趣向が魅力的であり、マンデイを中心とした、ロマンス&恋愛ものの要素も濃厚な、ミステリ以外の要素にも要チェックである。
紙の本
子どもと大人の間の小さな隙間で
2011/11/30 18:50
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アヴォカド - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏休み直前の13歳の少女たち。
子どもの時間が終わりかけ、でも大人になるまでにはまだ間がある、隙間の時間。
子どもと大人の間の隙間。無力と全能感の間には、隙間がある。
複数の登場人物の一人称で語られるので、語っている人の立場に立ち易い。
私はついマンディ・アーミテイジの立場に立って(大抵の読者はそうかもしれない)読んでしまったので、この結末にも後味にも、大きな不満はない。
13歳の少女たちの人物造型や心理描写にも、不自然や不整合は感じない。充分(以上)だと思う。
ただ、いささか動機は弱いように思う。
タイトルはマザーグース "Ten green bottles" から、ですよね。
1本ずつ減っていく数え歌。マザーグースの場合は、最後には何もなくなってしまうわけだけれど。
やっぱりあれじゃないかな、何かを得て大人になっていくのじゃなくて、何かを失って大人になっていく、のじゃないかな。
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まあどの小説でもそうだけれど、これは特に、誰に気持ちを移入して読むかで、見えてくるものは違ってくるだろう。
夏休み直前の13歳の少女たち。
子どもの時間が終わりかけ、でも大人になるまでにはまだ間がある、隙間の時間。
子どもと大人の間の隙間。無力と全能感の間には、隙間がある。
複数の登場人物の一人称で語られるので、語っている人の立場に立ち易い。
私はついマンディ・アーミテイジの立場に立って(大抵の読者はそうかもしれない)読んでしまったので、この結末にも後味にも、大きな不満はない。
13歳の少女たちの人物造型や心理描写にも、不自然や不整合は感じない。充分だと思う。
ただ、いささか動機は弱いように思う。私だったら、この動機ではここまではいかないんじゃないかなあ、と思う。
タイトルはマザーグース "Ten green bottles" から、ですよね。
1本ずつ減っていく数え歌。マザーグースの場合は、最後には何もなくなってしまうわけだけれど。
やっぱりあれじゃないかな、何かを得て大人になっていくのじゃなくて、何かを失って大人になっていく、のじゃないかな。
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人物描写がとても丁寧で、フーダニットミステリとしても人間ドラマとしてもおもしろかったです。
登場人物達が互いに疑ったり、憎んだり、嫌ったりしているドロドロした関係を築いていますが、嫌な奴だ、と思っていた人達も弱さや愛情を隠し持っているのが滲み出てきて、その人間臭さに親近感が沸きます。
中でも発達障害を抱えた乱暴者で嫌われ者のシーリアと、傷つかない為に堅く心を閉ざし、人との間に強固な壁を作るマンディの異母姉妹が強烈。
父親のジョンのキャラクターがわたしには一番不気味でした。
このどこか壊れた人々の人間関係にどうしても目を奪われてしまいます。ストーリーで読ませて読者を惑わせるのが巧いところです。
一人の少女の殺人事件によって田舎町は恐慌に陥り、少女達は怯え用心しているにも関わらず、なぜ殺人は止まらないのか。
ロジックや犯人の以外性の凄さがあるわけでもないのに、動機を含めて犯人判明のシーンは衝撃的でした。
緊張しっぱなしで暗いサスペンスフルな展開からの、ちょっと心温まるラストは素敵。
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ある町で次々と起こる13歳の少女殺人事件。最初の殺人事件の犯人と疑われた医者も、事故死(自殺?他殺?)するが、その後も殺人は続く。
その町で診療所を経営する医者家族を中心に、被害者との関係をそれぞれの視点から描く。
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友人たちと泳ぎに行った少女が死体となって発見された。若い医師が容疑者と思われたが、崖から転落して死亡する。そしてまた別の少女が殺され…
今回は視点が何度か切り替わる構成で、語り手となるキャラがそれぞれに鬱屈を抱えている。
事件は一見地味な展開だが、登場人物の人間関係を追うだけでも面白く、ディヴァイン得意の伏線も最後に明らかになるとなるほどと思わせる。読むたびにうまい作家だなあと思う。
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夏休み直前友達グループと泳ぎに出かけたジャニス。ジャニスを送った女教師シーラ。ジャニスと対立するシーリア。シーリアを溺愛するグウェン。泳いだ帰りゴルフ場を横切って帰ろうとし翌日全裸の死体となって発見されたジャニス。疑惑を向けられた医師テリー・ケルダン。テリーの元恋人で病院の秘書であるマンディ。マンディの父ジョンと共同経営者ベン・ラドフォードの関係。転落死したテリー。誰のが追い詰められたの自殺と考えたが・・・。テリーの弟マークの捜査。マークとマンディ、シーラとの関係。映画の帰りに何者かに車で連れ去られ同じく全裸で発見されたレスリー。テリーの日記に書かれたレスリーへの記述。レスリーの日記に書かれた謎の人物とのドライブ。シーリアが目撃したレスリー連れ去りの現場と犯人。マークの仕掛けた罠。
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やっぱりこの作者は面白い。フェアな「本格」ものであり、人物もくっきり浮かんでくる。過度に陰惨なところもない。他の作品もゆっくり読んでいこう。
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友人と遊びに行った少女が全裸死体で発見され、やがて犯人と目されていた男が墜落死する。
男の弟が真実を求めて、一人捜査に乗り出すが…。
多少ミステリ部分は弱いような気もするけれど、それを補って余りある丹念な人物描写。
そしてきれいに提示される手がかり。
こういう地味な本格は大好物です。
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評判が良さそうなので読んでみたが、面白かった。
読み始めると一気読み。
学生の頃までの読書は翻訳ミステリーがかなりの部分を占めていたのに、最近はさっぱりで作者のディヴァインも初読みだがなかなか良さそう。
今年は少し翻訳ものを読むようにしようと思っているのだが、どうなるかな。
はずれ(私にとっての)がないといいんだけど。
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ディヴァインの他の作品とは違い、章ごとに語り手が変わるのが新鮮でした。14歳の少女が絞殺死体となり発見され、アリバイが無く夜中に犬の散歩をしていた優男が状況証拠により疑われ、その後転落死。恋人からも良心の呵責に耐えかねて自殺したのでは、と疑われていたものの、その優男の死後にまた14歳の少女が同じ状況で殺されて、、、というフーダニットもの。事件の謎解きより、例によって容疑者となる家族の人間関係の方が興味深い。ディヴァインの魅力にはまってからこの作品を読んで良かったです。刊行順を工夫してくれた出版社に感謝。
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夕方から泳ぎに行ったり、夜なかなか暗くならないところや踏み越し段といったところに英国ミステリを感じます。
ディバインは子どもを描くのが上手いですね。
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一気に読んでしまった。タイトルに秘められた意味は結局よくわかりませんでしたが。面白かったが犯人特定の論理、これで良いのか。違う人が犯人だと思ってたが、その人を排除した論理に納得いかんかった。
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章ごとに語り手を変える構成で、英国のある田舎町で起こった少女連続殺人を描く。
各々の語り手が非常に個性的で面白い。語り手は各々、鬱屈を抱えてはいるのだが、それが逆に人物像にリアリティを与えている。
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面白かった 初作家さん 数行読んでこの作家は頭がいい人だなと思った
ベンがシーリアにする注射が怪しげで、雫井脩介「火の粉」で乳酸菌飲料をぐびぐび飲む少女とだぶった
腹黒シーラがマークにグイグイ接近する マークがシーラになびくたびに「お願い、そっち行かないでー!」と全力阻止に駆られる自分がいた マークがシーラと婚約した時には、もはやこれまでか…ガックリ と思いきや怪我の功名でマークがマンディの良さにやーっと気づく ヨカッタヨカッタv
p167 誤植あり × レスリー 〇 リドリー 校正さん、おきばりやすw