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コージー作家の秘密の原稿 (創元推理文庫)
裕福で年老いた大人気コージー作家のエイドリアンが、子どもたちに結婚式の招待状を送りつけてきた。この結婚でまた遺言書が変わるのかと当惑する子どもたち。屋敷に集まった彼らに父...
コージー作家の秘密の原稿 (創元推理文庫)
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商品説明
裕福で年老いた大人気コージー作家のエイドリアンが、子どもたちに結婚式の招待状を送りつけてきた。この結婚でまた遺言書が変わるのかと当惑する子どもたち。屋敷に集まった彼らに父親が予想外の事実を告げた翌朝、相続人候補がひとり減ることに。だれもがあやしい殺人事件に挑むセント・ジャスト警部の推理の行方は?皮肉の効いた筆致が光る、アガサ賞受賞のシリーズ第一作。アガサ賞最優秀処女長篇賞受賞。【「BOOK」データベースの商品解説】
【マリス・ドメスティック奨励賞】【アガサ賞最優秀処女長篇賞】【「TRC MARC」の商品解説】
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アガサ・クリスティへのオマージュも楽しみ
2012/01/28 07:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
コージーミステリ(cozy mystery)とは、何かわからなくて英語の辞書をひいたら「居心地良い」としかなく
(イギリス英語ではcosy)ネットで調べたら、アガサ・クリスティのミス・マープル・シリーズのように
狭い人間関係、御近所などで、主に女性が謎を解く、という素人探偵もの、暴力描写が少なく、
日常生活などで起きるミステリだそうです。
この物語は、イギリスのケンブリッジに住む、人気コージー・ミステリ作家、サー・エイドリアンの
巨額の財産を誰が相続するか、4人の息子、娘たちがどたばたするほか、登場人物、
ぞろぞろ出てまいります。
サー・エイドリアンは、ミス・マープルならぬ「ミス・ランプリングもの」がベストセラーの人気作家です。
‘サー’の称号がついている通り、ケンブリッジの大豪邸、マナーハウスに住む上流階級。
ある日、ばらばらに住んでいる4人の息子、娘たちに届いた「父の結婚式招待状」
新しい妻が来てしまえば、遺産相続の取り分は?70すぎの老人である父と結婚なんて
財産目当てとしかいいようがない。
全体を通しているのは、やはり古き良き時代のアガサ・クリスティへのオマージュと風刺と皮肉で
もって、パロディともとれる描写でにやり、と目が三日月になる場面多数。
あの大家のあの名作のあのトリックなぞ、平気でパクッてしまう作者も作者だけれども、そういう
ものを飽きることなく欲する読者ってのもなぁ、という皮肉。
「べらべらしゃべるだけのばあさん」ミス・ランプリングというのも笑えるのですが、サー・エイドリアンは
遺書をころころ書き変えて誰が一番、遺産を相続するかをすぐ変えて、子どもたちがいがみ
あうのを見るのに満足を覚えるという、タチの悪い偏屈老人です。その偏屈ぶりも見事。
しかしそこに(やぱり)起きるのであった、殺人が。
殺人だけではなく、色々な要素がてんこもりでサービス満載です。
親子、兄弟姉妹、仲悪く「いい人」が妙に出てこないところも、読みどころ。誰も彼もひとくせ
ふたくせ、みくせ、よくせ・・・・クセ者ぞろいで、よくこれだけの登場人物を交通整理したな、と
思います。
情というと愛情とか友情、と良い意味の言葉で使われるのですが、感情は「憎しみ」「嫉妬」
「欲」といったものも「情」です。
なんともいびつな親子、兄弟関係ではありますが、底に流れるのは「上流階級だって
金になると目の色変わる俗物」という作者のユーモアセンスであって、陰湿ではありません。
コージー・ミステリならではの暴力描写もほとんどありません。
また、口ではけなしても、いざ、殺人事件となると兄弟たちはさすがにそこまでは?と思う。
そこからぎこちない連帯感が生じたりします。
仲は悪くても家督を継ぐとなると、結局、血筋だの血統だの・・・そんな歴史の繰り返しを
今でもやっているのをかなりの皮肉と風刺でもって描いています。
アガサ・クリスティは好きな作家ですが、やはり人間の感情というものにとても重点を置いて
いました。
コージー・ミステリ作家、小説の世界を描いたコージー・ミステリ。
そして粋というか、ユーモラスな幕切れ。
情を巧みに操ったアガサ・クリスティが好きな人はちりばめられた、パロディやウンチクを楽しんでください。