紙の本
大宰府に追いやられた瑠璃姫をめぐる王朝ミステリー
2012/01/19 16:46
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
『千年の黙』『白の祝宴』に続く源氏物語シリーズ3冊目。
玉鬘(葛)から若菜までを執筆する紫式部と
その周辺を描く王朝ミステリー。
源氏物語の謎を丁寧に拾い集め
それをきれいに解き明かす。
昔読んだ記憶がバシバシ甦ってきて
心地よさにひたる。
今回の大きなミステリーは
「若菜」に出てくる「瑠璃」姫について。
女性はあだ名や局名、官位で登場するのに
なぜ、瑠璃だけは本名なのか。
道長がこっそりと匿う、やんごとなき身分ながら
日蔭者の瑠璃姫。
彼女の幸せを祈る香子(紫式部)の策略が光る。
さらに突然身罷った一条帝から三条帝へと
帝位が引き継がれるものの、
道長とは全く相いれない三条帝が
失脚していくまでを見事に描く。
道長の長女彰子は一条帝の妃、
二女の妍子は三条帝の妃、
三女の威子は後一条帝の妃、
四女の嬉子は後朱雀帝の妃という
道長の栄華が成立する。
道長は、野心はあるものの、実は小心者で
この頃にはそれほど政略を巡らせたわけではなく
賢き彰子という娘に恵まれたこと、
皇子が順調に生まれたこと、
時の運が大きかったことなど、時代の読み解きもおもしろい。
前作までの道長とは印象が変わり、
また香子にしてやられることもあり、
なんだか親近感がわいてしまう。
この間に、身罷った一条帝の娘、修子に仕える童の糸丸が、
その日の食料を確保するだけで精一杯の童、秋津と知り合い
この時代の庶民や農民の怨嗟の声も伝える。
それは香子にも届く。
これは宇治十帖で漂う仏教思想へと繋がるのだろうか。
また、源氏物語の瑕疵に至るまで
香子に言い訳させ、さも本当のように思わせる。
思わず、笑ってしまった。
次の作品にも期待してしまう。
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
不思議な冒険と縁を含んだ玉葛十帖。そして光源氏の栄華とその影にある悲劇を描いた若菜。
紫式部の生きた時代の出来事とクロスさせていく、ドラマの作り方は面白い。ただ、これをミステとするには、謎解き部分が食い足りない。
紙の本
ずいぶん待たされました
2012/01/29 20:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:セケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
平安王朝推理絵巻…ですか?
第3弾と言っても最初の「千年の黙」が出たのは2003年とのこと、かなり長く待ちましたよ~
雲隠 が今回再び(描き方を変えて)掲載されているのはちょっと意外。本作の方が書き方も余韻があって良いと思うけれど…。
かかやく日の宮という源氏物語の「謎」に真っ向から取り組んだ前作に対して本作は登場人物も幅広く活き活きと描かれているように思われます。
主人公はもちろんながら、和泉式部や彰子も魅力的で読んでいて楽しい小説。
シリーズのおそらく最後となる宇治十帖については、どうぞこの勢いであまり待たせずに書き上げていただきたい。
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紫式部、香子ミステリの第三弾。
玉鬘と若菜の巻を道長の話と絡めて進めたミステリ。
次は宇治十帖で完結なのかも。
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紫式部が物語に忍ばせた、栄華を極める道長への企みとは?平安の都は、盗賊やつけ火が横行し、乱れはじめていた。しかし、そんな世情を歯牙にもかけぬかのように「この世をばわが世とぞ思う…」と歌に詠んだ道長。紫式部は、道長と、道長が別邸にひそかに隠す謎の姫君になぞらえて『源氏物語』を書き綴るが、そこには時の大権力者に対する、紫式部の意外な知略が潜んでいた(「BOOK」データベースより)
森谷さんの源氏物語メイキングシリーズ第3弾。
今回は「玉葛」と「若菜」がメイン。
源氏物語の中で唯一名前がはっきり出ている姫がいるのはなぜなのか。
道長がかくまっている血縁の姫を軸に、これまた香子(森谷さん)がうまく物語に仕立て上げているんだな~。
相変わらずむかつく思い上がりおっさんな道長が、若菜読んでしょんぼりしてる姿を想像して、胸がすく思いでした。
残り十三帖分のストーリーも絶賛妄想中らしいので(そうか?)次巻も楽しみに待ってます~。
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源氏物語「玉鬘」「若菜」の展開と、道長の栄華をシンクロさせる「源氏物語メイキング」第三部。「雲隠」の使い方が素晴らしかった。
「源氏物語メイキング」はまだまだ続くようで嬉しい。太宰府での再会がこれからの展開にどうかかわるんだろう。
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(No.12-3) 源氏物語シリーズの第三弾。
内容紹介を、表紙裏から転載します。
『平安の都は、盗賊やつけ火が横行し、乱れはじめていた。しかし、そんな世情を歯牙にもかけぬかのように「この世をばわが世とぞ思う・・・・」と歌に詠んだ道長。
紫式部は、道長と、道長が別邸にひそかに隠す謎の姫君になぞらえて「源氏物語」を書き綴るが、そこには時の大権力者に対する、紫式部の意外な知略が潜んでいた!
紫式部が物語りに忍ばせた、栄華を極める道長への企みとは?』
こんなに早く続きが読めるとは!嬉しくってわくわくして読みました。
前半は「玉葛」後半は「若菜」。これらを紫式部が書いた動機と、書いていたときの道長の様子や宮廷の権力闘争が絡まりあって描かれています。
研究者の間でも今まで指摘されてきた、物語中一人だけ名前がはっきり明かされている姫君のこと。しかもたった一度。本当に唐突で、私でも「何でだろう?」って思っちゃう。
「紫上」とか「葵上」などは読者がつけたあだ名で(でも多分作者公認)、本文中にはそのあだ名さえ書かれていません。お姫様たちは「大姫」「中の姫」、結婚した方は「上」「御方」などと書かれてるんだから。
名前は秘されるもの、それなのになぜ本名?その謎が奇麗に解かれていて、ああそういう訳だったの!と納得してしまいました。よくやった!香子。
「若菜」が上下に別れていること、しかも上と下ではがらっと違ってしまう光源氏の姿。上下に分けたことに、そういう理由があったのね~。
その間に、宮廷では大きな変化が起こり、彰子中宮も変わっていきます。母ですね・・・ちょっと恐い。
私は森谷さんの書いたものの中では、この「源氏物語はなぜ書かれたのか」シリーズが一番好き。
こんなに早く次が読めると思ってなかったので、すごく嬉しいです。
あとがきで、物語の残りをひねくり回していると言っている作者。それが読める日が楽しみです。
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シリーズ三作目。源氏物語と現実とがどこかしら繋がりつつ紡がれる物語。源氏物語をあまり知らなくても楽しめますが。もっときちんと読んでおけば良かったなあ、という気もします。
源氏物語の進行はもちろん、道長の政治的策略やそれぞれの人の思い、そして数々の事件。どれをとっても面白くて。頻発する火事の理由は悲しいけれど。これってもしかしたら、現代でも言えることなのかもしれませんね。
さて、宇治十帖がまだ残っているので、シリーズもまだ続くようですが。あの人やあの人は次作では登場しないのかなあ……。
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源氏関連の作品を出している著者の3作目らしい。
初読みの作家。
読み始めたとき現代調の会話に違和感があったが、読み進めるにつれて小説としての筋立てのおもしろさが増しあまり気にならなくなった。
なかなかおもしろかった。
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こう言う話好き。
若菜と題うってますが、玉葛の章がメイン。
紫式部怖かったけど、道長も大概いらっときてたので、紫式部のとった行為にスッキリ!
それにそうしたがために源氏物語は今も人気なのだろうなと言う解釈も好きです。
あと、ほんのりミステリな所もあり。満足なお話です
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『源氏物語』には、実は紫式部の道長に対する憤懣やる方ない心模様や彼を取り巻く人々への思い遣りや祈りが、密やかに、かつ強かに織り込まれている…本当にそう思えてくるのが心愉しい作品。
会話が現代調なのが若干気になりつつも(とは言っても、そうじゃないと私には読めなかっただろうけど)道長と帝の確執、深窓の姫君たちのほんとうの想い、貴族ではない所謂『人ならぬ身分』の者たちの生きざま等々が丁寧に紡がれていて面白かった。
他にもこのシリーズ(?)が2作品あるようなので、そちらもぜひぜひチェックしたいところ。
でもせっかくの王朝文学なので、もっともっと華やかな部分も読みたかったなぁ。
次作では、衣装や小物、建築、遊びなんかの描写が増えたら嬉しい!
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紫式部日記シリーズの第三弾!
前作「白の祝宴」がイマイチ助長的でテンポが悪く失速感が否めなかったのですが、今回は面白いです!
ミステリとしての出来はまぁそれなりでさほど目から鱗などんでん返しがあるわけでもないですw
物語は主に時の摂関藤原道長の様子を描いているのですがこれが面白い。
有名な歌「この世おば 我が世とぞ思う望月の 欠けたることもなしとおもえば」がありますが、道長がこの境地に辿りつくまでの道のりは決して楽では無かったのだ、と何度も思い知らされます。
我が子3人を帝の中宮にし、自身孫2人が時の帝となったのだからそりゃ満月も欠けることの無かった人生だろうよ、と思っていましたが、そうなるために常に目を見張りタイミングを間違うことなくその時々に合わせた絶対の答えを選び続ける人生。
これって相当ストレスがかかるし正直しんどいと思うのです。
そんなおっさん道長を尻目に、リアル朧月夜の娘瑠璃姫はリアル玉鬘として現実的な幸せを自分の手でつかみとり、寂しい暮らしを強いられ世にも忘れられた王妃元子も真実の恋をし愛を得ます。
この2人の恋愛顛末は読んでいて爽快で「女は強い!」と思え本当に清々しいです。
「白の祝宴」から「望月のあと」刊行までに9ヶ月。
あとがきでも筆者本人の弁解がありますが、この「望月のあと」には計画性が見られますw
次回作・次々回作ともに計画的に刊行されることを願って止みませんw
早く続きがよみたーーーい!
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第2弾はとばして、これを読んでしまったけれど、やはりおもしろいわぁ~!!源氏好きの読者にはたまらないですよね。
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おお、早くも式部探偵ものの続編が!と期待に満ち満ちて読み出す。面白い。確かに面白いんだけど、「千年の黙」を読んだときのような感動はなかった。
なんだか展開がバタバタしている感じがする。「千年の黙」や「白の祝宴」には、少々の不満など気にならない魅力があったのだけど。
もうひとつ。あれで道長への一撃になってるんだろうか。やや腑に落ちない感じ。
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源氏物語の「玉鬘」に絡めた物語。
瑠璃姫という名前とそのおてんば具合から『なんて素敵にジャパネスク』を思い出した。
氷室冴子さんはここから彼女の名前を思いついたんだろうか??
なんて本筋とは違うことに思いを馳せてしまっております。
『千年の黙』での伏線がここで繋がったりしていてふむふむと読んでましたが、第一作では道長って実は文学青年だったけど相手に恵まれてなくて香子と文学の話したくてしたくて仕方がなかったとか言ってなかったっけ?こんな世俗にまみれたおっさんにしちゃっていいの??いや、藤原資実だったか?
まるで年立てつけて迫るような女房どものようなこと考えたり。
宇治十帖まで続くらしいのでもう少しお付き合いが続くことになりそう。
中宮彰子との訣別シーンが印象的でした。
道長とのやりとりより一層深いものがあると思うのだが。