紙の本
美しいフォルムの小説とカードマジックに隠された青春の悩み
2009/12/16 13:05
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
カードマジックを得意とする女子高校生・
酉乃初(とりの はつ)を中心に、
彼女に恋する同級生・須川の視線で描く連作ミステリー。
マジックのテクニックをモチーフや物語展開に上手に活かし
とてもきれいにまとまっています。
教室では無口な彼女が、レストラン・バー「サンドリヨン」で
カードマジックを披露する時は、別人のように生き生きしています。
彼女を、オレンジジュースをすすりながら見ているポチこと相川が
二人の関係を象徴しています。
著者は小説のフォルムへの美意識が高く、完成されています。
今度は、これを自ら壊していくとより深い味わいのある
ミステリーを書きあげるのでは、と期待されます。
ライトな口調の文体は、やりすぎの感がありますが
ミステリーの読者層を広げる意味では、とても読みやすい。
収められたミステリーは4本。
図書館の本棚が一段だけ、真ん中の一冊を残して
あとはひっくり返して、切り口が見えている。
(「空回りトライアンフ」)
音楽室の机にナイフで刻まれた「fff」の意味。
(「胸中カード・スタッフ」)
霊能力があると噂される飯倉静香は本当に「見える」のか。
(「あてにならないプレディクタ」)
2年前自殺した女子生徒の幽霊の噂。
(「あなたのためのワイルド・カード」)
学園ミステリーに青春の悩みを絡めていきます。
青春の悩みという王道のテーマは少女小説的要素が多く、
やや陳腐に傾きがち。
男子生徒を語り手にしながら、彼を取り巻くのは女子ばかりで
女子校の雰囲気が無きにしも非ず。
リアル感が欠けるのが気になります。
しかしミステリー要素は、日常の謎を、
章を重ねるごとにクレッシェンドさせていく手法。
4つの連作にした意味があり、小説の才能を感じます。
やはりトータルの美しさが際立つ作品です。
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甘酸っぱいです。
とてもいい読破感があります。
ただ、キャラクターが多すぎて把握ができない部分が
多々ありました。
甘酸っぱいのがお好きならおススメ
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ポチこと須川くんが、高校入学後に一目惚れしたクラスメイト。不思議な雰囲気を持つ女の子・酉乃初は、実は凄腕のマジシャンだった。放課後にレストラン・バー『サンドリヨン』でマジックを披露する彼女は、須川くんたちが学校で巻き込まれた不思議な事件を、抜群のマジックテクニックを駆使して鮮やかに解決する。それなのに、なぜか人間関係には臆病で、心を閉ざしがちな初。はたして、須川くんの恋の行方は―。学園生活をセンシティブな筆致で描く、連作ミステリ。
全選考委員が「うまい」と評した第十九回鮎川哲也賞受賞作。
《ブックデータベース より》
《2009年10月18日 読了》
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鮎川哲也賞受賞作。
マジックとミステリの組み合わせは先人の泡坂氏を思い出しますが
今作はマジック色は濃くなく、作品の一つのテイストとして使われています。
どちらかというと、ガーリーな青春小説、恋愛小説といった要素が
強いように思います。
こういった要素自体は他の作品でも読む事が多いですが、ガールズテイスト
が強いためか、イマイチ馴染めなかったです。少女たちの友情や、その
人間関係、そして抱える悩みや苦悩...に共感できないってのもあるんですが
そもそも、なんか薄っぺらいなーという書かれ方が気になります。
語り手である「ボク」の草食っぷりや、主人公の酉野さんの語る夢...に
現代の高校生は共感するのかしら...?
米澤さんの小市民シリーズなどと比べると、圧倒的に「何か」が違う事を
感じてしまいます。
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姉につれられてやってきたレストラン・バー「サンドリヨン」。須川はそこでマジックを披露する彼女に一目惚れしてしまう。彼女は須川と同じクラスの酉乃初であった。
表紙とアオリにほいほいされました。女子高生マジシャンが学園の謎を解く・・・とか、私の好きなフレーズです(笑) 日常の謎ということで、そこまでびっくりな展開は無いだろうと踏んで読んでたんですが、後半はなかなかドキドキします。色んな意味で。
書き方は人を選ぶかもしれません。台詞以外の文章は「僕」つまり須川くん目線がほとんどです。あんまりこういう書き方の本は読んだことがなかったので、私は面白く読めました。「僕」の心情がわかりやすいですね。
この作品では、やはり酉乃初が良い味を出しています。表紙はなかなかぴったりなのではないでしょうか。普段はどこか憂鬱そうで、決して笑顔を見せない彼女。しかしマジックを披露するときの彼女は、自信に満ちた笑顔で微笑んでいる。須川くんが惹かれるわけです。しかし、フェイになりたいと言っていた彼女は、あることがきっかけで全てを諦めてしまう。作中では彼女のマジック――魔法が頻繁に披露されるわけですが、文章だけでも「おお!」と思うような描写でした。特にフラリッシュは、マジックではないものの、想像が難しいところもありますが、なんとなく思い浮かべるのは簡単です。余裕に満ちた彼女が素晴らしいカードさばきを見せてくれます。
<律儀なあなたはベータ・テスタ> この曲をあなたに贈ろう。
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高校生の西乃初は昼間は地味で目立たない生徒だが、夜になると凄腕マジシャンとしてアルバイトをしている。そんな彼女に同級生の須川は恋をして近づこうとするが、なかなかうまくいかない。そんな中、高校で次々と小さい事件が起こり、二人でその事件を解決していく。ミステリーというより学園モノの色が濃い作品です。
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現代調な件が多く用いられる小説というものは一般的には稚拙と言われてしまうのかもしれない。だが、この作品はそういった作品群の中でずば抜けてうまいと思う。
学校では物静かだが、一歩Bar「サンドリヨン」に踏み出せば綺麗なマジックを魅せる生徒「初」を一目ぼれした須藤の一人称で語られている物語であるが、この学園ラブコメとも本格ミステリーともいえないどっちつかずなところが妙に読書欲をそそられる。
これが初単行本の著者のようだが、早くも次回作が楽しみだ。
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放課後、レストランバー「サンドリヨン」でマジックを披露している同級生・酉乃初に一目惚れした須川くん。
彼らが遭遇した高校生活の日常の謎を、マジックを通して解いていく連作ミステリ。
インフルエンザに罹りました(私が)。
仕事もお休み。
もう熱はないのだけど、若干ボンヤリする頭で読み始めた本作。
ボンヤリする頭にも優しいふんわりしたお話でした。
やさしすぎて、あまりインパクトがなく、あっさりとしてるなという印象。
謎解きは、どうして彼女に謎が解けたのかがよく分からなくて、謎解き部分に不満が残りました。
というか。
私は須川くんのことが好きになれないです。
自分の思い込んだ酉乃さん像を酉乃さんに押し付けて、「そんなの本当の酉乃さんじゃない」って言ってみたり、やたら酉乃さんに頼ったり。
たまたま酉乃さんが思い込まれたような性格に描かれているところも、ちょっと都合がよすぎるような。
謎解きも、彼女の性格も、いろんな出来事も、ちょっと作者のご都合主義だなと思いました。
作者は、森博嗣が好きみたいです。
主人公の須川くんが242ページで買った本格ミステリの新作も、森博嗣氏の本と思われます。
独特の雰囲気があって、ポップで楽しい本だったので、これからはミステリとしてももっとおもしろくなるといいな。
今後も読んでみたい作家かなと思います。
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学校では常に憂鬱そうな同級生が
放課後になるとイキイキとマジックを披露している。
そんな彼女に恋をしたオトコノコが
学校で起きる様々な事件に彼女と立ち向かっていく。
高校生男子の初恋のイッパイイッパイさや
女子のイジメや思春期の悩みなどが繊細に描かれている。
【図書館・初読・11/26読了】
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マジシャンの女の子に一目惚れした男の子が、
いろんな学園の謎に首をつっこむ青春ミステリー。
デビュー作だそうです。
上手い。
ミステリーを解きながらも、少女のトラウマと、2人の恋愛も絡めていくところに上手さを感じます。
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ジャンルとしては『ミステリ小説』になるのかもしれないけれど、私は生きることが不得意な女の子の成長物語でもあり、そんな彼女に恋した少年の恋愛物語でもあると思いながら読み進めた。
2010年初小説、これはいい本にあたったぞ!
という一冊でした。
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青春恋愛物にちょっとミステリとマジックの味付けを足したようなもの?
「日常の謎」ものだけど、ちょっとおしゃれで軽い。
登場人物のベースの描き方と出てくる言葉とか行動にちょっと剥離があるとこが目につくかなぁ。
不思議は不思議のままで、という初の言葉通りなのか、マジックのタネはもちろん、登場人物達の行動理由とかも不思議なまま。想像の予知を残してあるというのか?
学園物だけど、それなりに世界観を作っているわりに唐突に嵐とか関ジャニとかギークとかリアルな言葉を持ってくるのでそれもちょっと違和感……
でも全体的によくまとまってて青春ラブ系として楽しんで読むことはできた。
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率直に言って期待はずれ。自分とは相性がすこぶる悪かった。
ミステリ度は低め、青春小説の度合いが強い。
帯の惹句には“ボーイ・ミーツ・ガール”ミステリと書かれているが、主人公の一人である少年のキャラクターがかなりウザい。イラっとさせられる場面が多かった。そのため彼の片想いを応援する気になれない。個人的にはこの点がこの本の魅力をスポイルしていたと感じる。
もう自分は「青春ミステリ」を読める歳ではないのかもな、と少々寂しくも思う。
巻末に掲載された笠井潔の選評が全てを言い表していた。
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第19回鮎川哲也賞受賞作。
探偵役はマジシャンの卵の女子高生。
どうしてもドラマ「TRICK」を連想してしまった…。
それを示唆するような台詞も出て来たし。
可愛いコンビでしたが、上田&山田にはかなわん!
って、別ジャンルか…。
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表紙に一目惚れして購入。
主人公のヘタレぶりにやきもきしたり、謎解きにそうだったんだぁーと 感心したり、初のマジックに対する思いや葛藤を知ったり、美少女の裏の顔が明らかになったりと、とても楽しめました。
初すんごく可愛かった。これは男女問わず好きになるよ~
最後のクリスマスプレゼントのくだりで、初の可愛さにやられました・・・
個人的には、続編で主人公と芹華と初の三人の掛け合いを見てみたいな♪