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- カテゴリ:一般
- 取扱開始日:2012/03/29
- 出版社: 東京創元社
- サイズ:20cm/336,7p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-488-00382-1
- 国内送料無料
紙の本
ヒトラーに愛された女 真実のエヴァ・ブラウン
著者 ハイケ・B.ゲルテマーカー (著),酒寄 進一 (訳)
アドルフ・ヒトラーの23歳年下の愛人として半生を送り、死の直前、その妻となったエヴァ・ブラウン。“ヒトラーの愚かでつまらない愛人”と歴史家に片付けられてきた彼女の知られざ...
ヒトラーに愛された女 真実のエヴァ・ブラウン
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商品説明
アドルフ・ヒトラーの23歳年下の愛人として半生を送り、死の直前、その妻となったエヴァ・ブラウン。“ヒトラーの愚かでつまらない愛人”と歴史家に片付けられてきた彼女の知られざる姿を、史料や写真を交えて描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ハイケ・B.ゲルテマーカー
- 略歴
- 〈ハイケ・B.ゲルテマーカー〉1964年生まれ。歴史学者。ベルリン自由大学とインディアナ大学で歴史学、国民経済、ドイツ文学を学ぶ。
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紙の本
エヴァ・ブラウンの真実
2020/07/20 21:00
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の読書ジャンルの一つとして、「第三帝国」「ナチス」「ヒトラー」がある。本書は「ヒトラーをめぐる女性」というカテゴリになるだろうが、それよりも訳者に魅かれて読んでみた。酒寄進一氏といえば、独刑事小説の数々の名訳がすぐに思い浮かぶ。ワイマール期からナチス抬頭までのゲレオン・ラート、第二次世界大戦末期からのオッペンハイマー、そして現代のピア&ボーデンシュタインやライプツィヒ警察ヴァルター、弁護士アイゼンベルクなどを主人公にしたシリーズ、そしてフェルディナント・フォン・シーラッハ のシリアスなシリーズ等々。ラートのシリーズは2012年刊行なので、同じ頃の訳書。本書から現在の路線に変わったのかもしれない。
エヴァ・ブラウンは多くのヒトラー本ですでに語りつくされている。本書が新たに登場する意味は何であろうか?日本語タイトルの「ヒトラーに愛された女」という内容に関しては、少なくとも新たな文書等が発見され、新事実が分かったというものではなかった。
むしろ原題「ヒトラーとの生活」Leben mit Hitlerが内容を正確に反映しているように思う。そもそもエヴァに関しては、自分の日記とか手紙などは残されていないので、彼女が「ヒトラーとの生活」をどのように営んでいたかは結局謎である。周辺にいた者の記憶・印象を後世の歴史家が評価しまとめてエヴァ像を造り上げたのであり、所詮はフィクションである。権力者の「お飾り」「歴史上の期待外れ」「総統の極めて薄い影」としてのエヴァである。酒寄氏は「権力の頂点に昇りつめたヒトラーとともにその栄華を恣(ほしいまま)にし、やがて没落していく」と描いているが、自傷行為までしてヒトラーの気を引き愛人の地位を手に入れた「従順なお馬鹿さん」にそのような認識はなく、気を引いた人と最後まで添い遂げるという普通の女性ではなかったか。エヴァがホロコーストを知っていたとしても、彼女がその意思決定に影響を与えたとも思えないので、そこに意味があるとは思えないのである。
むしろその「生活」に、限られたヒトラーの側近達を含めて考えると、違った姿が見えてくる。党・軍関係者の側近、エヴァをヒトラーに紹介した写真屋ホフマンや主治医ブラントやモレルなどとのインナーサークルの中のエヴァは、平凡な若い女性ということが際立ってくる。特に党・政府高官の夫人たちの女性のサークルの権力闘争も見ていたエヴァは、筆者のいうように、その「正常さ・凡庸さ」で「取り巻きの悪しき環境の中で悪を際立たせる効果」を持っていたといえよう。その意味では、あれやこれや彼女を詮索することはやめてそっとしておくということだろう。
第三帝国の経済・社会に関することとして、ナチス「婚姻法」が紹介されていた。
この法律は、離婚事由を定める民法55条を改正する法律。民法は夫婦のどちらかが結婚の義務に違反したときにのみ離婚は可能とすることを定めていた。離婚は違反した配偶者に対する告発であり、したがって離婚原因となった行為をした配偶者は離婚を申し立てることができない「有責主義」の立場であった。「婚姻法」は、結婚は民族共同体にとっての重要度によって決定されるとし、申立人が有責かどうかを問わず離婚事由があれば3年で解消できる、という「破綻主義」に修正したもの。現在世界では「破綻主義」が主流であり、日本でも最高裁判例によって現在は破綻主義に立場にあるが、ナチス・ドイツは早くからその立場に立っていたわけである。しかし、改正の理由は、ヒトラー側近が離婚できずに困っていたのを助けるために改正したもの。いかにも独裁政権らしい。