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商品説明
一世を風靡し大量に出回ったベストセラーや生活に密着した実用書などは、古書店では二束三文。だがこれらの本にこそ、時代を映した面白さがあるのだ! 古本ライターが雑本の山から昭和を切り取る。〔「古本で見る昭和の生活」(ちくま文庫 2017年刊)に改題〕【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
岡崎 武志
- 略歴
- 〈岡崎武志〉1957年大阪府生まれ。立命館大学卒業。高校の国語講師、出版社勤務を経てフリーライターとなる。書評を中心に各紙誌に執筆。著書に「読書の腕前」「女子の古本屋」など。
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紙の本
古書でも、いわゆる実用本は案外安い。安くても売れない、っていうところもあります。で、私も馬鹿にしていたんですが、見方を変えるとこれは時代の鏡として貴重な資料とはいえる。そういう目で楽しめば・・・
2012/04/22 22:25
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
初出は特記されていませんが、あとがきに
本書は、「月刊教員養成セミナー」二〇〇五年九月号から始まった連載「よろず古書店」と、一部、〇六年に「日本経済新聞」に連載された「消えた本あの時代」がもとになっている。
と書かれているので、どれがいつの記事かは不明でも、なんとなく書誌データを補足しているようです。ただそのあとに、曖昧な表現の理由が書かれています。要するに、初出に大幅に手を入れている。調べ直して長くなったものを、削ったり、書き下ろしもあるそうです。それなら仕方がないか・・・
カバー画についても記載がありませんが、デザイン 石丸澄子とあるので石丸が描いたと理解しておけば、いいでしょう。で、石丸はあとがきによれば東京都杉並区西荻の古書店「なずな屋」の店主だとか。うーむ、画才もあるか。ともかく色合いが好き。雰囲気が、もう少し線に味があれば佐々木マキと言えそうでいいし、タイトル文字は好みではないけれどサブタイトルと著者名の事態は好ましい。なんでこの字で書名を書かなかったのかしら・・・
で、話は違いますが、先日、竹橋の近代美術館で開かれているジャクソン・ポロック展に行ってきました。ポロックは、私の中ではジャスパー・ジョーンズよりよほど近しい存在で、お気に入りの作品もあるしということで楽しみにしていたわけです。で、若い時の作品などを見ながら、例えばセザンヌは若い時から上手だったけど、ポロックは下手だったなあとか、抽象っていうのは作者としても筆の止めどころが難しいよな、なんて思っていたわけです。
特に、あのドリッピングっていうんですか、画面にポタポタと絵の具をたらす作品。あれなんて基本的に偶然の産物以外のなにものでもないな、って思うわけです。ところが偶々できた絵であっても傑作と駄作っていうのは一目でわかる。会場にある作品でも凄いのは10点あるかないか。でも、それは誰が見ても一目瞭然なわけで、その理由はなんだろう、なんて考えてしまうわけです。
で、そのまま常設展をしっかり見て、二階の最後のコーナーに行きました。原弘展。近代美術館で行われた展覧会のポスターが壁面いっぱいに展示されています。ああ、こんなに多くの展覧会があって、しかもその殆どを原が手掛けていて(実際にどれだけの展覧会があって、そのうちどれだけを原が担当したかっていうのは、多分しめされていなかったので量から勝手に殆どと判断)その質がどれも高くて安定しているわけです。ポロックとはエライ違いだなあと感心した次第。
なぜ、こんなことを書いているかというと、実は原弘のことが岡崎のこの本に出てくるからです。215頁、時代をうつす本の部の、原弘とサルトル
『世界文学全集 第46巻 サルトル/アラゴン』河出書房新社 昭和三十七年 の章がそれで、ああ、あのモスグリーンの、って思いだせる人は団塊の世代の人たち。でもそのうち何人が原のことを知っていて原弘を〈はらひろし〉ではなく、正しく〈はらひろむ〉と読めるでしょうか。ちなみに、わたしは〈ひろし〉って読んでました、いやはや・・・
とまあ、前置きは長かったのですが、じつはこの本、この箇所くらいしか私の体験とすれ違う箇所がありませんでした。出版社の宣伝文句は
*
古本エッセイの決定版
一世を風靡したベストセラー、生活に密着した実用書など、古書店では値段もつかない忘れられた本にこそ、時代を映したほんとうの面白さがある。
*
なんですが、多分、ベストセラーは殆どありません。取り上げられる本は基本的には実用書と思った方がいい。だって、そうでなければ岡崎が2008年に出した『ベストセラーだって面白い』とかぶってしまいますもんね。他の作家ならまだしも、自分で五年もしないのに同じテーマで書くっていうのは、やはりないでしょ、ってことになりますもの。で、私は基本的に実用書は読まない。読んでも読書にカウントしません。
若い時なんて、実用書で読んだ本は皆無。社会人になってからも料理本と、資格受験の本、いまなら介護関係の本くらいなもので、基本は小説です。だからこの本で岡崎が取り上げるものを全く知らないし、読み終わっても興味が起きません。しかも、古い本が多い。古書だから古くて当たり前ですが、古すぎます。敗戦後でも既に半世紀が過ぎていますが、それ以上古い本となれば汚い上に私の大嫌いな旧かなづかい。まず、店頭の100円均一カゴに置かれていてもスルー間違いなし。
でも、かろうじて気になった本をあげれば、まずは原関連で取り上げた河出のグリーン版全集、微かに記憶があるので、サルトルは読む気がしませんが、他のものなら読んでもいいかな、って思います。それと、実際に読んだら投げ出すでしょうが、東北の震災を経験したあとでは、東京市役所・萬朝報社共編『十一時五十八分』も気にはなる。特に岡崎が現代かな使いで紹介してくれた箇所はためになりそうです。
挿絵大好きな私としては、木村壮八『南縁随筆』も当然候補にあがります。ついこのあいだまで過ごしていたアパートを思い出して 小崎政房・はりま弘介「アパートちゃん」も気にはなる。いずれ娘もそうなるかも、という点では、小説の内容はともかく、女たちのひとり暮らし 戸川昌子『猟人日記』もいい。これはもしかして、読んだことがあるかもしれません。
その美女ぶりと頭の良さに感心し続けた楠田枝里子『楠田枝里子の気分はサイエンス』なら今すぐ読みたい。そうか、「おなら学」なんて枝里子さん、書いていたんだ、意外・・・。それと、奇しくも岡崎と同じ気持ちになったのが日本の古い映画を、内容よりもその時代を知るよすがとして見ること。で、私も気づいていたんですが、たしかに戦前に日本の男たちは帽子をかぶっていた。そういう意味で『昭和弐年度春夏物 帽子カタログ』も面白そうではあります。
それと、これは復刊もあることを含めて岩波写真文庫『軽井沢』でしょうか。『軽井沢』に限らず岩波写真文庫をこつこつ集めるのは楽しそうです。特に、この文庫は編集長の名取洋之助の方針がしっかりしていて、時代の記録として楽しめるのがうれしいです。古い日本映画を楽しむのと同じで、ああ、自分も歳をとったんだと改めて思った次第。
マンガ世代としては赤塚不二夫『おそ松くん全集』は外せないし、美術ファンとしては金子國義の魅力「婦人公論」一九七二年一月号も気にはなります。ま、前者は新しく全集が出ていますし、金子作品は時たま版画が画廊に出たりしているので、古書に拘らなくていいのがうれしい。ちなみに、この章にでてくる京都の古書店「アスタルテ書房」は訪ねてみたい。でも、ちょっと入りにくそう・・・
最後は、季刊ジャズ批評別冊『ジャズ日本列島 50年版』ジャズ批評社。といっても、この本に興味があるわけではありません。なかに登場する高野悦子『二十歳の原点』を読みたい。こういう人で内容だったとは思いもしませんでした。学生運動のなかで、自分のいどころがみつからなくなり、ジャズ喫茶でこころを癒す日々、そして自傷を繰り返すようになり、最後は自殺・・・