紙の本
ちょっと攻撃的かつ衝動的ではあるけれど
2021/02/10 00:21
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投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
一般社会人経験がある津村さんだからこその苦労話をちょっと笑いを混ぜたお話になっている。アレグリア「とは」ってとこに優しさを感じる。それに、駄々をこねる?アレグリアと何度も話をしようとしている主人公がいじらしい。
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面白かった!最初は、主人公の感情の起伏にちょっとヒキます。なのに段々シンクロしてくる。アレグリアとは複合コピー機のこと。言うこと聞かないアレグリアにキレる主人公と、そんなにイライラしても無駄じゃんと思ってる先輩と、修理担当の謎のおじさんと、アレグリアの使いにくさを知らないほかの社員たち。あるある!ってこともたくさんだし、物語が意外な方向に進んでいくのも面白い。オススメ!
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「世界には人を死なせる物事が溢ふれている。なのにどうして、それに重ねて人が人を殺そうとするのかがわからないとときどき思う。人が殺さなくても人は死ぬ。人を殺したい輩は、善男善女がそれにふさわしい死に方をするのが気に入らないのだろうか。」『閉じ込められることの作法』
津村記久子の書くものからは、常にある種の正義感のようなものが漂っているように思う。それは大抵は怒りを伴っていて、自分はそのエネルギーの大きさに驚いてしまうのである。どうして驚くのかといえば、そのエネルギーが静の状態にあるモノから一瞬にして放出されるからなのである。例えば『君は永遠にそいつらより若い』は、自分が最も気に入っている津村記久子の作品だが、その描かれ方はとても好もしい。
しかし、この一つの短篇とひとかたまりの連作からなる本書のエネルギーは、放出される瞬間のみ存在が知られるというような描かれ方はされていない。その「負の」といってもよいエネルギーが、どのように蓄積され、そうして放出されるのかが、一直線で描かれている。エネルギーの蓄積は圧縮に喩えることが適当である。もっとも、空気を小さな空間に押し込めるようにして嵩じたものが一気に解放されるのだということは、彼女が言葉を尽くさなくともうすうす感じてはいたのだが。
表面上は、静止しているかのように装っていながら、内部では激しく分子がぐるりと囲んだ壁に衝突する。その様子が、これ程あからさまに描かれるのを読むと、少し足元がすくむような感慨を覚える。津村記久子のこれまでの主人公たちは、自分自身の気持ちの意味するところを掴み損ねて、じたばたしていたように思うけれども、この本に収められた主人公たちは、いずれも常に明確に怒りを抱き、怒りの原因を単純な図式で理解し、そうして怒っていること自体で更に怒る。
一見したところ、その怒りは現代人に共通する苛立ちを元としているように描かれている思うのだが、主人公たちは、それを自分自身に固有の怒りであるとすりかえてしまう。そこに不幸がある。その短絡を津村記久子は物語を進めるエネルギーとして、恐らく短絡であると理解しつつ、利用する。そんな単純な構図を彼女が選んだ理由はなんだろう。
津村記久子がその構図をスケッチ風にして短篇に収めてしまったこと、それは彼女の作風らしくないなあと思う。答えの見えない疑問へと戻っていっても良かったんじゃないかな。あるいは、その様にして現代人の憂鬱を書いてみたかったのは、次へのステップアップだったのか。受賞作を早く読んでみたいと思う。
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何度も芥川賞候補になった著者の作品。流行をトレースしたく、あくまでライトでポップな動機で読んでみた。結局彼女は 『ポトスライムの舟』 で第140回芥川賞を受賞。
偏狭な状況設定が、物語をどこへ連れていくでもなく胴体着陸、みたいな体。
表題作以外のもう一編も、なんとなくお茶を濁した感じ。
文学に触れようとする自由は何人にもあると思うが、文学をなめたらアカン、と思う。書く方も、それを評価する方も、だ。
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ビジネス系の本と思い 読み始めた
2話入った小説だった。。
アレグリアというのはコピー複合機の名前
トラブルの多いアレグリア ままならないアレグリア
そんな複合機を中心とした お話であった
仕事をしていれば よくある話だったと思う
その上で
コピー機を擬人化した主人公の思考 と
後半に盛り上がりでそれなりに楽しめた
2話目は地下鉄車内での出来事を
複数の視点から描かれていた
これも なんてことないことであった
他人視点ということを感じることができ
また
文章家の文章をよめて良かったと思う一冊であった。
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標題作「アレグリアとは仕事はできない」と、書き下ろしの3つの連作短編からなる「地下鉄の叙事詩」。
「アレグリア〜」は「コピー機が憎い!!」を改題した中編小説。
「アレグリアとは仕事はできない」って、なんとなく翻訳小説のような印象を持った。さらりとしたような印象というか。
ところが、内容はかなり粘着性があってある意味日本的な、エキセントリックにコピー機と闘う女子社員の話。
いろいろと非常に細かい。そしてスケールが小さい。その細かさ、スケールの小ささが、非常におもしろい小説。
一筋縄でいかないコピー機には、希望という意味のスペイン語の「アレグリア」という名前がつけれている。
かなり絶望的なのに。そして、かなりきまぐれで超わがままなのに。
エキセントリックで、けだるいんだけど、なかなか読みがいがあったので、おすすめ度は☆5つ。
「地下鉄の叙事詩」は、うーん、つきぬけるおもしろさがない。中途半端な連作短編集に思う。
もっと人数を増やして、あれこれからめて、お話の数を増やしたほうがおもしろい気がしたので、☆3つ。
2つの話をミックスして評価すれば、☆4つというところでしょうか。
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津村さんの本は初めて読んだ。
満員電車の中に閉じ込められた時のなんともいえない棘棘した気持ちを、よくここまで文章に起こせたものだ。すごい
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ミノベのいらだちがキリキリ伝わってきて、自分をみてるみたいだ。
全然言うことをきかない機械!
何回見ても、ひとつのタスクも終わってない!
意味の分からないエラー番号!
気まぐれに出てくるプリント!!
まさに今、私が直面してやる気を吸い取られてるできごとだ。 なんてことだ。
ミノベと一緒。
私も、そんなプリンタがサクサク動かなくてどうってほど、パキパキ仕事できてないんだけど、自分がパキパキできないのは機械のせいだと思っちゃうんだよ。
でも、こいつの悪意に満ちた態度にはガマンできない!
ぜったい機械のせいだ。
そんなアレグリアと真っ向勝負をし、空回るミノベ。
先輩みたいに、機械なんかに振り回されずにたんたんと落ち着きたいって思うなぁ。
けど、先輩は人に振り回されてたから、それだったら機械に振り回される方が絶対いい。
題名がいい。
元の題名は「コピー機が憎い!!」だけど、ぜんぜんこっちの方がいい。
コピー機なんか、もはや機械ではなく“仕事の同僚”みたいなもの。
さぼらず、休まず、きっちり仕事してください。
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津村記久子さんは「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞しました。
「週刊ブックレビュー」に特集ゲストとして出演されました。
番組では「ポトスライムの舟」と「アレグリアとは仕事はできない」についての紹介がありました。
どちらも図書館に予約しましたが、「ポトスライムの舟」は人気があり、こちらを先に読みました。
「アレグリアとは仕事はできない」「地下鉄の叙事詩」の2編収録です。
「アレグリアとは仕事はできない」はコピー機の不調から、社内の人間関係があぶり出されるという作品です。
「アレグリア」というのはコピー機の名前です。
コピー機ですが、擬人化されて、人間のように描かれています。
「相変わらずアレグリアは嫌そうにミノベと仕事をした」
ミノベはアレグリアを「どうせまともに動く気なんてないんだろう」と見ています。
コピー機、印刷機、パソコンなどの不調に悩まされたことのある人は共感できる作品だと思います。
こういった機器の不調に向き合うのは時間の無駄なので、本当にイライラします。
ミノベは「土日に病気をするのは損だと思っていて、できれば月曜の朝に風邪を引きたい」と思っていますが、無断欠勤から退職した先輩は責任感が強く、風邪は土日にしかひきません。
「平日に休んだら迷惑がかかるでしょ」といいます。
この先輩とミノベのどちらかをリストラする話があったと最後の方で出てきます。
「地下鉄の叙事詩」は満員の地下鉄内の4人の独白、心理描写からなります。
会話が少ないです。
満員電車での通勤通学を経験した人は共感できる作品だと思います。
都会で暮らす若者たちの生活や感じ方も描かれています。
男子学生のイチカワは、電車の中でいちゃついているカップルに嫌悪し、元気のない会社員を哀れみ、年を取ることへの恐怖を味わいます。
会社員男性のニノミヤは、平均年収以下の暮らしをしています。
将来への不安を持っています。
電車の中で立っているか座れるかということに異常な関心を示します。
「異常なまでに空いた座席に対する嗅覚に優れた中年女」
電車の中で人が読んでいる本が何かのぞき込む趣味がニノミヤにはあります。
人身事故や痴漢についても最後の方で出てきます。
ミカミは会社勤めの女性です。
通勤の電車の中では人格が変わると思っています。
痴漢が狙う女性のボリュームゾーンから自分が離れていっていると感じています。
車を使って二酸化炭素を出したくないと考えているのは偉いです。
シノハラも会社勤めの女性です。
痴漢に遭う女性の恐怖が描かれています。
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<内容>「この会社に来て、もっとも低い立場からそのキャリアを始め、今もそこに留まっているミノベ」の、職場での孤独な戦いと人間模様を、独特のユーモアとパワーで描く意欲作。
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複合機アレグリアを巡るお話。
色んな立場の人の心模様が面白かったです。
結局、自分が困る時が困る時なんやなあ。
他人が困る時も一緒に困れる人間になりたい。
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複合機を擬人化するなんて、新しい。
面白かった。
ミノベの必死さがやたらいじらしく感じた。
まるで自分を見ているようだと思った。
大したオチはないけど、なんとなくhappyになれる一冊。
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婚礼〜が面白かったので、読んでみました。
なんていうか、本当にありそうな話ってこういうことだよな、と。複合機の「アレグリア」の使え無さ具合にはため息が出ました。あれはキレる。
「地下鉄の叙事詩」も良かったというか、切なかった。満員電車ってほんとよくないと思う…。
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表題の『アレグリアとは仕事はできない』は、使えない機械に苛々
させられた経験のある人ならきっと同感できると思う。
もう一作の満員電車の話は、人間観察好き・妄想好きの人ならきっと
こんなことを考えているんだろうなぁという内容やけど、本やゲーム
や携帯WEBに没頭してしまう俺にはよく分からんかった。
っていうか、ドロドロしすぎて暗い。
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なんでとかべつにいいです、とミノベは口を開きかけて結局やめた。話をすることが、どんなにかすかなものであっても先輩にとって何かのたしになればいいと思った。
(P.94)