紙の本
数学的に形成される世界。
2021/07/31 07:36
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投稿者:L療法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
進化の多様性を、複雑性で解き明かしていくスリリングな書物。
全て理解したとは言い難いが、変化の仕組みを解き明かす道筋は堅実で、大胆な仮説に説得力を持たせる。
一見不規則なものが増え続け、複雑さがある段階に達すると、自己組織化が始まり、回路を生じる。そうなると複雑なものは整然とした働きを示す。
奇妙なことに思えるが、作者は、これを、進化の謎のみならず、経済システムや、政治的問題にまで当てはめてみせる。
これらのことは、ジャンルの盛衰を説明するのにも適合するように思えます。
組織化が起きて仕舞えば、自由であった複雑な多様性は、硬直化していき、一部の主要回路以外は死滅をしていく。
色々と刺激的な読書でした。
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我々人類がこの地球上に発生したのは偶然ではなく、「複雑系」で説明できる必然な現象だった。さらに、自然科学的な進化だけでなく、産業革命や20世紀の文明の発展も、生物の進化と同じ法則で説明できる!!
まだまだ仮説の域を出ない理論についての本ですが、「我々人類は偶然の産物なのではなく、この宇宙の法則に則って必然的に生まれた存在であり、決して特別な存在ではない」ということを主張しています。面白い。
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2008年10 月2日に読み終わった本
http://hydrocul.seesaa.net/article/107846988.html
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自然淘汰と自己組織化 -2008.03.28記
「自己組織化と自然淘汰が生物世界の秩序を生んだ」
ダーウィン以前には、合理主義的形態学者と呼ばれる人々が、種は、ランダムな突然変異と淘汰の結果なんぞではなく、時間の概念を含まない形に関する法則の結果であるという考え方に満足していた。
18世紀、あるいは19世紀において最も優れた生物学者たちは、生き物のもつ形態を比較し、いまも残るリンネの分類学に基づいた階層的なグループにそれらを分類した。
ダーウィンの進化論-ランダムに突然変異したものに作用する自然淘汰説
「進化とは、翼を得た偶然である」-ジャック.モノー
「進化とは、がらくたを寄せ集めて下手にいじくりまわすことである」-フランソワ.ジャコブ
ここには、偶然の出来事、歴史的偶発、除去によるデザイン設計といった概念が含まれている。
深遠な秩序が、大きな、複雑な、そして明らかに乱雑な系で発見されている。このような創発的な秩序が、生命の起源の背後に存在するばかりではなく、今日生物でみられる多くの秩序の背後にも存在するのではないか。
自然界の秩序の多くは、複雑さの法則により、自発的に形成されたもの-自己組織化-である。
自然淘汰がさらに形を整えて洗練させるという役割を果たすのは、もっとあとになってからのことなのだ。
自己組織化と自然淘汰をともに包含する枠組み-自発的に秩序が生じ、自然淘汰がそれを念入りに作り上げる。
生命とその進化はつねに、自発的秩序と自然淘汰がたがいに受け入れあうことによって成り立ってきたのである。
「創世記‥‥」
19世紀に生まれた二つの系統の概念が合流し、その結果、星が渦巻くこの世界において、われわれは孤立した偶然の存在であるという観念が完成したといえる。
二つの系統とは、一つはダーウィンの理論であり、もう一つはS.カルノーやR.ボルツマン、J.W.ギブスらが構築した熱力学.統計力学である。後者は、一見神秘的な熱力学第二法則-エントロピーの法則を提供した。
物質代謝や生殖の能力があること、進化できることなどを、われわれは生きている状態に特有の性質と考えている。たがいに相互作用し合い、これらの性質を示すのに十分なほど複雑な初期の分子集団から進化したものの中で、細胞は最も成功を収めたものであるにちがいない。
その一方で、細胞の形成以前に生じた生命体の起源も、まだ生物が存在しなかった世界の化学進化において、最も成功したものである。原子の地球におけるガス雲の中にあった限られた種類の分子から、生命、すなわち自己複製能力のある分子系へとつながっていく、多様な化学物質が作られた。
30億年-地球の年齢の大部分に相当する年月、単細胞生物という生命形態だけが存続した。
8億年ほど前、多細胞生物が出現した。
およそ5億5000万年前、カンブリア紀の「生物種の大爆発」-生物の主要な門のほとんどすべてが、この進化の創造の爆発で作り出された。
2億4500万年前の二畳紀における絶滅の危機-すべての種のうち96%が消えてしまったが、その反動期、多くの新��い種が進化した。カンブリア紀の上から下へという進化の爆発の方向性と、二畳紀の下から上へと種の多様化が進んだ、その非対称性の不思議。
「最適化」問題-爆発的な多様な種の誕生と絶滅のパターン、生態系と時間の双方にまたがる雪崩的現象は、自己組織的であり、集団的創発現象であり、複雑さの法則の自然な現れであるようにみえる。
無償の秩序 -2008.07.10記
2. 生命の起源-単純な確率論からいえば生命の誕生はありえなかった-生命の理論‥‥。
細菌の生じた原因は空気それ自身にある-ルイ.パストゥール
原子スープ-大気中の単純な有機分子が、他のより複雑な分子とともに、新たに形成された大海の中にゆっくりと溶け原子スープが作られた。
自己複製する分子の出現
DNAの二重螺旋構造は、分子がどのように複製されるのかを教えてくれる
だが、タンパク質である酵素の複雑な集団が仲介しなければ、DNAだけでは自己複製はしない。
RNA-リボ核酸-の発見-RNA分子が自分たち自身の酵素として働き、反応を触媒できるという働き-
RNA酵素-リボザイム-
どんな生物も閾値以上の複雑さをもって生じたようにみえる
自由にふるまうことのできる生物のもっとも単純なものとみられるプロナイモでさえ、細胞膜、遺伝子、RNA、タンパク質合成機構、そしてタンパク質、といった標準的な要素をすべてもっている。
すべての生き物は最小限の複雑さを兼ね備えていて、それを下回ると生きていけないようにみえる。
プロナイモよりはるかに単純なウィルスは、自由生活を営んでいない。これに寄生者であって、宿主の細胞を侵略し、自己複製を達成するために細胞の物質代謝機能を利用したうえで、その細胞から抜け出し、他の細胞を侵略する。
閾値は、ランダムな突然変異と自然淘汰に由来する偶然の賜物ではない。おそらく、それは生命に固有なものであろうと考えられる。
生命の結晶化――
無償の秩序生命の起源について、「われわれは生じそうもなかったもの」から「われわれは生じるべくして生じたもの」へと書き換えられるとすれば、そこには<複雑系における自己組織化>のもつ深遠な力を見出さないわけにはいかない。
<複雑系における自己組織化>-そこでは時間こそが英雄であり、20億年あるいは40億年といった、途方もない時間こそが奇跡を成し遂げる。
化学物質の集合が十分な種類の分子を含んでいるときには、そのスープから物質代謝が必ず現れる。
この物質代謝のネットワークは、一つの要素ごとに別々に組み立てる必要などはなく、原子スープの中から、十分に成長した形で自己組織的に生じることができたのである。
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自然淘汰だけでは説明できない進化の論理を「自己組織化」によって説明する。自己組織化の理論はは生物の進化にとどまらず、経済における企業や技術の共進化も説明できるかもしれない。
研究のバイブルになりそうな本。
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原書名:At home in the universe
宇宙に浮かぶわが家で―自己組織化と自然淘汰が生物世界の秩序を生んだ
生命の起源―単純な確率論からいえば生命の誕生はありえなかった
生じるべくして生じたもの―非平衡系で自己触媒作用をもつ分子の集団
無償の秩序―自然に生じた自己組織化は進化する力ももっていた
個体発生の神秘―一個の卵から生物体ができる「法則」は何か
ノアの箱舟―生物の多様性は臨界点の境界への進化から生まれた
約束の地―分子の自己組織化を応用すれば新しい薬を作ることができる
高地への冒険―生物や生物集団はより適した地位へと進化していく
生物と人工物―技術や経済や社会もより適した地位をめざして進化する
舞台でのひととき―生物集団はたがいに影響し合って進化し、絶滅していく
優秀さを求めて―民主主義の正当性も自己組織化の論理で説明が可能
地球文明の出現―生態系・技術・経済・社会・宇宙を貫く自己組織化の論理
著者:スチュアート・カウフマン(Kauffman, Stuart A, 1939-、アメリカ、生物学)
監訳:米沢富美子(1938-、大阪府、物理学)
訳者:森弘之(物理学)、五味壮平(物理学)、藤原進(物理学)
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これまでの要素還元型のアプローチとは性質が異なる視点を複雑系は与えてくれる。新鮮だ。新鮮ということは、理解がむつかしいということでもあるが。モデル化とコンピュータ・シミュレーションの威力か。生命の誕生・進化が主な記述だが,それ以外の人間活動への洞察も示唆に富んでおり,読んでいて非常に興味深かった.
・説明と予測の区別.量子力学とカオス理論の非決定性.
・全体論と創発性.自己触媒系.
・単純に計算すると,ありえないほど小さい確率の生命の誕生.
・人間の免疫系はすでに,いかなる分子エピトープも認識できる普遍的な道具箱.
・「理解を始める」ことぐらいしか,今の我々には望めない.
・進化の初期段階では,劇的に異なる変種が現れるが,のちに現れる変種は適応地形の出発点からあまり離れていないところに位置する.
・これまで存在した全ての種のうち99~99.9%が絶滅した.
・矛盾が積み重なった難しい問題では,何らかの方法で制約条件の一部を無視すれば,最善の答えが得られるかもしれない.
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医師として,進化と進化のビッグバンを説明する為の自己組織化という必要条件としての一つの可能性を,極めて論理的に説く.生命の議論を,生物学・経済学・哲学,ありとあらゆる論点から俯瞰する視点は過去現在を経て未来と人類の可能性を示唆する.
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2回目読了。
さいこーです!わくわくした!
前より理解できた気がする。
特に民主主義の分割モデルの話が好き。
3回目か4回目か読了!
ジェイコブスとつながった。
分割組織教でやってみる!
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確か「複雑系」なる言葉が新しい科学のキーワードとして流行したのは90年代あたりだった。最近はあまり聞かないようだが、その後最新の理論の中に「複雑系」がどう組み込まれていったか、知らない。
本書は「複雑系」的な思考の枠組みの中で、「自己組織化」を鍵概念として、生態系の「進化」を問い直す。
ダーウィン以来の「自然淘汰」を否定するのではなく、「それだけでは足りない」として、「自己組織化」の理論を展開している。
著者によると、生命の発生そのものが、化学的な自己組織化現象として出来する。すると諸事物は秩序形成へと巡って変化を続けることになる。
この考え方は通俗的によく言及される熱力学第2法則(エントロピーの法則)とは真逆の世界を描出する。したがって、系は死に向かうのではなく、絶え間ない「秩序」の形成へと向かい続けるのだ。確かに進化論はエントロピーの法則が向かうヴィジョンとは反対のものなので、説得力がある。
ただし本書はそれなりに難しく、専門的知識の乏しい私にはちょっとついていくのが困難だった。それでも、「自己組織化」というキーワードは広く社会現象、経済にも適用できるし、たとえば音楽の世界にも援用できそうなので、この本はよい刺激になった。完全に理解できなくて残念だ。
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生物方面の本経由で興味をもった自己組織化の分野についての最初の1冊として選んでみたんだけど……ちょっと想定されてた読者層とは被らなかった模様。ある程度わかってから全体を確認する時に読んだほうが良かったかな。具体的な内容を理解できるような本でもないし、素人向けの分野紹介ってほど華々しく書かれたものでもない。
どこかでもう一度読み返すかも。
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[ 内容 ]
地球上の生物の複雑多様な進化の謎は「自然淘汰」と「突然変異」のみで語れるのだろうか?答えは「否」!
秩序ある生物世界に関しては、自然淘汰や突然変異も重要だが、これに加えて「自己組織化」が決定的な役割を担っている。
すべての秩序は自然発生的に生まれる、と自己組織化理論は主張する。
本書では、この理論に則って進化の様子を丹念に読み解いてゆく。
さらにこの理論は、カンブリア紀の大爆発、生物のネットワーク、経済システムから、民主主義の生まれた所以にいたるまでを説明する。
新しい視点からの理論的挑戦でわくわくできる一冊。
[ 目次 ]
宇宙に浮かぶわが家で―自己組織化と自然淘汰が生物世界の秩序を生んだ
生命の起源―単純な確率論からいえば生命の誕生はありえなかった
生じるべくして生じたもの―非平衡系で自己触媒作用をもつ分子の集団
無償の秩序―自然に生じた自己組織化は進化する力ももっていた
個体発生の神秘―一個の卵から生物体ができる「法則」は何か
ノアの箱舟―生物の多様性は臨界点の境界への進化から生まれた
約束の地―分子の自己組織化を応用すれば新しい薬を作ることができる
高地への冒険―生物や生物集団はより適した地位へと進化していく
生物と人工物―技術や経済や社会もより適した地位をめざして進化する
舞台でのひととき―生物集団はたがいに影響し合って進化し、絶滅していく
優秀さを求めて―民主主義の正当性も自己組織化の論理で説明が可能
地球文明の出現―生態系・技術・経済・社会・宇宙を貫く自己組織化の論理
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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複雑系というだけあってかなり難しかった。内容の半分も理解できてないっぽい。以下に詳しい感想が有ります。http://takeshi3017.chu.jp/file6/naiyou22601.html
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物理的には熱力学第二の法則でエントロピーは増大する一方なのに、なぜ生命だけがエントロピーを小さくしているように見えるのかという問題について以前から不思議に思っていた。その疑問を解決するのが自己組織化だと言うことらしい。
文庫本とはいえ\1,600-、ページ数にして579ページ。かなりのボリュームの上に内容が内容だけに読了までに結構時間がかかった。
まずはじめに、地球上の分子がなぜ有機物になったのかから論じられる。
3次元空間で単分子が分散していては有機物が生まれる可能性はほとんどないが、膜のような場所で2次元的に集合すれば触媒を介して有機物が作られる可能性が高まる。そして、大量の分子が集まれば飛躍的にその可能性が高くなる。
そして次にいろいろな有機分子が集まれば、有機分子同士が自己触媒作用で爆発的に分子が出来て、タンパク質、RNAワールド、DNAへとつながっていく。
つまり、いろいろな物質が大量に集まると触媒作用を介して自発的に自己組織化し新たなものを次々に生み出していくと言うことである。
この理論あるいは法則は簡単な数学モデルから導き出される複雑系の研究の成果と言えるだろう。
この爆発的に増える多種類の生物と自然淘汰による選別が分子から生命の進化を支えてきたという。突然変異と自然淘汰では生命の進化は説明できず、自己組織化が重要な役割を果たしているということである。
また、共進化として他の生物と共に進化し、進化は移動するポテンシャル面の最適化としてモデル化され、進化し続けるモデルとしても説明されている。
この理論はカンブリア紀の生物進化の大爆発などの生命の進化だけでなく、経済学の発展や技術の進化、民主主義の発生のゆえんにまでにも類似性を持ち、同様の数学モデルとして取り扱うことが出来るらしい。
そして、これらは生命と共にエネルギー供給を受ける開放系によく見られる現象で、カオスの縁と表現されている。
つまり、固体のように固定化された秩序と気体のようなランダムなカオスの間にあり、カオスに落ちるぎりぎりのところで秩序を保ち進化していく状況だと考えられている。
この状況は生物はエントロピーを小さくしているように見えるが、エネルギーの供給を受けた開放系として自己組織化していると言うこととして納得できる。早い話が、食うことが出来なければ死んでしまい、ばらばらになってエントロピーは増大すると言うことである。
著者は理論生物学者でいくつもの数学モデルを使いシミュレーションすることで生命の本質をあぶり出そうとしている。
しかし、研究は始まったばかりでまだまだわからないことが多い。
とにかく内容豊富で読み応えがあるが、数学モデルの説明が不十分でよくわからないところも多く、妙に情緒的文学的な表現だったりしてなかなか読むのがたいへんだったが、たいへん面白かった。
生命は全くの偶然で生まれたのではなく、かなり必然性があって生まれてきたのだという主張はある意味では安心感を与えると思う。
本書は1999年に出版されており、その後だいぶ時間が経っているので研究もだいぶ進んでいるのではないだろうか。その後の研究の成果がわかりやすい本になるのが楽しみだ。
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「複雑系」に関心を持ち、手に取った本である。
複雑系とは、高度に組織化された状況では、物事を単純に足し合わせた状況では考えられないような現象が起こることである。もとより私は、経済学から複雑系に入っていったので、生命の遺伝子の事とか機械工学であるとかの知識がないので、極めて難解であった。
生命の進化については、今もなお研究がなされているのであろう。ダーウィンの適者生存だけでは、38億年前に生命が誕生して以来、今の今まで生命が進化するまで、途方もなく小さい確率であるし、そもそも生命が誕生すること自体、同じくらい奇跡的なことだという。それを奇跡と片づけることはできず、生命が「組織化」されれば、その中で「複雑系の様相を呈する」ということを著者は言いたいのであろうと考える。
私の知識の至らなさもあろうが、とても分厚い本ではあるが、もう少し要約ができたのではないかな、と思った次第でもある。