紙の本
「科学するこころ」の育みを呼び掛ける科学の啓蒙書
2019/02/18 19:55
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投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、知の創造プロセス、即ちアブダクション(abduction)のことを「創発」と言い表しています。ウィキペディアでは、「ある事象を最も適切に説明しうる仮説を導出する論理的推論」とされるもので、論理学用語のようです。
「(この)思考法は、演繹法や帰納法ともまた異なるものであり、失敗の原因を探ったり、計画を立案したり、暗黙的な仮説を形成したりすることにも応用できる」らしいので、著者が力説する「異なる価値観に触れる」ことで「自分の“回遊力”を鍛える」ことにも繋がるのでしょう。
著者は、パラダイム破壊者である科学革命家たち(ニュートン、ボルツマン、プランク、アインシュタイン、ドゥ・ブロイ)の「創発」事例を紹介して、読者に「心の丈を高める」ことを奨めています。言わば、科学するこころ、でしょうか。
「イノベーション・ダイヤグラム」と呼ぶ知の創造(knowledge creation)を横軸に、知の具現化=価値の創造(value creation)を縦軸にした座標図を駆使し、書名に掲げる「5つの物理学」をこの面々が<創発>した事実を判り易く解説しています。
19世紀後半までの自然科学は多分に哲学的で、倫理的な物差し(真善美)や価値観(正統性)で人間精神を測ろうとしましたが、その呪縛から逃れ得たボルツマン、プランク、アインシュタイン、ドゥ・ブロイらは観察と経験に基づく実証的な知見のみで評価される近代科学への転換期に、「創発」をもって偉大な貢献を果たしたと著者は見ています。
私は著者の見解に頷きつつも本書を読んで、電子顕微鏡のない時代に証拠となる「原子」を見せろというような理不尽な相手との論争で傷ついた挙句、正しさが証明される前に縊死してしまったボルツマンが背負わされた哀しみと無常さの深みに、暫し呆然となりました。
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数式を平易に解説する部分は誠意があり面白いが、科学史のところはちょっと退屈。本書のコンセプトから言えばもっと数式を出してもよかった。
終盤の知の創造プロセスの考察は意欲的だが、創発の部分がブラックボックスなのでどうしても後追いで当て嵌めている感は否めない。
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物理の巨人達の歴史や苦悩、人間性に触れられる素晴らしい書籍、もっと早く出会いたかった
人生における必読書!
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第5章まで読んできて、第6章のイノベーション・ダイヤグラムを見た.5つの物理学を演繹、帰納、創発、(deduction, induction, abduction)でまとめているが、非常に素晴らしい.創発の重要性が良く分かった.文科省の政策は演繹ばかりにこだわって、当面のアウトプットだけを考えているようだ.なんとかしなくちゃ!
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【再読】 中
・・・・
名前は知っているけど、内容はどんなものか?と言うことで読んだ。
残念ながら理解出来なかった、特に数式は分からなかった。
でも 考え方とか時代背景などが大変面白かったと思う。
素晴らしい本だと感じた。
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タイトルに違和感があります。
そもそも、5つの「物理学」という表現に違和感があります。
「5つの物理法則」とか「物理の5分野」、あるいは、「物理の5つの理論」などとした方がしっくりきます。
また、5つの「物理学」を取り上げてはいますが、結局、著者が言いたかったのは、5つの「物理学」の着想の過程に関する、「著者が考えた仮説」だと思われます。
つまり、「物理学」がメインなのではなく、「著者が考えた仮説」に説得力を与えるために、5つの「物理学」を取り上げているだけです。
そういう意味では残念な本ですが、著者が取り上げたエピソードについては、興味深いものがいくつもありました。
それにしても、最近読んだ本は、「看板(タイトル)に偽りあり」なものが多い気がします。
そういうトレンドなんでしょうか?
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ニュートン、
ボルツマン、
プランク
アインシュタイン、
シュレディンガーとハイデルベルク
ギリシャ哲学が真理を追求する所からヨーロッパで科学が発達した。
東洋は実学に留まった。
ギリシャの奴隷制も影響しているのでは?
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特殊相対論に関しては、タイトルとか前書きで書かれた目的に近くて、簡単な数学を用いつつも、数式で物理を理解しよう、みたいな内容ですが、それ以外に関しては物理学についての本ではなく、パラダイムを変えるような物理法則を発見した人たちの人生・人物像について書いた本でした。
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「物理学の学び直し」がこの本の第一の目的だそうで、なるべくわかりやすく説明しようとしているのは感じる。しかし通勤電車のなかで相対性理論の数式を理解するのは自分には不可能でした。じっくり腰を据えて取り組む必要あり。
この本で取り上げた物理現象は以下の5つ。
1.万有引力の法則
2.ボルツマンの統計力学
3.プランクのエネルギー量子仮説
4.相対性理論
5.量子力学
最後に「第6章 科学はいかに創られた」というのがあるが、「創発」、「演繹」、「帰納」の言葉の説明とこれらを組み合わせた「イノベーション・ダイアグラム」なるもの、自分にはさっぱり意味不明である。
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教養としてしっておきたい近代物理学者、その考え方と背景。
ニュートン 万有引力の法則
ボルツマン 統計力学
プランク エネルギー量子仮説
アインシュタイン 相対性理論
20正規の知 量子力学
物理学を大きく発展させる契機となった新たな考え方として5つの理論に注目し、
それぞれの学者達がどういう状況下で育ち考えたのかを中心に書かれている。
理論の説明も高度な数学を使わずにしてるため理系の人間じゃなくても読みやすい。
(といっても証明の部分は知識がないと読み込めないのだけれど)
帯にある「科学はいかにして創られたか?」を知る内容になっていると思う。
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Five Physics Theories to Learn Before You Die
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016003/
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万有引力の法則、ボルツマンの統計力学、プランクのエネルギー量子仮説、相対性理論、量子力学
これら5つについての解説本かと思いきや、内容はそれに留まらず。
記述の内容は、当時の歴史的背景や、偉人たちの生い立ちにまで及びます。
最後の第6章「科学はいかにして創られたか」の部分では、イノベーションに関しても触れられています。
いわゆる理系の学問領域としての物理学よりもさらに根源的な、読んで字のごとくとも言える物事の理としての物理学を読者に伝えてくれる一冊です。
まさに、「物理学者にならない人のための物理学、純粋に「心の丈を高める」ためだけの物理学の本」(p.221)と言えるでしょう。
付箋は22枚付きました。
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タイトルは仰々しいが、物理史(というか科学史)を語っただけの一冊。ただ…タイトル負けは全然してない。
物理学の重要分野を作った(と言ってもいい)人物に注目し、物理学を語る。このコンセプト自体は最近の教科書でも一般的な流れで特筆する必要はない。
この本の面白いところは、そんな注目すべき人物がポジティブ・ネガティブに影響を受けた人物(それはライバル的なものを含む)との関係も詳細に語った点。
そして素人には簡単ではない物理学・数学的記述も含みながらも、それを読み飛ばしても十分理解できるように作り上げているところ。
本書が提示したいのは、創造的な研究がどう作り出されるのか。それは文理を問わない。
そんな創造的な仕事に携われる人間か否かの判断含め、いろんなことを考えさせてくれる一冊だった。
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著者の書きたかったことは、最後の第6章「科学はいかにして創られたか」の部分。第6章まで読み進むと、第5章までは、著者考案の”イノベーション・ダイアグラム”を説明するための、事例集だったことに気が付く。本の構成として?
とは言え、第5章までの内容は十分楽しめる。
完成された物理学を知識として知っているだけで、その形成過程を何も知らなかったことを痛感。ニュートン力学が、天上のケブラー法則と、地上のガリレオの法則を統一したものといった視点は私には無かった。
横軸に「知の創造」、縦軸に「知の具現化」を取り、知を、既存の知を具現化する「演繹」、その逆作用としての「機能」、そして既存の知からなったく新しい知を創造する「創発」の三つの知的営みを一つの2次元平面のなかで表現する”イノベーション・ダイアグラム”は、興味深い。考えを整理するのに有効。