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紙の本
妖怪ヒットラー
2003/02/16 23:25
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:バイシクル和尚 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いわずと知れた妖怪漫画家の大家である水木しげる氏のマジメな漫画である。本書は絶版となった同題名の復刻版であるが、文庫にもなっており、時を経てもなお読みごたえのある内容であることが裏付けられている。ヒットラーについて描かれた本は活字、漫画を問わず枚挙に暇がないが、それらを大別するとヒットラーのカリスマ性(偉人ヒットラー)に着眼して書かれたもの、戦犯性(狂人ヒットラー)に着眼して書かれたもの、それらのいずれよりでもない研究書、歴史書として客観的に書かれたものに分けられる。本書は漫画でありながら研究書として書かれたものであると見受けられた。本書はいわば人間ヒットラーを描いたものであり、かの悪名高いアウシュビッツなどはあまりページを割かれていない。そういう意味ではマスメディア等でよく目にするヒットラーの評価とは違った視点で書かれているのが面白い。本書では歴史上の人物ヒットラーの人間性を描くうえでいたるところに細かなエピソードを用いて間接的にその天才性やそれに相反する俗物性を表している。そのようにかけるのが漫画としての武器でもあり、かえって読み手にダイレクトに事実を伝えるように思えた。やはりなんといっても「あの」水木しげるの作風であるから戦争という灰色の世界とピッタリと当てはまってしまって、この人にしか書けない、と思わされてしまう。妖怪研究家でもある氏のイメージとして『ゲゲゲの鬼太郎』などの作品ばかりが注目されがちであるが、戦中派漫画家としての氏の書く歴史漫画(『昭和史』等)もすばらしいものがある。歴史教科書の見直しであるとかの騒ぎがあるが、私にとっては水木氏の書く歴史のほうがよっぽどためになったし、なんといっても面白い。当の氏本人としてはヒットラーも妖怪なのかもしれないが。