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読後、なんて言っていいんだろうか、としばらく考え込んでしまいました。
子どもを産む。当たり前のようにそうやって毎日たくさんの女性が母になっていくけれど。
お腹の中に子どもを抱えて過ごす10カ月の不安も含めた喜びの日々と、時が満ちて子どもを産み放つ直前の10時間ほどの苦しみと恐怖と痛み。もう2度とご免だわ、と思ったはずがいつの間にかまたもう一人、と思ってしまう本能のような思い。そのどれをとってもやはり「女ってすごいわ」と思う。
女にとって、そして男にとっても出産というものが人生にとって大きければ大きいほど、そこにいろいろな思いが交錯する。喜びに満ち溢れているべきその日を迎えることなく闇の中へと消えていく命を思うと胸が痛む。文中の「母親の中に生涯残るものを子どもは必ず置いて行きます」という言葉がきっと光を迎えられなかった母と子へ優しく降るだろうな、と。
周産期科で働く医師や助産師さんたちには光の中での喜びだけでなく闇に立ち会う苦悩もある。日々の激務だけでなくそういう辛さ苦しさを押し殺してでも笑顔でその瞬間に立ち会おうとする姿に心から感動した。と、ともに許せない奴もいたけれど。
産む母親よりも先に「初めまして」と言えるのは、だから「特権」なのだろうね。
けど、一点、このタイトルはちょっとどうなんでしょうね。
闇、という言葉にどうしてもネガティブなイメージを浮かべてしまうので。もうすこし光を感じさせるタイトルの方が、私的にはいいかなぁと思ったりもして。
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産婦人科の看護師たちが繰り広げる医療サスペンス。ミステリーというよりも人間ドラマに重点が置かれている。生まれ来る命に対して、医師や看護師たちが奮闘する様子は、私たちが多くの人たちのおかげでこの世に誕生できたのだと、ある種の感動を覚える。さらに、これまで知らなかった産科医療の実像に触れられたことも、驚きとともに勉強になった。藤岡氏の人間描写力にはいつも感心させられる。
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(15-36) 医療機関での医師や看護師の激務の様子が大変リアルに描かれていて、こんなことをやってて身体を壊さないのかと心配になった。でもそれはそれとして院長と看護師長がひどすぎ!これで医療事故が起きないのは、ひたすら頑張る医師と看護師のおかげ。こんな病院は実際には無いよね?無いと思いたいんだけど、もしこの病院にモデルでもあったらどうしよう。やや無理やりにラストにつなげた感があったが面白かった。
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医療関係者は、みんなそう思って仕事をしているはずなのだけれど、人としての思いは別のところにあるかもしれません。
大切な「子ども」のはずなのに…
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院長の息子がドラマとかに良く出てくるような医者のボンボン風で、あぁやっぱりね、という感じ。
院長、不始末をやらかしたアホ息子への対処がそれですか?あんたは産科医なのに、産科医なのに・・・。親子共々医者としても失格だけど、人としてサイテーだった。
様々な理由で望まない子だからとこの世から葬り去られてしまったり、この世に出てきても生き長らえることができなかった赤ちゃんたち、次は幸せになれる所を選んで生まれておいで。
佐野先生の病院、丁寧で腕が良い先生に、マジメないいスタッフがいて、患者さん増えちゃいますね。どんなに激務で忙しくても、どの患者さんにも真剣に向き合ってくれそう。
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サスペンス感はイマイチ。現役看護師の小説家ということで結構期待して読んでしまったのもありますが(笑)
私は,元看護師なので医療の現場をよく知っていますが、産科病棟の日常の細かい部分まで良く描かれていたと思います。
現実にはこんなことはないと思いますが、不倫相手の子供を出産するということはありますよ。この時はやはり病棟もピリピリして、旦那さんにはこの事実は告げません。不倫相手が病棟に来ても絶対に面会させないなど、厳重な体制になりますよ。
他の作品も読んでみようかと思っていましたが、考え中です。
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やっぱり藤岡陽子の作品はいいな。それも、短編よりも長編の方がいい。小説なのに、思わず涙ぐんでしまう場面があるし、登場人物もみな個性的で、ストーリーも適度に複雑だ。所々に、これは何かの伏線だなと分かってしまうシーンも挟まれているが、もしかして、意図的なのかもしれない。
作者が看護師経験があるということで、助産師が主人公の本書にもリアリティがある。そういえば、「海路」も病院の話だった。でも、「手のひらの音符」のような傑作もあり、病院ものしか書けないわけではない。むしろ、人の命、生と死、大人の生き方といったものの描き方に本領が発揮されると言えようか。もっともっと読んでみたい。
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藤岡さんの話は、読み終わると何時も心にあたたかいものが残る。
看護師の学校を出られているだけあって、病院の中の事とか、看護師さんの話とかの描写がよく書かれていると思う。
毎回、素直な主人公の話からして、藤岡さんも、真っ直ぐなお人柄なんだなぁと思う。
藤岡さんの本を読み終わるとすぐに、藤岡さんの他の本が読みたくなる。
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助産師として産婦人科医院「ローズ」に勤める有田美歩。お産がとれない師長や、腕や人間性に問題ありと思われる院長など、上司に不満はあるものの、尊敬できる先輩や可愛い後輩などに囲まれ、充実した日々を送っていた。
飛び込み出産やネグレクトの母親など、この業界ではよくあるであろう問題に触れつつ、最後にはある事件の犯人を暴くミステリな面もある。しかしまぁ想定の範囲内というか、こじんまりまとまった感じかなぁ。美歩の障害を持った姉についてはもっと本編と絡んでくるかなぁと思ったんだけれど、肩透かしだったなぁ。佐野たちと独立して病院を続けていくという結末は良かった。こういう医師や助産師が現実にはたくさんいてくれることを願いたい。
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命をとりあげる助産師の
素晴らしい作品。
病院の現状もや助産師の苦悩も、
現実にも少なからずあることなのだろうと思う。
お産はとめられないし。
佐野氏のようなドクターがいたら心強い。
私の出産はすでに16年前だけど
妊婦にとっては、妊娠しているときも
生まれてからも、助産師は神様のような存在。
あの、安心して委ねられるような空気感は
すごいなぁと思ったとことを思い出した。
人としての命の捉え方を改めて考えさせられた。
そして、今、生きている大人だって、
奇跡のもとに生まれ出た命なのだと考えずにはいられない。
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中庭にバラ園のあるローズ産婦人科医院で助産師として働く美歩は、過酷な労働条件の中、新しい命と迎える仕事に一生懸命だった。
出生前診断で胎児に異常が見つかった夫婦、飛び込みでの出産、ネグレクト、乳児院のことなど。
新しい命を迎える仕事には、たくさんの問題があることが提起されている。
『いらっしゃい。よくきたね。』と迎えられる赤ちゃんばかりでない事実に、胸が詰まります。
サスペンス色は弱め。でも、十分読みごたえがありました。
最後の展開は読めた感じでしたが、ハッピーエンドのため読後感良好です。
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2022-9現代の医療に関する課題が詰まった作品だと思う。ただ繋がりがとっぴすぎて感情移入できなかった。テーマは重要なだけに残念です。
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産院を舞台にした本。
読み応えがあり、一気に読んでしまいました。産院は喜びと悲しみが隣り合わせの場所。様々なドラマがある。最近見た「透明なゆりかご」に通じるものがあった。かけこみ出産、障害を持って産まれること、母体死亡、出生前検査、13トリソミー、中絶、ネグレクト…。目まぐるしくお産に向き合う中で色んなことを受け止めて対応していくのは強い精神力が必要だろう。加えての激務。
6年目の助産師の美歩。彼女は浮ついたところがなくて芯が強い。それは悲しみを秘めているからなのかも。重い過去を背負っている。その背景を持って懸命に新しい命と向き合う。現場の様子がとてもリアリティーがあって引き込まれます。後半のサスペンス的な展開も目が離せない。
命について、とても考えさせられる一冊でした。命は平等ではないのだろうか…。そんな風に悩むのも人間であるがゆえ?
ー 海の世界を眺めていると、いま自分の目の前にあることを引き受けるしかないという気持ちになれる。世の中は実はとてもシンプルで、生も死ももっと普通にあって。生まれることも育つことも大きくて広い世界の中に存在している。美歩は分娩の介助をしている時、自分が海になったような気がするのだ ー
なるほどと思った一節。
美歩の誠実さに惹かれ、先輩の草間と辻門の頼もしさに安堵し、理央の普通な弱さに共感したりしました。佐野先生が良かった。院長は最悪だったけど。師長も同情の余地はあるけど、あんな人の下では働きたくないな。
とにかく色々つまった読む価値のある本でした。
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想像以上にシュールな内容で驚愕。
産婦人科で働く日常と、事件。
望んだ妊娠の果ての、産むか産まないかの葛藤。
とか、院内の力関係が小説とはいえ、怖い。
産婦人科の日常がこんなに大変なのは、こんなのが本当なら利用する側はちと不安だなって思うくらいの話で。
ラストは希望あってよかった。
皆、命を守りたいはず。
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産科病院を舞台にした惹きつけられる一気読み本です。テンポよくいろんなことが起きるので、はらはらしながらどんどん読み進められます。