紙の本
お題は、電車が止まったらどうする?
2017/12/25 23:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
六本の連作短編集だ。
電車が止まった。飛来物? 人の立ち入り? 情報が錯綜する。
大学生、フリーター、デザイナー、OL、引きこもり、駅員。
各話の主人公たちだ。それぞれが抱えているものが、
電車の停止がきっかけで次に向けて動き出す。
周りが見えていなくて、空回りしているひとが目についた。
もてているつもりの大学生。
一生懸命なのに報われていない気がするフリーター。
認めてもらいたいデザイナー。
一言で書くと、そんな自意識の強さが描かれている。
電車が止まるという閉塞感のある中で、それを主人公たちの
内面のもやもやに結び付けているところが面白い。
自分は悩んでいないけれど、他人から見たら危なっかしい人。
まさにそれが自意識の発露であるし、描写で変に強調されて
いないぶん、物語に独特の現実感がある。素晴らしい観察眼だ。
表紙と各章の扉にポップな絵が書いてあるが、これはラノベの
手法である。でもはじけた絵柄ではないし、内容も落ち着いて
いるため合っているとは思えない。
こうしないと売れないのかと思うと、なんだかなあと思ってしまう。
とはいえ、小説は手に取ってもらえないとその先はないわけで、
そんなことばかり言っていてもどうしようもないのであって。
こういう本がYA的に読まれると面白いんじゃないかと思う。
読書感想文の指定図書でもいいかもしれない。
何かがありそうに感じる作家さんなので、そろそろデビュー作も
読んでみようかなと思った。
投稿元:
レビューを見る
朝、いつもの電車が停まる。
その電車に乗るはずだった人、乗り合わせた人の人間模様。
そしてあろうことか(?)その電車を止めた人(の物語)まで登場。なんと!
更に電車を止めた彼を確保した駅員さんで〆。
お客さんはねー、みんな何処か、ダメで残念なんですよ。
でもそれが不思議と、電車が停まったことで何かが変わってくる。
「人間、いつどこで何があるかわかりませんね」という意外性の面白さ。
私にとって意外だったのは電車を止めた犯人まで出てきちゃったところでした(笑)
でも元は素直で躾の行き届いた坊ちゃんみたいだし、がんばれ~
投稿元:
レビューを見る
冒頭───
久しぶりに一限目の授業に出ようと張り切ってみたら、電車が動いていなかった。
駅に着いたら、人だかりができていて、駅員が何か叫んでいた。文句を言う人の声が重なり、何を叫んでいるか聞こえない。改札の上にある電光掲示板にオレンジ色の文字が流れる。
『飛来物により運転を見合わせています』
------飛来物ってなんだよ?
朝のラッシュ時に起きた、謎の理由による電車の運転見合わせ。
電車に乗るはずだった、或いは運転見合わせによって線路で止まってしまった電車に乗っていた人たちの物語。
電車が動かなくなったという些細なアクシデントが起こした人生の転機。
様々なシチュエーションの中で生きる人々がどう変わってしまったのか?
新しい出会いや別れ、旅立ち。
大学生、フリーター、デザイナー、OL、引きこもり、駅員とその出来事に関わった人たちの立場でストーリーは展開される。
『飛来物』と出てきたので、一瞬SFものか? と思ったが、それは『フリーターは------』の章で明らかにされる。
なるほどね、とこの章を読んで納得。
畑野智美独特の平易な表現と相まって、全体的に読みやすく楽しめる。
特に『デザイナーは電車の中』で、電車に一時間以上閉じ込められ、尿意と戦う姿は爆笑ものだ。
私も電車ではないが同じような過去があるだけに、腹を抱えて笑った。
あれはつらい。
冷汗がたらたらと流れ出てくる。
いっそ、冷汗と一緒に尿も蒸発してくれればいいのにと思うのにそうもいかない。
まさに地獄の苦しみだ。
あの苦しみから解放された時の爽快感は、体験した人間でなければわかるまい。
ま、それはともかく、畑野智美の作品、最近面白いのが多いです。
タイトル通りの『運転、見合わせ中』の物語。
ネーミングに座布団三枚あげたい。
投稿元:
レビューを見る
電車に乗る誰もが経験したことがある『運転見合わせ中』
それが朝の通勤・通学時間帯に当たれば
乗客のイライラや不安はMAXになり
不明瞭な放送に怒りは溜まる一方で…。
同じ路線に居合わせた、6人6様の6つの物語。
面白かったです。
特に『フリーターは、ホームにいた』の会話ったら。
吹き出して笑っちゃいました。
軽く何気なく書かれていますが、
結構はっと気付かされる言葉が多い畑野さんの文章。
なぜ電車が止まってしまったのか
原因がわかっていくにつれ、巡りあわせの不思議を感じました。
大きく変化するきっかけなんて、後から考えれば
こんな些細なものなのですね。
でも裏を返せば小さなことでも変化があれば
大きく自分を変えることができるということじゃないでしょうか。
私たちってやはり神様の手のひらの上で
転がされているだけなんじゃないかと…。
転がっても、何かを掴んで起き上がりたいと
思わせる一冊です。
投稿元:
レビューを見る
ああ、「運転、見合わせ中」ってそういう意味なのか。
ひと通り読んだときには気が付かなかった。ただ、どうしてこんなにふわふわした人たちばっかり出てくるんだろう、と思っていた。みんなそこそこいい加減で、甘ったれてて、利己的で。
畑野さんの描く人物には、どこかいつも、すっと刷毛でなでたような灰色の部分がある。等身大とでもいうのだろうか、誰にでもある、リアルな欠点。あまりにもリアルすぎて、目を背けたくなる部分が、さらっと当たり前のように書かれている。
それでも、大学生、フリーター、OLくらいまではかろうじて共感できる部分があった。
しかし、運転見合わせの原因になった引きこもりと、彼に振り回された駅員の話は、壮大な肩透かしをくらったような気持ちになった。
もう私にはこういう若い人の気持ちがわからなくなってしまったのかなあ。
いや、わかりたくない、と思ったのだ。こんな甘ったれて自分勝手な人にはなりたくない、と思ってしまったのだ。
一つの出来事がいろんな人に影響を与える、というお話は面白いのだが。
投稿元:
レビューを見る
「運転、見合せ中」の電車にまつわる連作短編集。だが最後の二作品は、肩透かし。
2014.9.9
投稿元:
レビューを見る
朝の通勤時間帯(ちょっと遅め)に突然の運休。そんな私鉄電車に乗り合わせた6人と駅員のその日をつづる短編集。
なんて言われて飛びついたんだけど、すっごく残念!
一人ひとりのコンセプトは面白いのに、ストーリーはちっとも面白くない。おまけに、みんな軽い。ぜんぜん軽くなるような状況じゃなくても軽い。というか、軽いとしか感じさせられない。軽い気持ちでセックスしちゃうし。
期待感大きかった分、不完全燃焼でした。
投稿元:
レビューを見る
運転見合わせに巻き込まれた人たちの連作短編集。
運転見合わせはホントイヤだけど、この登場人物たちはなぜかみんなちょっと幸せになったようで、読後感はさわやかでした。
投稿元:
レビューを見る
ある路線の電車が運転を見合わせとなったときに、そのトラブルに立ち会った人たちを描いた群像劇。連作短編集。止まってしまった電車にかかわったことで、その人の人生がほんの少しだけれど、少し前を向いていることが読んでいて胸がほっこりしました。登場人物が何だかちょっと軽めの人が多かったかな。電車が運転見合わせとなり走り出す様子が、登場人物たちが立ち止っている場所から、少しずつ歩き出す姿と重なるのはうまいなあと思う。
投稿元:
レビューを見る
どの短編も不快でびっくりした。装丁からは想像できない不快さ。爽やかさゼロ、クソみたいな主人公たちしか出てきません。分かる分かるがない。中でもしょうもなかったのは二編目のフリーターは、ホームにいたの女ね。底辺。
胸糞悪くなる連作短編集。なんでこんなん描いたのかしら、著者は。青春ストーリー、ちょいラブあり的なの匂わせといて、わりとありえない。不快になりたくない方は読まないほうが良いかと。
投稿元:
レビューを見る
タイトル通り、電車の運転見合わせのトラブルに巻き込まれた、または巻き起こした人たちの群像劇。それぞれちょっとずつ繋がってたりして、上手いなぁと思いました。
結構ライトですが、畑野智美さんが書くテンポの良い会話とか好きなので、楽しく読めました。
好印象な登場人物たちではないと思いますが、あまりにもちゃんとし過ぎてる人しか出て来ないのもつまらないですし、人のダメな部分とか描いてある方が人間味あるって良いと私は思います。
投稿元:
レビューを見る
2014.10.4読了
電車が止まった一日の出来事をそれに乗っていた人たちの目線でみた短編集。
個人的には「OLは、電車の中」が好きだったな。視点が近いからだろうか?
投稿元:
レビューを見る
電車が止まったことで紡がれる6編。
畑野さんが描く人物には親近感を覚える。清廉潔白なのも嫌いじゃないけど、おけつこそばゆい。
投稿元:
レビューを見る
短編集6編
電車が止まることによって起こる、ささいなようで人生の転機になったそれぞれ。主人公にはイライラさせられたが、たこ焼き焼いてるフリーターを叱っている柴崎君とか同じデザイン事務所にいる不動さんとか、脇役に素敵な人が多かった。
投稿元:
レビューを見る
都会の朝の通勤電車が「運転見合わせ中」になった事を軸に6つのエピソードが語られていく構成。6つの物語の主人公はそれぞれ異なるが、他の登場人物は、次の物語の伏線だったりする。6つの物語に共通するのは、生理現象としてのセックス観。読者サービス?それとも著者の衝動?頭を切り替えるのに程よい厚さで、楽しめた。