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商品説明
かつてなき国難“刀伊入寇”に立ち向かった貴族、その名は藤原隆家。「刀伊」と呼ばれる異民族が海の向こうから攻めてきた。心に荒ぶるものを抱いた朝廷の貴公子・隆家に陰陽師・安倍晴明は告げた。「あなた様が勝たねば、この国は滅びます」注目の著者が史実を基に織り上げた壮大なる時代絵巻。【「BOOK」データベースの商品解説】
「刀伊」と呼ばれる異民族が海の向こうから攻めてきた。心に荒ぶるものを抱いた朝廷の貴公子・藤原隆家は、かつてなき国難に立ち向かい…。史実を基に織り上げた時代絵巻。『月刊ジェイ・ノベル』連載に加筆修正して単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
葉室 麟
- 略歴
- 〈葉室麟〉1951年北九州市生まれ。西南学院大学卒業。地方紙記者などを経て「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞し作家デビュー。「銀漢の賦」で松本清張賞を受賞。ほかの著書に「橘花抄」など。
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紙の本
光源氏のモデルとなった貴族は 日本で初めて外敵を撃退した男だった
2011/07/01 13:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
皆さんは、タイトルを一瞥して、「また随分と難しい、なじみのない言葉ばかりが並んでいる」とは思わなかったろうか?本書を読んで初めて知ったが、日本に外敵が攻めてきたのは元寇よりはるか昔、まだ武士も台頭せず、貴族達が閨閥政治にうつつを抜かしていた平安の頃だった。大宰府なるものがあるにはあったが、没落した貴族の左遷先のような扱いで、本当の意味で防衛機能があったとは思えない。その時大宰府にいたのは藤原隆家。彼もまた、没落貴族の末路としてこの場にいた。しかし他人と異なるのは、予言により「あなた様が勝たねば、この国は滅びます」と言われたこと。つまり、左遷も一族の没落も、全ては異国と戦うがための伏線であったに過ぎない、という考えであり斬新だ。
彼は時の関白藤原道隆の次男だったが、父の死後、伯父道長の台頭により失脚する。かてて加えて彼の兄・伊周は、自分の恋人の所に花山院が通っていると勘違いして矢を射かけてしまうのだ。こうした失態ばかりが強調されているが、藤原隆家を調べてみると、元寇の時のような嵐に頼ることなく刀伊を撃退しており、貴族にありながら貴族らしからぬ武張った男であったことが窺える。そんな彼にわざわざ近づいて子を生み、やがて敵対させるという女性の心理はなかなか複雑で本書を読んでもすんなりとは納得できないが、ともあれ隆家の徹底したゴーイング・マイウェイぶりは小気味良い。時の権力者・道長に媚びることなく、閨閥に頼ることなく、己の力によってのみ立つ。そんな生き方は、もう少し時代が下って平清盛の時代に生まれていれば、彼の人生は違うものになっていたのかもしれない。