紙の本
自らの正義を諦めない
2016/09/18 14:37
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投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
トラックの脱輪事故で若い母親が亡くなる事件がかつてあった。
トラックの整備不良かトラックの欠陥か、亡くなった家族と運送会社、トラックメーカーのそれぞれの視点から事故の原因に迫っていく。
企業倫理が問われるサスペンス。
自己の責任を負わされる運送会社が企業の責任を暴いていく。それは並大抵の苦労ではない。証拠を全て握っているのは企業側だからだ。執念の闘いだ。
紙の本
空飛ぶタイヤ
2013/01/15 22:29
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投稿者:よっしー - この投稿者のレビュー一覧を見る
何という感動、胸のすく結末。そこに至るまでの暗闘。長さを一切感じさせない密度の濃い構成。著者には他に多くの著作があるが、この書がなぜ注目されていなかったのかと大いに疑問。多くの書評家たちは何を読んでいるのか。銀行に留まらない新たな池井戸ワールドを堪能してください。早、文庫本にもなっていますね。
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ぱっとみで購入。
事故を巡るそれぞれの箇所の
動きとか人の考え方がよく書かれている
○○だから安全だ!だから...。
自分たちで解決の糸口を見つけようとする
姿勢や仕事だけではない人生が垣間見える。
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横浜市内で起きた、大型トレーラーの脱輪による母子死傷事故。そのトレーラーを所有していた赤松運送の社長や従業員、その家族は一気に世の中の批判・警察の捜査・人々の中傷、そして得意先の離脱や銀行の債権回収による経営危機に見舞われる。
しかしトレーラーの車体は世間の基準をずっと上回った、丁寧な整備が施され、また無謀な運転もされていなかったことがわかる。また、日本各地では同様の不可解な事故が何度も繰り返されていた。そして次第に、事故は「整備不良」ではなく「車体の欠陥」・「リコール隠し」によりひき起こされたという、名門自動車会社の大きな闇と悪意が浮かび上がってくる。
自分自身、事故とは関係なかったですが、その問題になった自動車会社に部品を供給する自動車部品会社で勤めている立場、また自動車好きな立場として非常に興味深くこの本を読みました。
普段何気なく使っている自分達のクルマは、乗っている人達ばかりでなく、その周りにいる他車や、歩行者や自転車などの他者の命をも預かる非常に「重い」存在であり、また、それを使う人達の当たり前の日常や生活の糧を支える貴重な存在です。それがこのような一企業の不正に大きく歪められ、破壊されていく姿には大きな衝撃と怒りを覚えました。
勿論、この物語はあくまで小説としての創作であり、フィクションであり、作品に登場する自動車会社は存在しない名前になっていますが、モデルとなった名門財閥系の大手自動車会社が実際に二度も自らの過ちを隠したという事実は事実であったと記憶しなければなりません。問題の自動車メーカーはCMで、自らの作るクルマやトラックがいかに信頼性のある商品に改革されたか声高に叫んでいますが、それでもやはり自分がこの会社のクルマを買うことは二度とないと思います。実際に人は亡くなり、それを誤魔化そうとしたのですから。
名車を多く生み出しているメーカーであり、多くの情熱と良識ある従業員がいるだろうに、一部の人々の名誉浴や金欲のためにその名声を地に落としたことは本当に惜しいと思います。
一方で、この小説では赤松運送という中小企業の社長が自らの家族や従業員の人生を守ろうと、また、被害者の家族の無念すらも代弁しようと、簡単に誤った情報に屈せず、批判に抵抗し、綱渡りの資金繰りを首の皮一枚で乗り切っていくすさまじい「苦悩」が描かれます。自分の父が同様に自営業を営んでおり、子供のときから会社経営や従業員を守る前向きだが苦しさにも満ちた姿勢や生き方を見せられ、聞かされて育ってきたので、赤松社長の生き方には非常に共感を持ちました。
会社の第一目的は「お客様のため」なのですが、それと同列の価値として「そこで働く人々とその家族の人生を充実させ、守る」ことも表裏一体で大切なのだということも改めて実感しました。
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久しぶりの大当たりといえる小説だった。
巨大企業であるホープ自動車に立ち向かっていく小さな運送会社の社長:赤松。
財閥系の非常識な常識に、何度もプライドを粉々にされ、絶望しながらも立ち向かい続ける。
このあくなき執念に目頭を熱くした。
現実の世界で起きた数年前のM自動車のリコール隠し事件。
このことを嫌でも思い出してしまうため、妙なリアリティがある。
しかし恥ずかしながらオレ自身とすれば、赤松よりも大企業側の担当者に感情移入してしまった。
「自分の場合だったらどうするだろうか・・」なかなか答えが出せなかった。
ネタバレになってしまうが、最後は赤松の努力が報われる。
出勤途中の朝食時、ドトールコーヒーで読み終えた際に思わず泣いてしまった。
サラリーマンのみならず、ぜひ読んでいただきたい小説。
おそらくは後悔しないのではないか。
なお見逃してしまったが、この「空飛ぶタイヤ」は4月にWOWOWでドラマ化されたようだ。
やはり題材としてM自動車のリコール隠し事件が連想されるため、CMのある民放では無理だった様子・・。
しかし1点解せない理由がある。
主人公とも言えるべき赤松運送の赤松社長。
小説の表現を借りれば「かなりしょぼいオヤジ」「髪も薄くなり疲れきり、脂の浮いた額」・・
それがドラマの中では仲村トオルだそうです。
やっぱりドラマだね〜(笑)
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読み応えばっちりの企業ドラマ。最初の主婦が事故に遭うシーンが悲しくてしばらく読まずに放置していたが、読み始めたら一気に進んだ。消費者を向かずに暴走する大企業の怖さを感じた。主人公の赤松の強さに感動。
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財閥系自動車会社、中小企業運送会社、銀行、学校、親子、遺族の視点で話は進みます。
話の発端は、ある日走行中のトレーラーから外れたタイヤが歩道を歩いている主婦に突撃し、亡くなってしまった事です。
主人公の赤松徳郎(運送会社の社長)は、「正義は勝つ!」という信念のもと会社の汚名を晴らすため大企業と戦っていきます。また、反対に大企業の社員の中からも自社の在り方に疑問を持つ人間も出てきます。その人たちが「会社との関わり方」、「夢をかなえるとはどういうことか」悩み進んでいく姿も考えさせられるものがありました。
私的な見どころは、主人公の人間ドラマ。主人公の子供は父親に容疑者の疑いがあるため、学校でいじめられます。そんな環境にどう立ち向かっていくのか。親子の話は涙もののいい話です。「子供は親の背を見て育つ」ということを感じました。
あえて批評を言うなら内容がとても長いため、ところどころ流し読みになりました。それでも学ぶべきものは多くあると思い、読むべき一冊と感じました。
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本当に面白かった。銀行を舞台にした作品を多く書かれている筆者だけに、企業を、そしてそれに関わる人を生かすも殺すも銀行次第というのがよくわかる作品だった。腹の立つ大手企業の役員達や女王蜂に散々苦渋を舐めさせられ、最後にそれら全てを見返してやった結末は読んでいて「よっしゃあ!」という声を上げそうになる。被害者の女性の夫と子どもの痛々しさは読んでいて辛かった。慰謝料は五百万――そう聞いたときのそれっぽっち?の気持ちには深く共感した。そんな程度では(もちろん金額の問題じゃないけれど)何の罪も過失も無いのに大事な家族を奪われた深い深い悲しみや怒りはとても清算できない。この作品に出会えて良かった。そう思える作品。
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某自動車会社のリコール隠しの問題をテーマにした小説です
ストーリはフィクションでしょうが、実際にこんなやりとりがあったのではないかと思えるほどです
小説なので痛快なストーリーにはなっていますが、人の顔の表と裏というか、本音と建前を使い分けるようなあたりなど、かなりリアリティがあります
かなり読みやすくてあっという間に読み終えることができました
お勧めです
ネットで検索してみたところ、過去にWOWOWでテレビドラマ化されたこともあるんですね
TUTAYAでレンタルしてみました
こちらも面白かったです
「下町ロケット」もかなり面白かったですが
個人的には「空飛ぶタイヤ」のほうが好きです
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中小企業のオヤジなめんなよ!
という感じだね。
下町ロケットから入ったのだけれど、この感じはけいぞくしているのだろうか?他の作品も読んでみよう。
大企業の体質を変えるのは、むずかしいなぁ。
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2段組みの分厚い本で正直最初「うっ」ってなったけど読み始めたら一気に読んでしまった。フィクションであると巻末に断ってあるけれど、某自動車メーカーの内部はきっとこんな感じに違いないと思ってしまった。
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トレーラーの走行中に外れたタイヤは凶器と化し、通りがかりの母子を襲った。タイヤが飛んだ原因は「整備不良」なのか、それとも……。自動車会社、銀行、警察、週刊誌記者、被害者の家族など、事故に関わった人それぞれの思惑と苦悩。そして「容疑者」と目された運送会社の社長が、家族・仲間とともに事故の真相に迫る。オヤジの戦いに思わず胸が熱くなる! 直木賞候補となり、選考委員の高い評価を得た、イッキ読みの圧倒的エンターテインメント巨編!
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フィクションでありながら、実際の事件が彷彿され、大企業の傲慢さ、中小企業の熱血経営ぶりを描いた小説。一気に読みたくなる本です。
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企業不正と闘う「働くおっさんたち」がかっこよくて痛快。
「下町ロケット」を先に読んだんだけど、こちらを読んでから考えれば、下町ロケットのストーリーの構造はこの本の焼き直しに見えてしまう。同じ作者の他の本はどうなんだろう。
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『大企業病』という言葉では言い表せない程の、超大企業病。それと戦う愚直な中小企業の大将。かつ、フィクションと断ってあるが、我々も良く知っている実際に起こった某自動車メーカの事件を元にした迫力あるストーリ。最近増えてきた、自分の子供のことしか考えられない親。企業で働く一人の人間として、子供を持つ一人の親として、主人公の赤松、ホープ自動車の沢田、他の登場人物の一人ひとりに対して、自分がその立場に置かれたらどうするかを考えながら、吸い込まれる様に読ませてもらった。
官公庁、財閥系の企業に限らず、一般の企業でも、程度の大小があると思うが、社内・組織の論理、派閥、エリート意識、建前ありき、等々が存在し、今の立場の自分を優先するか、人間としての正義を優先するか、悩みながら人生の小さな岐路を選択していっている。私自信、仕事をする残り年数を数える年齢となってきたが、いつまでも『素直な心』を常に持ち、正々堂々と生きて行きたいと思う。