紙の本
高校野球の魅力満載の快作
2007/11/08 22:03
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大抵のスポーツ小説は、筋書きのあるドラマだと思う。物語ならではのドラマチックな筋立て、類型的ながら魅力溢れる登場人物、そして読者の多くが納得する勝負の行方。
スポーツノンフィクションでなく小説を読む以上、誰も散々じらされたあげくの着地点でこけたくはない。ハラハラドキドキしながらも(むろん、主人公が波乱なく淡々と勝つのは駄目だ)、最後には自分が応援するチームや選手には、きっちり勝ってもらわなければならない。「勝つ」と言うのは、単純に試合の結果や数値の優劣ではないけれど。
ヒーローとヒロインが最後には結ばれるロマンス小説のように、スポーツ小説もある意味で予定調和の物語だ。予想通りの結果では「なーんだ」となり、無理に外せば「そんなの許せん!」となる。このジレンマを解消すべく、クライマックスの勝敗を明示せず「後はご想像にお任せします」とやる書き手も少なくない。一方で物語の導入部分で、さっさと結論を明示してしまう書き手もいる。
「大延長」は後者のパターンだった。プロローグで、一人の男が15年前の試合を思い浮かべる。引き分け再試合となった甲子園の決勝戦だ。本を開いて1ページ目で、読者は大勝負の結果を知ることになる。これは、かなり大きな賭けだ。
そして本編。時は15年遡り、歴史に残る大一番が始まる。
野球というスポーツは小説、漫画、ドラマ等ジャンルを問わず人気のある題材だ。ルールがわかりやすいこと、攻守・静動がはっきりしていること、団体球技でありながら個人戦も堪能できること、9人という描きわけに適当な人数編成であること、おまけにバッテリーや、ピッチャー対バッターなど強調できるとり合わせがあること、理由は諸々だろうが。
児童文学や少年漫画のジャンルでも野球物は多数あり、人気のある作品はどれもそれなりに面白いが、やはり子ども目線が鼻につく。自分で自分の生活を支えていない者特有の甘え、我儘、傲慢、思慮の浅さ。子どもが主役の作品では、大人たちは大抵つまらない脇役だ。
「大延長」では、球場で死闘を繰り広げる選手たちだけでなく、彼らを取り巻く大人たちが、じっくり書き込まれていた。両校の監督や部長、解説者、OB会メンバーなどの存在が、物語に厚みを持たせている。わずか数時間の、たかが野球の試合が、人生そのものに成り得る瞬間を堪能してみて欲しい。
ケチをつけるとすれば、タイトル。「大延長」という単語そのものが、しっくりこない。大きな延長? 副題の「The Endless Game」がピタリとはまる日本語は難しい。
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H20.3/17〜
出版社 / 著者からの内容紹介
初出場でありながら、大会屈指の好投手を擁して勝ち上がった、新潟の公立進学校・新潟海浜。甲子園の常連で、破壊的な打撃力を誇る、東京の私立・恒正学園。両校間で行われた夏の全国高等学校野球選手権大会・決勝戦は、延長15回の熱闘に決着がつかず、優勝決定は翌日の再試合に持ち越された。監督は大学時代のバッテリー同士で、海浜のエースとキャプテン、恒正の四番バッターは、リトルリーグのチームメート。甲子園球場に出現した奇跡の大舞台で、互いの手の内を知り尽くしたライバルたちの人生が交差する。エースの負傷欠場、主力選手の喫煙発覚など、予期せぬ事態に翻弄されながらも“終わらない夏”に決着をつけるため、死闘を続ける男たちの真摯な姿、<甲子園優勝>をとりまく数多の欲望の行方を俊英が迫力の筆致で描く、高校野球小説の最高傑作!
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個人的にはすごく好きです。
ただ、登場人物が割と多いので、ナメて掛かると大変なことに。
最後に放送席で起こる事だけは若干「ん?」という気がしましたが、他のところは面白かった。
やっぱり、すごくドラマチックになってますので、ラストは大方の想像通りです。
高校野球すきなので嬉しかったっていうのと、なんとなく駒苫−早実を思い出しました。
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甲子園の決勝戦・再試合。出来過ぎな舞台。心臓がばくばくなる。いろんな想いがひとつになっていく。試合が始まる前からけぶるような熱がくるしくて泣きそう。
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野球の試合を一試合描くだけなのに、条件を追加していくとたちまちドラマティックになるんだから不思議。
第一に、これが高校野球であること。さらに夏の甲子園決勝戦であること。
現実にも素晴らしい試合はたくさんありましたが、本書もかなりのものです。
部員の喫煙とか、エースピッチャーの故障とか。そしてタイトルのとおり延長に次ぐ延長!
試合の結末をエピローグでさらりと明かすあたりニヤリとさせられた。
そうです結果よりも試合の過程だけで十分に楽しめるのがスポーツなんだと思います。
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かつての松坂大輔君を彷彿とさせるピッチャーとリトルリーグ時代からの好敵手ーが甲子園の決勝戦で対決する・・・というお話。
甲子園の中継を観ているようで、面白いのですが、「因縁の対決」が多すぎる気がします。実際の球界もこんなに狭い世界なのでしょうか?
あっちもこっちも因縁だらけ・・・という人間関係です。
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2010年2月11日読了。2010年21冊目
すごいおもしろい。試合の描写はわかりにくいところがあったけど、選手や監督の心理描写は感動。周りを取り囲む人にもスポットが当てられ、読んでる最中どきどきしっぱなしだった。
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野球好きにはたまらない試合展開でした。堂場さんの話は結末が読めるようで読みきれない感じがいいですね。プロローグでどっちが勝つかは分かってしまっていたけど、最後の最後までどきどきさせられるお話でした。
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気分は「早稲田実業VS駒大苫小牧」
ちょうど、時期的に夏の甲子園が終わって、なんとなく手にとって読んだ時の感想は・・・・・2006年と同じ状況じゃん。夏の大会決勝翌日再試合って・・・・。もちろん話の内容は全然違うけど、背景は2006年の早実×駒苫です。
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高校野球、甲子園が好きな人にはたまらない一冊だと思う。牛木というエースピッチャーを中心とする新潟の公立高校を率いる羽場監督と4番久保を中心とする西東京の私立高校を率いる白井監督。決勝戦、延長15回再試合。監督の思いと選手それぞれの思いが交差する。最後はどうなるのかわからないままで終わったほうが気になるけどよかったかなとは思った。
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本当の高校野球はこれ以上のドラマが生まれます。
2011年の夏は好ゲームが続いています。
8月16日,能代商惜敗!
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おもしろかったー。野球はあまり好きではない。たまに見るとしても甲子園くらい。この小説のベースにはあのまー君とハンカチ王子の試合やあの時起きた各校の不祥事事件などがあるが、あの決勝戦もみんなが真剣になってみるほど真剣でもなかった。なのにそんな私も夢中になってしまう。延長15回を終えても決着のつかなかった決勝試合、翌日の再試合を控えた両チーム、それぞれに問題が持ち上がる。両校の監督は昔大学リーグでバッテリーを組んだ中。まるっきりタイプも違う監督、私立の常連校と地方の公立校、リトルリーグ時代は同じチームにいた超高校級のスラッガーとエースピッチャーと怪我で試合に出られないキャプテン。お互いに問題を抱えたまま始まる試合。試合が進むにつれ変わっていくチーム、はらはらとしながら読み進む。両者が死力を尽くし戦いは進む。やがて選手たちは野球の本当の楽しさに気がついていく。もっと楽しみたい、だからここで試合は終わらせることが出来ない。読んでいてあの時の試合に夢中になっていた人の気持ちがやっと分かったような気がする。おもしろかったー。
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甲子園決勝。かつてのチームメイトだった監督同士、選手。それぞれの視点で決勝の再試合までからが描かれている。正直試合が始まるまではイマイチ。それぞれの考え方、とか取り巻く状況とかいろいろ分かるが、視点がころころ変わるのが少し疲れる。特に滝本さんとか、この人必要だったのかなあっとちょっと思う羽場監督たいへん〜!OBの親父なぐりたかった・・・。断然海浜応援!チームの一丸となった感じが好き。後半、「野球が楽しい」このままもっと続けていたい、とみんなが思ってくるところがなんか熱い。怪我だとか、自分の立場だとか、その後に振りかかってくることは色々あるんだろうけど、ただその時はその試合に自分たちがいる、ということに最高の喜びを感じている。そーゆー雰囲気がすごく伝わってきた。牛木くんと春名くんのコンビも大好きだ〜。あのナイスプレイには興奮した!
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かつての野球仲間が、高校野球の監督となって率いたチームが甲子園の決勝という最高の舞台で対決!しかも、延長の末決着がつかず、翌日再試合となった!!やっぱり高校野球が面白いのは、人生で何度もない最高の経験を若者たちがしているからでしょう。膝に不安を抱えるピッチャー。自分のバッティングしか頭にない4番バッター。チームをベンチから支えるキャプテン。解説者は両監督のかつての恩師で病気を押しながら命を賭けての最後の解説!そして両監督は、選手の自主性に任せるタイプと自分の思い通りに選手を動かすタイプの両極。。。結局、最後は野球最高!楽しいことは楽しい!!っていう。スポーツは何のためにやるのか?勝つため?でも、みんな最初は面白くて楽しいからだったはず!
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「チーム」を描いた、堂場瞬一の作。ボルテージが騰がっている今の内に読んでおけば、他の作品を読む時の、プラスになるかと思って。で、感想は、☆2つ半という処か。余りの生臭さに、辟易したのが正直な処。人に因っては、こんな位で生臭いと思っている様じゃ、ケッ、アンタも甘ちゃんだねと鼻で笑われそうだが。イマドキの高校生がお前の理想とする様な純粋無垢な訳が或る訳が無いと。でも意外と、スポーツばかり遣ってる奴らって、世間が思う以上、其ばかり遣ってるから他の事に注意が向かない一直線な奴らで純粋なのが結構多いんだよ、今でもね。だからこういう大人の生臭い面を表面に出した書き方だと、彼等学生側にまで有らぬ誤解を呼ぶ恐れがある。だから警鐘を鳴らすという意味合いから2つ半(此処では3つ)という評価だな。