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商品説明
27歳のサラリーマンがひょんなことで中年ヤクザを殺害。彼の住む世界の歯車は狂い始め…。虚無と絶望が交差する日常から、人はいかに自己を解放できるか。新感覚アナーキークライム・フィクション。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
垣根 涼介
- 略歴
- 〈垣根涼介〉1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年「午前三時のルースター」でサントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞してデビュー。「ワイルド・ソウル」で大藪春彦賞等を受賞。
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紙の本
いやあ、この面白さに★三つはないでしょ、どう考えても五つ★。特に割り切りのいい殺人は、まさに現代。これを待っていました
2005/03/01 20:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
年があけたばかりなのに、この傑作ラッシュはなんだ?と嬉しい悲鳴をあげたくなる。ま、殆どは年末に出た本なので、今年のものとして扱うのはどうか、とは言われるだろうけれど、たとえば「このミス」にしても、文春ベストにしても、これらの作品の評価は、ナントあと一年待たなければならないのだ。この時点で評価をしておくのも悪くはないだろう。
垣根については、今更いうまでもない。さしずめ2004年は、垣根作品ラッシュだったといってもいい。しかも、その水準の安定した高さ。垣根は1966年生まれ、2000年『午前三時のルースター』でデビューとあるから、サラリーマンでいえばこれからが働き盛りという年齢。それを証明するかのような最近の出版ペースである。
『ヒートアイランド』『ギャングスターレッスン』『サウダージ』というシリーズ物があって、私が垣根を読み始めたのが『ギャングスター』から。でも、垣根が注目を浴びたのは第三作に当たる『ワイルド・ソウル』で、彼は大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞と、史上初のトリプル受賞に輝いた時から。
でだ、『クレイジーヘヴン』である。全体は4部構成で、PHASE:1「狂気の夏」、PHASE:2「逸脱の秋」、PHASE:3「欲情の冬」、PHASE:4「覚醒の春」ということで、これからは全く展開が読めないというのがありがたい。それにしても、章立てをPHASEと表記するあたりは、さすがである(英語に弱いのだね、私は)。装幀・大塚充朗、写真・Alamy/ppsで、可もなく不可もなし。
主人公は、坂脇恭一、27歳。旅行会社勤務、といっても勤め先は東京ではない。関東の地方都市だが、あとで出てくるヒロイン(ま、彼女をそう呼んでいいかはかなり疑問だが)の逃走ルートから推測するに、宇都宮だろう。ヤクザが跳梁跋扈するというあたりからも、それは正しいはずだ。
で、もうひとり、そのヤクザである市原に脅され、美人局の片棒を担がされているのが24歳になる圭子、後に田所圭子と判明する美女である。ただし、目立つような美しさではない。しかも、賢いとか内から輝くとか、性格がいいとか、そういうヒロインに相応しいものを持っているわけでは、全くない。自分のことしか考えられず、決断も出来ず、おまけに嘘つきである。
この二人に共通するのは、過去と決別している、ということだろう。帰るべき故郷もなければ、愛する両親もいない。語らう友人もいなければ、頼るべき先輩ももってはいない。しかも、二人とも本心を隠しながら、唯々諾々と現状に甘んじている。小さな地方都市とはいえ、出逢うことがなくても済む人生だったはずだ。しかし、いやここまでにしておこう。
ほかに、面白い登場人物といえば、経歴に怪しい節のある恭一を気に入って無理やり採用した、旅行代理店の支店長である松浪がいる。ちなみに、恭一が前の勤めを辞めた理由というのが余に愚かな上司を殴った、ということである。そして、同じカウンターで女を見るたびに涎をたらしている借金漬け男、吉島がいる。
垣根得意の犯罪小説だが、恭一のキレ方がいい。前後の見境を無くす、というのは彼のような人間の行動のことをいう。そして、それが極めて説得力がある。今までのヒーローは、悪であれ正であれ冷静に過ぎた。クールであることは、素敵なことである。それは虚構世界の決まり事だ。
でも、普通の人間はそうではない。狂熱と恐怖の間を揺れ動き、時に冷静になるのがいいところだろう。そう、垣根はいとも簡単にその本当の人間を描くことで、よくある小説の約束事を破壊する。ミステリファンならずとも思うときがあるはずだ。なぜ、殺さない。そんなところで躊躇うな。潰せ、壊せと。そう、恭一はそれをあっさり行う。その行き着く果てが…
ちなみにクレイジーヘヴンは、精製コカを水溶液で薄めたもの。中毒性は喫煙程度。垣根の小説の中毒性は、もっと強い。
紙の本
期待しているからこそ
2005/02/18 09:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ザキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルもいい。装丁もいい。書き手は垣根涼介。
期待して読むのは当然だろう。
そこそこ楽しめはした。心に残るフレーズもあった。
しかし、「ワイルド・ソウル」を書いた垣根涼介だ。
もっと深い部分が書けたはずだ。
女にも魅力がない。たぶん、女が読んだら反感を買うだろう。
期待しているから辛くなる。そんな感じだ。
紙の本
文章自体は一作ごとに滑らかになってきているのだが…
2004/12/23 23:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
展開もスピーディで文章も読みやすいのにもかかわらず、読後残念な気がするのは何故だろう?
前作『サウダージ』から少しずつその兆候が現れて来てたのだが、あまりにも薄っぺらい内容が目につくのである。
ただ、『サウダージ』の場合は登場人物の“DD”の影響も多分にあったであろうから許容範囲だったのであるが、本作はやけに“性描写”が強すぎて読後の爽快感が薄れてきているのである。
残念ながら、垣根氏が物語にどういう結末を描こうが、私自身はあんまり物語に入り込めなかったのが正直な感想である。
読み終えてふと疑問を感じた点を書きたく思う。
垣根氏は本当にファンが彼に望んでいるものを理解しているのであろうか?
主人公は27歳のサラリーマンである点からして確かに読者との距離は近くなったのかもしれない。
テーマ自体はきっちりと提供してくれている。
“本当の自分を見出し、一歩抜け出すためにはどうしたらいいのか?”
おそらくこんなところであろうと推測できる。
しかしながら“内容がテーマに追いついていない”ような気がするのである。
少なくとも傑作『ワイルドソウル』に見られる重厚感や登場人物の魅力は半減された。
本作における恭一と圭子、『ワイルドソウル』のケイや恵子のようにいつまでも読者の脳裡に焼きついて離れないほどインパクトは感じられない。
売れっ子になればスケジュールもきつくなると思うが、大作をじっくりと取り組んで私たちのファンの前に披露してほしいというのが本音である。
ファンはもう少し夢のある話を期待している。
どちらかと言えば軟派な傾向に走りがちであるのが残念だ。
私のレビューが他の垣根作品と比して短い点がこの作品の評価を物語っている…
次作期待。
マイレコ
紙の本
乗り越えようとするものは何なのか
2005/01/16 23:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:格 - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公は坂脇恭一,27歳.人口25万の北関東の県庁所在地にある旅行会社に勤める営業マン.もう一人,やくざの情婦,圭子.美人局の片棒を担ぐのを仕事としている.そんな二人が恭一の同僚が美人局につかまったころから,顔をあわせ,そして,….以後,二人で小さな街で肩を寄せ合って暮らしていくのだが,….
“クレイジーヘヴン”とは精製コカを水溶液で薄めた催淫剤.それを陰部に塗られてセックスをしていく.その喜びが忘れられず,やくざから離れられない.恭一と暮らすようになっても,離す事はできないから,….
以下の4章の構成で二人の1年を描く.
狂気の夏
逸脱の秋
情欲の冬
覚醒の春
最後の章の名前から,ハッピーエンドを期待してしまう.恭一の心の動きがいま一つわからない.突然に思い立って行動する,というパターンが目立ち,よくわからない.“枠(フレーム)がある.乗り越えなくては.”というフレーズが何度もでてくるのだが,あまり成功している感じではない.結局二人が乗り越えていくのならいいのだが,安易な感じがする.