「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
妻を交通事故で亡くした大学講師。彼が手に入れた、ある作家の未発表原稿。それはさらなる災いを彼にもたらすことに…。長篇ミステリアスロマン。『ジェイ・ノベル』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
貫井 徳郎
- 略歴
- 〈貫井徳郎〉1968年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業。93年第4回鮎川哲也賞最終候補作となった「慟哭」で作家デビュー。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
評価が分かれる作品と言えそうだが、少なくとも貫井フリークの方には1冊で2冊分楽しめた作品なのは間違いないところであろう。
2005/02/28 21:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
貫井さんの熱心なファンの方が聞いたらお叱りの言葉を頂戴するかもしれないが、貫井さんもここまで書けるようになったのかと感心してしまったのが読後の率直な感想である。
作中作として戦後すぐに自殺した作家が記した未発表手記が本作の半分近くを占めるのであるが、これが初め旧仮名遣いの為に文章が読みづらいのであるが読み進めて行くうちに主人公の気持ちに読者が引き込まれていくのである。
これは本当に素晴らしい、貫井さんの隠れた才能を垣間見た気がするのは私だけであろうか…
作品全体としては、動機付けや主人公のうだつのあがらない性格など、いささか感心しない点があったのも事実。
たとえば主人公の奥さんが実家に帰った(別居)為にこの物語は始まるのであるが、そのいきさつ等も少し不自然なような気がする。
貫井さんの優しさが少し詰めの甘さに繋がっているようにも感じられたのは残念。
個人的には手記が秀逸だった為に、その語のミステリー解明部分が二転三転して結果として欲張りすぎたような気がする。
しかしながら、読者がこの作品を読んで、“今、まわりにある大切なものを見つめなおすいい機会”となった方は大きな収穫のあった読書だったような気がする。
トラキチのブックレビュー
紙の本
悪意とは何か
2004/10/06 19:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:吉野桃花 - この投稿者のレビュー一覧を見る
明確な悪意。そんなものは日常から遠いものであろうが、以外とその理由は日常の些事だったりする。正面切って責められることが理由でないから、陰湿でまわりくどい。それが悪意であろう。
これは、最近私事がゴタゴタしている冴えない助教授松嶋が悪意にさらされ、悪意の発信者を突き止めていくまでの物語である。
「これをやったのはあいつだな。」というくらいのワルなら話は別だが、松嶋は明らかに責められてしかるべきというようなことはしていない。そうすると、あの時ああ言ったことがとか、あの時の態度がとか、取るに足りないことを悶々と考え始めてしまう。
松嶋は特に迂闊で鈍感なのだけど、もし私が同じような悪意を受けたしたら、あることないこと考えてしまうだろうなと思う。理詰めで考える前に、何か自分に落ち度があったのではないかと。そうすると、相手の思う壺なんだけど。
悪意の発信者が誰か?というのが謎として追われるわけだが、それを追っていく松嶋の心理がおもしろいのだ。悪意の発信者に迫る過程で、どうしても自分の過去を考えざるを得ない。その回想は切ない。取り返しのつかないもの、だからこそ大切なもの。自分が大切なものは何なのかということを、計らずも確認するのである。
もちろん悪意の発信者が誰かという謎ときもわくわくするし、その点も緻密に書かれている。でも、私は松嶋の心模様のほうを「ばか! 違うだろ。」「ああわかる〜。」「しっかりしろ!」と手に汗って感じで読んだ。
あまり状況説明すると読む楽しみがなくなっちゃうので、抽象的な話の上に肝心のことが言えなくてもどかしいのだけど、これは今年読んだ中でもかなりオススメ! ぜひ読んで!
紙の本
手記の謎で始まり、手記が救った
2004/08/08 07:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:luke - この投稿者のレビュー一覧を見る
ページをめくる手がもどかしいとか、一気に読ませるとか、夢中にさせる本って何がそうさせるのだろう。だいたいが初っ端からだし、それも謎とかまだ出ていないのに。幾つか根拠が浮かぶけれど、どれもが当たっているようで確信が持てない。行き着くところ読む人次第って事なのかしらん。
「追憶のかけら」、読み始めたら結局止められず一挙に読み切ってしまいました。主人公は人の良い大学講師。最愛の妻は幼い娘を一人残して事故死してしまいます。妻は自分が講師として勤務している大学の教授の娘で、主人公が原因の夫婦喧嘩の果て子どもを連れて実家へ戻っている時に事故に。その為、幼い娘は義父である教授宅で生活していますが、何とか引き取って自分で育てたいと願っています。そんな折り、一人の男が自殺した作家の未発表原稿を持ち込んで来ました。
…と、スリルもサスペンスもない冒頭の数ページで止められなかったのですから、虜にさせる何かがあるのだな。その上、この手記がまた読ませます。これだけでひとつの物語が出来そう。50年も前の未発表手記は、当時5作ほどしか発表してない無名に近い作家の自殺する寸前に書かれた物です。自殺の原因を探る事が手記を貰い受ける条件ですが、子どもを取り戻す為にも実績が欲しかった主人公はその条件を飲むことに。さすがに作家の手記と言うべきか、人物もきちんと描かれたストーリーで元の物語を忘れてしまいそうになるくらい。旧かな使いで書かれているせいなのか、戦後の混乱期をそれだけで醸し出しているような手記は重厚にさえ見えてくるから不思議ですね。似たようなプロットは見かけますが、ひと味違っています。何転もする内に廻りの人間全て怪しく見えて来るのは定番か、しかし本の上でも信じる者は救われるですね。誠実な人は、誠実な人を引きつけるのだ。壮大な罠に比べてせこい動機が気になるのですが、もう一つの愛情溢れる手記の御陰で心安らかにラストを迎えられる事が出来ました。愛が始まりで、愛で終わったのだ。