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商品説明
猫のこと、古本のこと、旅や散歩のこと、ご飯のこと…。無為の時間の中に心を遊ばせ、日々の暮らしの中に日だまりのような時間を見つけたエッセイ集。『週刊小説』に連載されたものを単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
川本 三郎
- 略歴
- 〈川本三郎〉1944年東京生まれ。東京大学卒業。エッセイ、評論など幅広い分野で活躍。著書に「大正幻影」「荷風と東京」「東京つれづれ草」など。
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紙の本
私とこの本のいくつかの関係
2011/03/07 08:09
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本との出逢いにはいくつかの方法がありますが、2001年に出版されたこの本との出逢いはそのいくつかが重なったものでした。
ひとつめは書評。bk1書店の「読者の書評」欄で「ろこのすけ」さんが書いていた書評で読んでこの本の存在に気づきました。書評がなかったら、目にしなかっただろうと思います。書評は未知の世界をひろげてくれるナビゲーターです。
ふたつめは装丁。装丁がいいと読みたくなることがあります。つい手にとってしまう。
この本の場合、どこか下町にありそうな商店街を描いた森栄二郎さんの絵がいい。
よく見るとこの商店街にはアーケードがついていて、一時このタイプの商店街が流行ったことがありました。雨の日でも買い物がしやすいようにという配慮だったのだと思います。最近はこのタイプの商店街はどうも人気がありません。開放的でないからだと思います。でも、ここではその雰囲気がこの本に味を出しています。
三つめは、川本三郎さんの本だということ。好きな作家を追いかけるのは本との出逢いでは定番です。もちろんそれでも見落とすこともありますし、以前に出版された本まではなかなか手がまわらないものです。
この本の場合、出版から十年経っています。だから、書評で知って飛びつきました。
四つめは自分の好きな分野だということも本との出逢いには大切です。
詩集だったりビジネス本だったり、自分の好みがあります。文芸書でも時代小説が好きな人はどうしてもその分野の本にひかれたりするものです。
この本の場合はエッセイ、随筆というくくりに「読書案内」がつながっています。川本さんは「随筆は、いわば日なたぼっこや、散歩のようなもの」と書いていますが、実際に散歩できなくとも、こういう本を読んでいるとゆったりと歩いている気分になります。
これだけの理由があれば、この本と出逢ったのは、私にとっては必然としかいいようがありません。そんな期待にこの本は充分こたえてくれました。
出逢えてよかった。読んでよかった。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
紙の本
随筆紹介にみる極上のエッセイ
2011/01/24 14:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いろいろな人の随筆を紹介しながらさまざまな思いを自由自在に語っているのが本書である。
目次を読んだだけでもこの本がどれだけ面白そうか想像がつく。例えば「散歩ことはじめ」「文豪、自転車に乗る」「男の焚き火」「猫のいる幸せ」「落ち葉の楽しみ」などなど。
その中でも「落ち葉の楽しみ」が趣深い。
青木玉の随筆『こぼれ種』(新潮社)の紹介から:
去年の今頃、台所でよく使う透明な袋にいっぱいの紅葉を貰った。『安部峠の紅葉の色、お届けします。乾いていますから、水に放してお楽しみください』と添え書きがあった。琺瑯びきの大きな洗面器に水を張って浸すと、葉は赤も黄も、中心に緑を残すものも鮮やかな色を取り戻し、器の中の水の動きに連れて、静かに揺れた。
なるほどこういう紅葉の楽しみ方があったのか。
こういう余韻の残る目の中に鮮やかな色彩が放たれるような随筆を紹介してもらった喜びはたとえようがない。川本三郎の膨大な読書に驚嘆しつつも、そのおこぼれにあずかった一冊であった。
ブログ「言葉の泉」はこちらです
紙の本
目なたぼっこか散歩のつもりで、のんびりと読むことをおすすめします
2001/11/16 22:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:近藤富枝 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あるテーマを、複数の他人のエッセイを引用することで語ろうという大へんユニークな本である。四十四篇の随筆がすべてこの方法で作られているのだから、著書の読書量、博識は大へんなものと知るだろう。石川淳の『夷斎筆談』に、
「随筆の骨法は博く書をさがしてその抄をつくることにあった」
とあるのを著者は学んだとあとがきにある。古今東西の本からだけでなく、著者得意のジャンルである映画からの引用も度々あり、視覚的な説明となるので楽しくなった。テーマは文士の登場する話がかなり多く、「文士と図書館」を例にすればこの章には幸田露伴、樋口一葉、田山花袋、夏目漱石、トルーマン・カポーティなどの作家が登場する。
上野図書館へ通っていた一葉はすれ違った学生に冷やかされたりしたという。私は戦前この図書館へ下駄でいき、赤い鼻緒の冷めし草履を地下の下足場で借りたことを思い出した。なつかしい風景を思い出すことのできるのもこの本の御利益(ごりやく)である。
著者によると料理は材料できまるといい、
「実はこれ、随筆についてもいえる。材料こそが大事なのである」
は至言だと感心した。利れ味のいい言葉があちこちに首をもたげているのもこの本の特徴で勉強になる。文語文のよさを説いているのも同感だがために目下著者は永井荷風の『断腸亭日乗』の筆写をはじめたとある。その情熱に拍手をおくりたい。
美術館で絵を見るときのいい方法というのもいい。赤瀬川原平さんの「早足鑑賞」を引用している。実は私はかねてそれを実行している。今までこの方法を一寸やましく思っていたが、これからは大威張りである。
読了後「これは大変、読む本がまたふえた」と思う人が多いだろう。しかし本好きの者にとってこれはおいしい料理屋を紹介されたようなものだと思う。 (bk1ブックナビゲーター:近藤富枝/作家 2001.11.17)