「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
幾重にも繰り返される仮説の構築と崩壊、一筋の光が屈折・分散し、到達するところには…。小学校女性教師が殺された事件をめぐり、周囲の関係者が様々に視点を変えて謎に迫る究極の推理ゲーム。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
貫井 徳郎
- 略歴
- 〈貫井徳郎〉1968年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。不動産会社勤務を経て作家に。第4回鮎川哲也賞最終候補作「慟哭」でデビュー。著書に「転生」「光と影の誘惑」「鬼流殺生祭」ほかがある。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
真実はどこにあるのだろうか?
2000/10/19 23:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひで - この投稿者のレビュー一覧を見る
世の中のすべては、見る人によってその姿を全く違う物へと変化させることができる。特に、音楽、絵画、文学等の芸術と呼ばれるものは、見る人の主観的な判断によるところが多いため、その評価は千差万別となる。どんな偉大な芸術であっても、人によってはくず同然の価値しか与えないだろう。そして人間もまた人によってその評価は大きく変わる。本作ではそんな人間世界を描いた作品である。
小学校教師の美津子が、自宅の部屋で殺された。死因は、部屋にあった時計による殴打と見られた。現場はガラス切りで鍵を開けられ侵入された痕跡が残っていた。しかし彼女の体内からは睡眠薬が検出され、現場にあったチョコレートからも同じ睡眠薬が検出された。チョコは同じ学校に勤める男性教師から送られたものだった。この事件をクラスの子どもたち、同僚の女性教諭、昔の恋人、そして子どもの親がそれぞれ自分の立場で推理し、真実を突き止めていく。この事件の意味するところとは何か。そしてどれが本当の真実なのか。
プリズム。本作の表題である。本作ではこの言葉に二つの意味を与えている。その第一が、本作では事件の真実が解明されない点である。次々に登場する人物たちはそれぞれ自分の持つ側面から事件を推理していく。だがそこに作者は答えを出さない。小説中の世界では、作者が描いた真実がそのまま真実となる。どんなに根拠が、論理が崩壊しようとも、作者がこれだといえばそれが真実である。麻耶雄嵩氏は、自作の探偵であるメルカトルに銘探偵という称号を与えている。銘の意味するところは、作者の安全保証である。ここから先には何もない、これが真である、そういう安全保証である。だが本作ではそれはない。プリズムで分解した光を再び収束させることがないように。
そしてまたプリズムの意味するところは、被害者である美津子であり、そこに関わる人間たちである。事件はそれを推理する者たちによって、プリズムによって7色へと分けられた光のように様々な側面を見せる。そしてそこに関わる者たちも、主観が変わった途端にそれまで見えなかった様々な側面を見せる。そしてそれらの中心である被害者。彼女の存在は、天真爛漫で光り輝き、それを見る人を魅了する。同時に彼女の周りを囲む人たちを、様々な側面に分解していく。どちらの面から見てもプリズムとは彼女の存在そのものを意味している。
透明で見ることのできない光が、プリズムを通すことで7色へとその姿をあらわにする。本作では事件を通すことでその本性を明らかにしていく人間そのものを描いた作品と言える。真実が明かされないことに不満を抱く人もいるかと思う。だが、現実を極めようとすれば、真実、虚構が渦巻くこんな世界こそ真実そのものである。
紙の本
殺される理由
2003/03/20 22:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:里佳 - この投稿者のレビュー一覧を見る
事件が起こったとき、被害者を取り巻く人々は必ずこう言う。
「恨みをかうような人ではなかったのに」。
けれども、と思う。誰からも恨まれず、嫌われず生きている人間など、果たしているのだろうか。
『プリズム』で貫井徳郎が描こうとしたのは“意外な犯人”ではなかった。
子供のように無垢で、天使のように愛らしい。男も女も、大人も子供も、誰もが彼女に魅了される。被害者の山浦美津子は、人を惹きつけてやまない、そんな女性だった。いったい誰が、なぜ彼女を殺したのか? 美津子を取り巻く人々はそれぞれに推理を組み立て、それぞれに「真実」にたどり着く。誰からも愛されていたはずの美津子。しかし、語り手が入れ替わるたび、彼女の姿は天使になり悪女になり、読者を翻弄する。それはまさに光の変化、“プリズム”。
かくして浮き彫りにされるのは犯人ではなく、“被害者の意外性”。彼女自身も気づいていない、潜在化の悪意の存在なのである。
読後、胸に手をあててハタと考え込んでしまった。自分自身をプリズムを通してみたら、果たして自分の姿はどう分散されるだろうか。「殺される理由」を、知らぬうちに作ってはいないだろうか……?
紙の本
プリズム
2001/06/17 20:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一つの事件に対して、様々な視点で事件の解答が出される。どれが本当なのか、あるいはどれもが間違いで、真実は別のところにあるのか、判断は読者に任される。
元となるのはよくあるタイプの事件なのだが、こういう仕掛けがあると新鮮。でも後半の展開がそのまますぎる気が。もう少しひねりがあると良かったかな。