「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
紙の本
荒野に獣 慟哭す 完全版 スーパー伝奇バイオレンス (Joy novels)
著者 夢枕 獏 (著)
ウィルスを植えつけられ超人的な肉体を有する獣化兵が、失った自らの記憶を取り戻すべく壮絶な戦いを展開するバイオレンス巨編5巻を一冊にまとめた完全版。【「TRC MARC」の...
荒野に獣 慟哭す 完全版 スーパー伝奇バイオレンス (Joy novels)
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
ウィルスを植えつけられ超人的な肉体を有する獣化兵が、失った自らの記憶を取り戻すべく壮絶な戦いを展開するバイオレンス巨編5巻を一冊にまとめた完全版。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
夢枕 獏
- 略歴
- 〈夢枕獏〉1951年神奈川県生まれ。東海大学文学部卒業。「上弦の月を喰べる獅子」で第10回日本SF大賞受賞。他に「魔獣狩り」「キマイラ」「餓狼伝」各シリーズほか。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
弁当箱本は、京極夏彦の専売ではなかった。でもねえ、やっぱり10年前の獏は若かったんだよね。スーパーバイオレンスものは着眼はいいけど、あと一歩が
2004/10/21 21:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
あとがきを含めて993頁。全集を除く新書版としては、ギネス級のボリューム。単行本5冊分を、一つに纏めたもの。各篇のタイトルは「獣化の章」(1990年)「凶獣の章」(1993年)「獣王の章」(1997年)「鬼獣の章」(2000年)「獣神の章」(2000年)。それにあとがきがつく。ちなみに、今回のあとがき(2003年)には、各章となる単行本が出版された時のものがついているので、当時の獏の考え方もよくわかる。ただし、なぜか「鬼獣の章」のあとがきはない。「獣神の章」が次の月に出ているので、その関係かもしれない。
長い話なので、一部分の紹介をしても意味がない。これは、人肉を食することで、祖先の力を受け継ぐという今でもどこかにあるだろう習慣に、アメリカ石油資本の欲望、資源のない国日本の思惑、新しい兵器を探す同じく日本の企業、それを横取りしようとするアメリカをぶち込んだ小説である。
幕開けは、現代の日本。記憶を失った男は、自ら彼の妻京子と名乗る女から、御門周平という名であると告げられる。5Mの高さもある、返しがついた塀によって囲まれた建物に閉じ込められていた男。轢き逃げにあったという周平を見にやってくる五代医師。そして、ある日、閉じ込められた周平の食事のなかに、何者かの手によって鍵が。
5Mもある高さの塀を軽々と乗り越えることができた周平は、謎の男たちに終われる中で、自分が大脳病理学研究所所長の川畑総一郎の人体実験に志願した助手の竹島丈二であったことを知る。そして恋人は一ノ瀬京子。その実験とは、ニューギニアの奇病ウィルス独覚菌を脳に植え込むものだった。超人的な肉体と格闘能力を得た周平には、しかし発熱の危機が。
ニューギニアで男たちが罹るという病気、それは動物の名前で呼ばれる。そして、病人はその動物に似た動きをするという。そして、その動物以上の筋力、敏捷性などの能力を得るとも。しかしそれは大家族の中の家長だけが罹るという。
周平の前に姿を現す様々な男たち。超人的な薬師丸法山、打倒法山に燃える久能仁。土方重工業が造り出した13体の獣化兵、宮毘羅、伐折羅、迷企羅、安底羅、末因達羅、摩虎羅、真達羅、招杜羅、毘羯羅など。土方グループ総帥の妾の子供元、考古学者赤石浩介、五代文吉、市川勝。周平を姉の敵と付け狙う呪師チム、ラカンドンの男チャン・キン、フリーのディレクター輪島。
メッツァボック、アショカ、マヤの裔のラカンドン、メキシカン・マフィア、グラン・トレス、メキシコ政府、メジャー、ペンタゴン、土方グループ、メキシコの密林に人知れず眠るピラミッド、ケツァルコアトル、限られた資源、貧困からの脱却、信仰に生きる人々、欲望、民族の自立と、先進国による支配、文明の相克。
舞台は山梨、新宿、北海道、そしてメキシコ。前半は、思ったよりは内容が薄い。展開は早いものの、これを単行本で読んだ人は、その内容のあっけなさに驚いたに違いない。しかも、次の巻が出るまでは三年。その期待の巻も、展開の割に内容は薄い。日本における情景の描写が、かなり薄いのだ。それは舞台がメキシコにうつっても、さほど変わらない。描写が充実してくるのは最後の二巻分だろう。
これなら、4/5くらいは圧縮できるのでは、そんな気がする。特に密林の描写では、私たちは船戸与一の諸作や、中島らも『ガダラの豚』、古川日出男『13』、最近では恩田陸『上と外』などで濃密な描写に出会っている。そういう重量級のものとの落差が大きい。それから、メキシコのジャングルを日本人だけが闊歩するという設定に、何故かリアリティを感じない。読んでいて、獏が武道の達人に傾倒していることがよく分るのだけれど、その実像はどうも違うのではないか、最近はそう思うことが多い。だから、最後の呼びかけが虚ろに響く。もっと面白くなるはずなのに、そう思う。