紙の本
豪華絢爛、饒舌な文学史と、少女漫画による文学解釈の可能性
2011/03/05 16:27
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみひこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
久々に実に面白い、文学史を読んだ。
イラストの可愛さや、「乙女」という言葉に、
漫画で描いた解説書かと思って手に取ってみたのだが、
読み始めるとその内容の豊富さ、情報量の多さに、
かなり充実した時間を過ごすことになった。
この本の意図は、上代文学から始まって昭和の近現代文学
(万葉集から川端康成)までを、
「おじさん的解釈」では捉えきれないものとして読み解こうというもの。
従来唱えられてきた、文学史上の常識に、
茶々を入れるような形で、豊富な「異説」を次々展開している。
国語の授業や文学史の授業の面白さは、
本来そういうものだったのではないだろうか?
教科書の定説に対して、
いかに、現代の研究では違う視点ができてきたか、
という「新説」や、その論拠について教え、論議すること。
けれども、受験勉強だけで、「国語」について学ぶことを終えたり、
大学を出てしまうと、文学について知る機会は実に少なくなってしまう。
そんな立場にいる、元文学少女たち、
並びに、「文学」について議論をした若き日を思い出すあなたに、
ぴったりなのがこの本だ。
この本を読んで再認識したことなのだが、
日本の文学について、決して見落としてはいけないのが、
「漫画」の役割である。
少女漫画の著しい発展の元、海外や日本の名作文学を、
「漫画」で読んで育った人々はとても多いだろう。
翻訳や再話が一つの解釈であると同じように、
文学の漫画化は、一つの翻訳作用、
漫画家によるその作品への一つの解釈の呈示なのだ。
本書では、さまざまな漫画作者の作品を各章ごとに呈示して、
一つの文学論として漫画を読む可能性を示している。
例えば、上代文学の章では、
『万葉集』の中大兄皇子の長歌の解釈について述べている本文の他に、
そのページの一部に、
大和和紀の『天の果て地の限り』の一シーンが掲載されていて、
その作品の中で、その長歌を漫画作者がどう解釈しているのか、
が解説されている。
このようにして、作者の説の他にも、
異説としての漫画作品を読者は知ることができるのだ。
上代だけでも、この他に、美内すずえの『アマテラス』
野村美月原作、日吉丸晃作画『文学少女と美味しい噺』
長岡良子『初月の歌』が引用されていて、
少女漫画の世界の奥深さを痛感させられるのだ。
各章ごとに「週刊歴女」という、
イラストやら、当時の有名人による人生相談が載った頁があり、
当時の文学上のスキャンダルな記事を読む楽しみもある。
「特別読み切り」における、
かなりエロティックな、普段はあまり読まれない作品についての解釈、
例えば『我が身にたどる姫君』への解説とか、
後白河法皇の『梁塵秘抄』の読み解きが面白い。
さらに、「歌舞伎入門」もあり、実用的だ。
各章にはこの上、従来と違う「定家」像―ガテン系を書いたコラムや、
「江戸の女流画家」について解説したコラムなど、
豊富な知識が散りばめられ、豪華と云うしかない構成になっている。
近代文学の文豪たちへのBL的解釈、
現代文学者の中に潜む美少女としての自己など、
違和感を覚えるむきも多いかもしれないが、
これも又、新説として面白い。
欲を言えば、近現代の女流文学者が、
樋口一葉と岡本かの子だけというのが物足りない。
プロレタリア文学については、存在もしない様なのが残念だ。
乙女の視線でそのあたりを解釈したら、
いったい、どうなのだろうと思いにそそられる。
さあ、乙女たちよ、豪華絢爛、饒舌なこの文学史によって、
おじさんから文学を取り戻そう。
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乙女の日本史に第2弾が・・・・!!
クラスの女子に大好評だった第1弾。
これも期待できそうです!絶対買う!
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『乙女の日本史』第二弾、ついに登場!さよなら、おじさん目線の文学論。
教科書で習ったあの名作も、乙女目線で読み解けば新たな「日本」が見えてくる。「いままで私が信じてたのは“おじさん史観”だったのか!」と、「歴女」のみなさんに熱烈な支持をうけ、歴史読み物としては異例のベストセラーとなった『乙女の日本史』から1年。
第二弾は「日本文学」を乙女目線で読み解きます。
第一章 上代文学 アマテラスは男か女か?――『古事記』『日本書紀』ほか
第二章 平安文学 元祖・おひとりさまが嫌った「えせさいわい」――『枕草子』ほか
第三章 中世文学 乙女目線の文学批評の誕生――『無名草子』ほか
第四章 近世文学 男の娘(おとこのこ)が二人も大活躍☆――『里見八犬伝』ほか
第五章 近現代文学 美少女搭載おじさんモビルスーツ・谷崎――『痴人の愛』ほか
特別読み切り
・少女小説の「エス」の世界
・ヒロイン・ヒーロー像にみる近現代の男女観 ほか
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女性目線から書かれた日本の文学史に関する著書。ところどころに解説を加えたり、時代区分の終わりに読み切りようの文章を加えたりと、細かな配慮が行き届いていることがいい印象につながった。内容を見てもそれほど重くなく、文学をあまり知らない人や学生にも気軽に読めるものとなっている。文学のその多くが男女関係に関わるものであり、時代を問わず、人にとって恋や愛は永遠に尽きることのないテーマであるように思われた。今の恋愛小説や恋愛漫画ももちろんいいが、時にははるか古の男女の恋に目を向けてみるのもまた、乙な気がするものである。
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『乙女の日本史』がおもしろかったので、こちらも読んでみました。
日本史なのに文学?と思いましたが、つまりは文学史のことです。
『乙女の文学史』にしなかったのは、これから『乙女の日本史○○編』という本を続けて出していく予定なのでしょうか。
日本史よりもはじけていないような気がしましたが、もともと虚構の作品である文学に関わる人々を歴史的に紹介しているため、事実や伝承のみの日本史よりは、斜め読み的な斬新な見方に対する衝撃が少なかったようです。
日本史よりも文学の方が知っているつもりでいましたが、微に入り細に入った言及には驚くばかり。
著者は、相当文学に造詣が深いことが伺い知れます。
また、著者は自分のことを「著者」、掲載した作品の著者を「作者」と徹底して書き分けており、読者に対するスマートな配慮を感じました。
じっくり読んでみると、ためになることばかり。
箇条書きにしてみました。
今回も、大正浪漫風の装丁が素敵な一冊となっています。
「おじさん的視点」を目の敵にしているような書き方が随所に見られて、(すごく意識しているなあ)と思いましたが、そもそも「おじさん的視点を離れて乙女的視点から見つめ直す」ことがメインとなっているため、是非もないことなのでしょう。
今回も、とてもマニアックな知識欲を刺激されて、全般的に楽しめたので、ぜひ、関連本をこれからも出していってほしいと思います。
・かぐや姫にプロポーズし、大恥をかいた4人の求婚者には、奈良時代に実在した役人の名前が使われた
・源氏物語:愛情のあらゆる側面が描きこまれた、極めてシビアな恋愛描写は文学として世界最高水準
・紫式部のパトロン:藤原道長
・江戸時代:ヒゲを毛抜きで脱毛。平和な時代のご法度。大名は幕府に願い出を出さなければヒゲは許されず
・松平定信:八代将軍吉宗の孫
・徳川家斉:子供55人、全てシーボルトもびっくりの美男美女ぞろい
・葛飾北斎の娘、葛飾応為(おうい):父に「おーい」としか呼ばれなかったから。父の存命期だけ画家として活躍
・「東海道中膝栗毛」弥次さん50、喜多さん30、元恋人で二人の恋は冷めていた
お伊勢参りで人生リセット
・芥川:妻の純粋さと自分の汚さのギャップに苦しみ、頭のいい女性と不倫
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上代から近世までのオーソドックスな物語の豆知識的なとこから、裏読みまで。
いつの時代も乙女は禁断と妄想に明け暮れていたのだとしりました。
浦島太郎が官能昔話だなんて、知らなかった…
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確認先:稲城市立中央図書館
版元を東京書籍から実業之日本社に移籍して刊行した本書。結論から言えば、移籍しないほうがまだよかったのではないかという思いを強くする。学校教育へのアンチテーゼを唱えるならば、学校教科書を発行している東京書籍で出してこそ筋が通るものだ。移籍したことで、三流のムック本との違いを明快に出せなくなっている(惜しい部分ではあるのだが、一方ではそのくらいの浅はかさだったのだということを筆者が認めた格好かと)。
一方で堀江が主張する「おじさん史観」からの脱却というのは、かつて上野千鶴子らが鼎談の形で刊行した『男流文学論』(現在ちくま文庫で入手することができる)との親和性をうかがわせるが、『男流文学論』がフェミニズムと近代家族のパーステクティブから生まれた(男性作家が見る)女へのまなざしをあげつらうのに対して、本書は女のまなざしから見た男へのまなざしを過剰追認している部分が最大の相違点である。
そして、堀江自身の「男のまなざし」に対する自己批判がまったくといっていいほどないのは前著同様だ。多くの読者がそこまで指摘しないだろうという甘さ丸出しの部分の早期の改善を求む。
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日本文学からみる日本のエロの歴史…?
日本文学に弱いから読んでみた。
日本文学って全部エロだったのかと衝撃を受けた(この感想は間違っているだろうか
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「オジサン」的視点から見られていた文学を、みずみずしい柔軟な、新しい視点という意味での「乙女」的観点から読み解いた一作。
上代〜近現代までの代表的な文学作品を網羅した文学論になっています。
非常に面白かったです。
学校で習った基本的な知識があれば、あとはするする読んでいくことができます。
ただの読物としても楽しいですが、新しい視野を得ることができる作品としても、とても意義がある本だと思います。
特に、時代ごとの女性の地位や価値観、扱われ方に着目しながらの論展開なので、女性にとっては興味深いものかも?
なかでも、文学を読み解いていくことで、日本人の価値観は、昔も今もあんまり変わらない(特にサブカル的な側面で)というお話が印象的でした。
是非第一弾の乙女の日本史も読んでみたいです。
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前作「乙女の日本史」が面白かったので、購入。ただ、前作ほどのキレはなかった。筆の滑りが悪いというべきか。いずれの節も最後の言い切りが足りない。結局、どういうこと?と思うところも随所にあった。前作ではそんなことなかったのにね。
その理由ははっきりとはわからない。二番煎じだからか、期待しすぎたせいか、著者が本来、歴史よりも文学を専門にするゆえ、文学を勝手に切ることにためらいや「こう言い切るとニュアンスが…」みたいな懸念を持ってしまったのか。
もしかしたら、文学を切ること自体、難しいのかもしれない。歴史は、時代は違えど、人間のあり様を読み解くもの。文学は、作家がそれぞれに解釈、表現した人間を読み解くもの。読み解きの自由度にも制限が出てくるようにも思う。
このシリーズの面白さは、とかく、「小難しい」「えらいもの」と考えがちな歴史を、現代人的な“ぶっちゃけ”で切り、そこから「案外、昔の人も私たちと変わんないかもよ(笑)」と普遍化してしまうことだと思う。そのぶっちゃけの度合いが弱ければ、面白度も落ちる。読んでいる方は、学校で習う程度の歴史や文学の基礎知識は持った上で、それが裏切られ、ひっくり返されることをこの本に期待しているのだから。そこが足りないまま、「草食男子」だ「美少女搭載型モビルスーツ」だと当世風の俗語と結びつけようとしても、言葉だけが虚しく空回りするよね。
でも、次にまたこのシリーズが出たら買いますよ。今回はイマイチだったけど、この試みは好きなんで。
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斜め後ろくらいから観た日本文学解説?の本…なのかなぁ
今昔物語とか更級日記とか教科書でしか知らないのだけど、もう一度頭から読んでみたいと思った。
もしかしたらこの本きっかけで古典に興味をもつ女子たちが増えるかも?
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文学史を乙女視点で説く。漫画も充実。
日本文学も大好きです。でも、読んだことあるのは少ないし、タイトル聞いたことあるのがほとんど…。なので、軽く勉強できました。
著者の生涯なんかも載っていて面白かったです。紫式部と清少納言の因縁とか。いつの時代も女の戦いは熾烈です。
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「乙女の」シリーズ、「乙女の日本史」を読んでいまいちだと思ったんだけどなんとなく図書館で借りてしまった。
この人が言ってる「乙女」って何なんだろう。乙女ロードに通っちゃうような女子のことなのかなー。なんか特に共感するでも納得するでもなく、やっぱりイマイチなんだよなあ。「おじさん史観」っていうけど、「おじさん」て響きがなんかしっくりこない。ばっさり切りたいなら「オヤジ」とか「オッサン」でいいんでは。つか「くんずほずれつ」ってオヤジっぽいよ。
でも、古典読みたくなった!古事記とか。あと、表紙は可愛いね。
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この本を読んで、昔の方が女性の社会的立場がちゃんと確立してたんだということを知って、なるほどと思いました。
「女はいろいろなことが、ダメ~!!」ってなったのは、初めっからというわけじゃ、なかったんだね。
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前作と同じくエロっぽくて面白かった。下品さがないのが流石、乙女のと題するだけある。文学作品が読みたくなりました。