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著者紹介
橋田 信介
- 略歴
- 〈橋田信介〉1942年山口県生まれ。法政大学卒業後、日本電波ニュース社に入社。ベトナム、タイ等の特派員として活躍。88年退社後バンコクに拠点を移し取材を続ける。著書に「走る馬から花を見る」他。
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紙の本
テロ、内戦、動乱の戦場最前線での迫真のリポートである。今日本が平和路線を変えようとしている時にお勧めできる著書である。
2004/08/21 18:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みち秋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『戦争って、なんだろう』著者が少年の頃抱いた疑問が潜在意識となり戦場ジャーナリストを志した。それが著者の人生の重要テーマになり人生観を決定付けた。
この著書はベトナム戦争、カンボジア内戦、湾岸戦争、ボスニア戦争等の単なる戦場記事でもなく反戦記事でもない。過酷な戦場体験に基づく冷静で緻密な判断で戦争観を語っている。その戦争観が強力な説得力で胸に迫ってくる。
なぜ人間は戦争をするのだろうか?
『人間は生まれながらに争いを好むものかもしれない。だから大きな戦争にならないようなシステムが必要だ』と戦争性悪説を肯定しながらも、『願わくば性善説に世界中が転向すれば、地球上から戦争はなくなるかもしれないがそれは夢のまた夢である』と表現している。残念ながら人間が存在する限り戦争は絶えることはないのである。
戦争の原因は種々あるが、実際に実行するのには軍国主義者だけでは起こしえない。多数の国民の了解の下で成立する。この暗黙の了解が最近国内でも起きている。イラクへの自衛隊派遣と国連多国籍軍への参加である。本当に戦争を反対するならば『イラクへの自衛隊派遣反対』『国連多国籍軍への参加反対』と主張すべきであろう。しかし反対の声は大勢に流され余り聞こえてこない。大勢に逆らい流れを変えるのは今も昔も大変難しいようである。このようにして暗黙の了解がされ戦争へと踏み出してゆくのであろう。
国民を戦争に引き込み、支持了解させるにはメディアが大きな役割を果たしている。マスコミは戦争の便利な道具である。最近のイラク戦争で米英がとったマスコミ戦略を見ても明確なことである。
『現在の日本のマスコミは事実も真実も伝える力はない。読者、視聴者に迎合され部数、視聴率拡大に走った結果肝心なことが報道できなくなってしまった。』 と著者はマスコミを痛烈に批判している。裏を返して言えば日本のマスコミは容易に戦争の道具になりうるということである。
結論として著者は戦争を擁立するのは、『得たいの知れない何か』であると抽象的な言葉で結んでいる。著者はこの抽象的な言葉を読者に問いかけているが、平和ボケした今の大多数の日本人には明解な回答は出せないであろう。
憲法改正、多国籍軍への参加、等で『得たいの知れない何か』が急迫しつつある。 政府与野党、国民、マスコミは静観の状態で、非常事態とも言える状況下にあるように思える。
未曾有の経済発展と繁栄を謳歌している現在の日本を、将来懐かしむことのない様に国民一人一人が戦争について真剣に考える必要がある。戦争に踏み込む前に考える今が最後のチャンスかもしれないことを示唆する著書である。
* 最後に2004年6月バクダッドの襲撃事件で亡くなられた著者橋田様と甥の小川様のご冥福をお祈り申し上げます。