紙の本
社会って大事かな
2009/09/16 23:00
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トマト館 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつの間に、こんなに社会とか普通を、
気にするようになったんだろいう。
社会的にこうあるべき、
普通でいたい、と。
わたしも、この主人公とおんなじだ。
それを気にしすぎて自分が実はどこにもないときがある。
そして、自分で気付くか気付かないかに関わらず、
そういう人は多いのではないでしょうか。
みんなそうよ、といわれると気が楽になる。
みんながどうかなんて、楽になる理由に本当になるのかな。
この主人公には、「みんな」とは明らかにちがう、
部屋から出ない姉がいて、
普通ではない人と旅先で出会う。
主人公自身も、職場で泣いて、仕事を辞めて旅にでているという人。
いいではないか。
自分にそっと声をかける。
それを誰かに言いたい、とも思い、
誰かに言われたい、とも思う。
そういう気持ちに、正直でありたい。
自分はどこにいて、
なにがうつくしい、人なのか。
それを考える本だと思います。
紙の本
開けない夜はない。 闇が深ければ暁も近いのだ。
2023/07/23 15:35
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投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分で自分を追い込んでしまう主人公の百合。突発的に会社を辞めてしまった彼女は、美しい海が一望出来る離島のホテルへ旅立つ。
百合の内面がこれでもかこれでもかと描かれる。
読んでて、こちらが痛くなるくらい。
様々な縁に紛動されて、自分で自分を追い詰める彼女だが、人との出会いも彼女を導く何かがあるのも面白い。
文庫の巻末に収められた女優のともさかりえとの対談も素晴らしい。
「自分で不幸になれるんやったら、自分でも幸せになれるんだ。トンネルが長い人とか、うぅーって悩む人ってやっぱり、パワーがある人やからね」
開けない夜はない。
闇が深ければ暁も近いのだ。
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人目を気にしすぎる人の話。
多少は気にした方がいいけど、
ここまで周りが気になってしまうと生きにくそう。
途中かわいそうになった。
舞台になっているホテルのような所に泊まってみたいなあ。
本の墓場で1日くらいだらだら過ごしたい。
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「明るい未来」を想像できなくても、「今」を必死に生きなくても、思い出、があれば、ぐんぐんに進むことができるのです、私たちは。すげー。
自分が、だれにどう思われるかじゃなくて、ただただ自分でいるということ。それが、楽な気持で生きていくためのコツ。
もう一つ、海のように、毎日変わらずにそこにある(と思われる)ものでさえ、天気や、気持ちによって、まったく違って見えることもあるということ。つまり、自分だって、日々違っていて当たり前だということ。
嬉しい日も、下ばかり見てしまう日も、何もかもどうでもよく思えちゃうような日も、すべてがきらきらしてる気がする日も。
日々、違っていて、いいんだ。
というか、それが、当たり前なんだ。
つまり、あるがままに、心のままに。
そのままで、十分なんだよ。
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自分の事を他人が見るように冷静に分析しようとし、その行為が益々自分を追い込み、どんどんおかしくなる。
主人公百合はそんな女性。
心を病んだ姉との関係から必要以上に"自分を見つめる「もうひとつの眼」"を欲して生きてきた。
自分がこんなにも必死に殻をまとって生きているのは、その姿を姉に見せつけたいから。
外の世界を一切受け付けず引きこもって生活している姉とは違う。
自分はこんなにも要領よく立ち回る事ができるのだ、と安心したいから。
しかしそんな生活は長くは続かず、百合は会社を辞めて旅に出る。
そこで出会ったおかしな半人前(けど中年)バーテンダーの坂崎とドイツ人の青年マティアスとうだうだ話すうちに、百合は自分らしさを取り戻していく。
前半のぐだぐだした暗さが少し私は苦手だった。
後半の訳のわからん明るさが西さんらしく、終わり方はよかったと思う。
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自分を見失った女性が旅にでて、そこで出会った風変わりな白人の若者や中年のバーテンダーと関わるうちに癒され、再生していくまでを綴った物語。主人公が泊まったホテルは、実在するホテルをモデルにしたそうです。
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他人の苛立ちに敏感で「空気を読みすぎ」ている主人公が、会社を辞めてやってきた瀬戸内海のある島のリゾートホテルが舞台。
きれいな日本語を話すドイツ人と、ミステリアスだけどちょっとどんくさそうなバーテンダー。この二人との交流で主人公は少しずつ回復していきます。
そして、ホテルの中にある本の墓場のような図書室で3人はある写真を探そうとします。
この主人公の焦りや、他人に対する恐怖感、というのは誰もが少しは感じているものではないかと思います。
とくにわたしは主人公に感情移入して読んでしまったので、その傾向が強いんだろうなーと。
最近はここまで追い詰められた気持ちになることはないけれど、それでも時々どうしようもなくなってしまうときに、主人公のように回復を待つ場所があればいいな、と素直に感じました。
息苦しく感じている全部のことに、さよならを。
そして、自分が思うよりずっと、事態は簡単に単純に進んでいること、がわかる作品です。
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暗かったためかなかなか読み進まなかった。
西さんは「ミッキーかしまし」の意外なおもしろさの
イメージが拭いきれず。。。
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読み始めて、重い。暗い。神経質。
そんなイメージを持ったのですが、西加奈子さんの紡ぎ出す文章がとても好きなので、つらつらと世界に引き込まれ。
お話の中に出てくる登場人物ひとりひとりが愛おしく感じ、
読みきった後は、素敵な読後感でした。
まわりの目を気にしすぎて、「自分」というものが分からなくなった主人公百合。
共感できるところ、たくさんありました。
単純に、お金持ちの親がいるということがうらやましく、私も、リッチな島に5日間滞在しているような、ゆるやかな気持ちになりました。
☆気になったぶぶん。
母親に、それが「人生」というものだからと言われ、男の子らしく友達とサッカーに興じ、酒を飲んで冗談を言い、肩を叩き合って、女に恋をした、ような気になる。でも、心のどこかでは、いつも「これで合っているのか?間違っていないか?」と思っているマティアス。誰かに答えを聞かないと、不安になる。合っている?間違ってない?
周りのするようにし、周囲から浮かないように、社会からはみ出ないように、「普通」の生活を送る努力をしている私。
美しい、とは、何なのだろう。
姉の「美しさ」は、何なのだろう。
それは私を、いつも悩ませた。壊してやりたいという欲望をかきたて、そう思った次の瞬間、私を心底惨めにさせた。
姉のように、ただ「自分」であり続け、その「自分」の欲望に従って生きること、それが美しさなのだろうか。ならば、私はその美しさを持つことは、永遠にできない。私はきっと、姉になりたかったのだ。
姉たちの持つ「美しさ」に憧れ、決して手に入れられないものだと分かっていたからこそ、私は彼女たちを傷つけたかった。誰かに決められた「自分」であっても、それが私にとっての、すべてだった。姉のいる世界にいるための、すべてだった。
姉の美しさを決めたのは、私の卑屈な心だ。姉が私に「自分は汚い」と思わせていたのではない。姉は、ただそこにいただけだった。ただ、私の、「姉」だった。そして今も、彼女は、私の姉だ。それだけだ。
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裕福な家に育った百合。ひきこもりの姉を持つ。姉は"うつくしい"人。上手に生きることができなかった。百合は人の目を異常に気にしてしまう女性だ。まず相手がいる。他者にあわせる。目立たない。そんな彼女、仕事中のちょっとした出来事をきっかけに勤め先を辞めてしまい、瀬戸内海にうかぶ島のリゾートホテルへ向かう。〜飛行機のなかの中年女性たちの傍若無人ぶりは共感を覚えた〜。そこで過ごす数日の出来事がこの本のストーリー。バーのちっともそれらしくないバーテンダーの坂崎、一日中ホテルの中庭で死んだように寝転んでいる正体不明の外国人マティアス、彼らは何者で、これから何が起こるのか。終わり方、終わらせ方がよくわからない。西さんの他の本も読んでみたい。
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世界は 思ったよりも優しくできていて
それに一瞬気づくと とても強い風が吹く
そのあと やんわあり 笑いたくなる
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自意識過剰なところが私によく似た主人公。
とても、ひとごととは思えない。
すっきりする瞬間が良かった。
楽しい!楽しい!にたどり着くまでが大変。
それがよくわからなくなる、時々。
人生はそんなに悪くない。
マイナス側にいて、自分の不幸に酔うほうが楽。
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吸収すること、身につけることだけが、人間にとって尊い行為なのではない。何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ。
(P.204)
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2009年5月18日読了。
「普通」ってなんだろう? 「まっとう」ってどういうことだろう? 以前から気になっていて、これらの言葉を使うときにはいつも考えてしまうんですが、この本を読んでやっぱりものすごく考えてしまいました。その答えは、まだはっきり見つかってはいないけれど、「一般的」という言葉の意味に近いのかな、という感じ。でもその「一般的」なことって、そこまで強要されるものなのだろうか? とまた考えてしまう。
主な登場人物3人は、とっても不器用でぎこちない。社会的には、変わってる人、なのだろうと思う。
語り手である主人公<私>、蒔田百合32歳、瀬戸内海の島にあるリゾートホテル内のバー「アカシア」で働く坂崎42歳、このホテルで出会った、イギリスに住むドイツ人のマティアス24歳。この3人は、ずっと、周りから浮かないように、まっとうな生活、普通の人生、を送る努力をしています。「こうしなくちゃ、それが普通だから」と。そのせいで常に緊張していて、周りに見せるのは偽りの自分。だから精神がゆがんでいってしまう。3人は<不完全で、いびつな人間>だからこそ、お互いにいっしょにいて安心できるし、屈託なく話せるのです。
はじめは、百合がとにかく本当に<人の機嫌を窺い、苛立ちや非難に敏感>で、すぐベッドに潜りたくなってしまう人なので、仕方のないことだとはわかっていても、やっぱりわたしも読んでいて苛立ってしまいました。ところが、薬を飲みすぎてしまう35歳の姉の呪縛に苦しみながらも、この瀬戸内の島のホテルで坂崎とマティアスに出会い、心から百合が楽しいと思えるようになってくると、そうだ、がんばれ百合! と握りこぶしをつくって応援していました。もちろん同時に、坂崎とマティアスのことも。
この3人の不器用さは、社会に適合できないくらい「普通」ではないということになるんだけども、個人として見ると非常に魅力的なんです。3人ともすごくいいやつなんですよ。マティアスなんてホントかわいいし。だからこそとてつもなく悲しいんですね。魅力とも言える部分なのに、一般社会では「みっともない、恥ずかしい」という気持にさいなまれ、いたたまれなくなってしまう。これはまさしく<重い>、苦しいことです。
でもそれが、3人がここで出会うことで少しずつ変わっていく。気づかぬうちに、お互いに救い合っているのです。読了後、この3人こそが「うつくしい人」たちなのだと思い、泣きたくなるくらいうれしくなりました。
……ううむ、いい小説です。つくづく。
「どうでもいい」と思えることが、幸せへの一番の近道なのかもしれません。
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読み始めてみたら予想以上の重さ。
こんなに全てをネガティブに捉えていたら、
身が持たなそうだ...
でもそんな気持ちも分からなくもなかったり。
特に多感な頃は人の目や評価が気になったりするものね。
でも自分は自分、それ以外の何者でもない。
少しずつ立ち上がって行く主人公の姿に思わずほっとし、
そして笑顔になります。