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孤立の社会学 無縁社会の処方箋
著者 石田 光規 (著)
かつてない程の高まりを見せている連帯への不安。孤立を焦点に据え、そこに潜む社会構造上の問題をあぶり出すことにより、日本社会の連帯の実情を検討する。【「TRC MARC」の...
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孤立の社会学
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商品説明
かつてない程の高まりを見せている連帯への不安。孤立を焦点に据え、そこに潜む社会構造上の問題をあぶり出すことにより、日本社会の連帯の実情を検討する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
石田 光規
- 略歴
- 〈石田光規〉1973年生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学(社会学博士)。大妻女子大学人間関係学部准教授。著書に「産業・労働社会における人間関係」がある。
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この指とーまれ
2012/02/08 23:38
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2010年1月31日に放送されたNHKスペシャル「無縁社会-“無縁市”三万二千人の衝撃」の社会的影響は大きく、「無縁社会」という言葉が広く認知された。この「無縁社会」について、著者は社会保障システムではなく、人間関係上の問題として語られるところに疑問を抱いた。そこで様々な客観的データをもとに、感傷を組み入れることなく分析することで、孤立という問題についての取り組む必要性を感じ、本書にまとめた。
著者はまず日本社会の人間関係についての意識分析を行う。その結果、戦争以前の閉鎖的・硬直的な社会関係からは脱却しつつも、夫婦中心の性別役割分業家族の存続と戦後の日本型経営システムという社会関係の構築を目指したことを指摘。個人としてのある程度の自立と集団の中にいるという安心感を享受しようと模索したというのだ。しかし、世の中そんなに都合よくはいかない。
本書は孤立を「行為者にとって頼りにする人がいない状態」(173頁)として議論を進める。そして、純粋なデータ分析により抽出された傾向を示している。人びとの孤立傾向は、離死別、無職、低学歴、不健康、男性、高齢社という順にみられたという。また、家族・親族は情緒的サポート関係の中にあるが、それは離死別による喪失感が孤立を生み出すことの裏返しでもあるようだ。さらに、家族外の社会活動は孤立に何の影響も及ぼさないが、婚姻形態は強く影響するとのこと。
孤立の背景には様々な要因があるため単純化して語ることは避けなければならないが、家族や親族に情緒的サポートを求める傾向がいまだに強いことは予想外だった。ただ、この関係も永続するわけではなく、うまく更新し続けなければ誰もが孤立状態に陥ることを本書は示している。つまり、家族・親族だけを精神的支えにすることは、非常な危険性をはらんでいると読み解けるのだ。しかし、それは孤立という問題を解決するヒントとも言える。
家族・親族という関係に過度に頼ると孤立への転落の危険性が高まる。ということは家族・親族という枠を拡大させればいいのではないだろうか。つまり、家族・親族で留まっていたサポート枠を家族ぐるみまで展開させ、さらに地域ぐるみに拡大する。これは社会システムの構築だけではどうにもならないし、個人の努力にだけ委ねるわけにもいかない。
以前は醤油の貸し借りも隣近所なら行っていたという。高度経済成長は豊かな経済的生活を与えてくれたが、情緒的関係を貧困化させてしまった。孤立という社会問題は、戦後日本が歩んできた方向性が誤りだったことを教えてくれている気がする。ただ、『20世紀少年』のように過去にしがみつく“ともだち”にはなりたくない。全てを都合のいい時代まで戻せるわけはないのだが、個人の自由に多少の犠牲を強いても集団の繋がり方を模索する必要はあるのかも知れない。昨年来「絆」が日本全体のキーワードになっている。「絆」という言葉の意味とそれがもたらすプラス面とマイナス面を改めて考える時期に差し掛かっていると感じた。