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商品説明
著者自身が厳選した待望の著作集。芥川賞受賞の畢生の傑作「杳子」のほか初期の名作「妻隠」「行隠れ」「聖」を収録—。感覚と知覚の揺らぎ、過剰と欠如、重く鋭利な文体、エロティシズムとユーモア、愛の可能と不可能…常に新しい読みを促す、古井文学の原点。【「BOOK」データベースの商品解説】
感覚と知覚の揺らぎ、過剰と欠如、重く鋭利な文体、エロティシズムとユーモア、愛の可能と不可能…。芥川賞を受賞した「杳子」のほか、初期の名作「妻隠」「行隠れ」「聖」を収録。朝吹真理子による解説も掲載。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
杳子 | 5−96 | |
---|---|---|
妻隠 | 97−145 | |
行隠れ | 147−315 |
著者紹介
古井 由吉
- 略歴
- 1937年東京生まれ。東京大学独文科修士課程修了。71年「杳子」で芥川賞受賞。83年「槿」で谷崎潤一郎賞を、87年「中山坂」で川端康成文学賞を、90年「仮往生伝試文」で読売文学賞を受賞。
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紙の本
舌なめずりしながら女を書き犯す文学者
2012/04/24 20:55
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
全8巻の刊行が開始された本シリーズであるが、第1巻の本書では1971年に発表された「杳子」「妻籠」、72年の「行隠れ」、76年の「聖」という著者の初期の代表作が収められている。
「杳子」では、山登りの途中で偶然行き悩んでいる杳子と知り合った男性の視点で、精神の病に冒された若い女性との神経がひりつくような激烈な交渉を描いて読者を圧倒する。なんといっても凄いのは著者の女性心理をレントゲンで透視するような鋭い観察眼で、障碍に苦しむ杳子の奇妙な行動や立ち居振る舞いを微細に冷徹に散文に定着する作家の筆の冴えは、ほとんど偏執狂に酷似する。
ただし本書86ページ上段最終行の「まるで自閉症の女みたいに、何を言われても、そっくり同じ表情で、同じ返答を依怙地にくりかえしている」という表現は、この障碍の本質の完全な誤解に基づく表現なので版元は一刻も早く訂正するか削除して欲しい。
5つの短編からなる「行隠れ」は、両親と2人の姉で構成される山方家の人々を、主人公である弟の康夫の視点で描いた連作小説である。
「その日のうちに、姉はこの世の人でなかった」
という冒頭の謎めいた1行に導かれた読者は、たちまち物語の底知れぬ深みに向かって墜ちてゆき、最後の1行までうむを言わさず読まされてしまう。これぞ昭和日本文学が打ち樹てたロマンの金字塔であり、全ての読者が小説を読むことの恐ろしさと楽しさを満喫するだろう。
ところがその「行隠れ」よりも物凄いのが「聖」の世界で、ここでは東京から迷い込んだやさぐれ中年男が、村に先祖代々伝わる聖なる放浪者サエモンヒジリの衣鉢を継ぎそうになる話だが、ここでも村の女との蛇がうねうねでんぐり返るような交情が異彩を放つ。げに古井由吉とは、舌なめずりしながら女を書き犯す文学者である。なお朝吹真理子とかいう小説家が、「史上最低の解説文」を書いているので、これまた必読ですぞ。
やよ古井由吉。君は舌なめずりしながら女を書き犯す文学者也 蝶人
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仮往生伝試文よりは
2020/04/29 15:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆみこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
仮往生伝試文を読んだあとだったので、比較的読みやすかったです。冒頭の違和感を我慢して読み進めるとその先で繋がっていたことが見えてくる感じは、ぶれない古井由吉らしさといった印象です。