紙の本
科学的に、そして話題豊富。
2017/05/14 20:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たまがわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は当たりだ。
全体として、極めて科学的な態度で貫かれている。
そしてユーモアもあり、読みやすい。
様々な話題が豊富に紹介されている。
第2章の薬物依存についての話が面白かった。
コカインやアンフェタミンなどの興奮剤のみならず、アルコールのような鎮静剤、
ヘロインなどの麻酔剤、そしてニコチンや大麻など混合的な作用を持つ薬物、
これらがみな、結局のところドーパミン放出に関わっていて、それによる快感が大きいということらしい。
しかし、LSDやメスカリンといった大半の幻覚剤やバルビツール酸などの鎮静剤の多くは快感回路を活性化しない。
つまり、向精神薬においては、快感が中心となるものは一部であって、すべてではないという。
第3章の肥満と食べ物依存についての話も興味深かった。
様々な角度から過食などについて分析されていて、面白かった。
第4章が性的な脳の話。
多くの種類の哺乳類が、オスもメスもマスターベーションをするとか、
同性愛行動も同様に多くの種で見られるとかいった話は、全然知らなかった。
これらの話は具体例が色々と紹介されている。
もちろん、人間の性と脳に関する考察も行われている。
第5章がギャンブル依存症の話。
紙の本
「気持ちいい」ことの光と影
2012/09/19 17:03
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
さまざまなものが人間には「快感」を感じさせる。本書ではそれらのほとんどが脳内の「快感回路」ともいえるものにつながっていることを豊富な事例で説明し、「依存症の機構」や「快感を感じる意味」を考える。原題はTHE COMPASS OF PLEASURE。Pleasureにもcompassにもいくつかの意味があるので、日本語の単語の意味よりは広く考えたほうがよいだろう。副題も原題は「油っこいもの、マリファナ、運動、ギャンブルや勉強などはなぜ素晴らしく感じられるのか」というもので、全体としては「快」となるものの脳内作用機構を説明する本である。日本語の副題は、著者の関心の一つである「依存症」にあるというところを強調したのだろう。
さまざまな種類の「快感」の機構を明らかにする実験の話が豊富である。わかりにくいものはあまりなく、どの「快感」にも共通する脳内の機構があるらしいことがよく伝わってくる。しかし、ここまで実験の細部を説明しなくても、と思われるところもあったのが正直な気持ちでもある。
依存症については、まだわからないことも多いと正直に書かれている。それでも薬物による治療などもずいぶん進んでいるのは、本書にまとめられた研究などの成果といえる。脳内の機構に影響する薬物で治療効果があっても、ほかの脳の機能にも影響がでてしまう可能性は消せないことなどは重要な指摘として知っておく必要があることだと思う。
人間はなぜこんなにも多くのものに快感を感じるようになったのか。著者は人間の柔軟な性質の表れだと論じる。この柔軟性により、ヒトは適応し、発展もしてきた。しかし良い面もあれば悪い面もある。悪い面の一つが生きることに直接関係のないものに感じる快感であり、それへの依存症である、という著者の意見は耳を傾けるに値するだろう。
「快感」というテーマなので、扱うものの中には「興味本位」で読まれてしまうようなものもないとはいえない。しかしそういった、ある意味「きわどい」テーマを通して人間の本質を考えさせる著者の力には敬意を表したい。
紙の本
中毒やら、依存がなぜ起って、なぜ止められないか?
2016/11/17 03:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オカメ八目 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中毒やら、依存がなぜ起こり、なぜ止められないのかを、「脳科学」を使い、より具体的に判り易く解説してる。
投稿元:
レビューを見る
デイヴィッド・J・リンデン (著), 岩坂 彰 (翻訳)
恋愛と性的興奮はまったく別物?ダイエットの失敗は意志の弱さのせいではない?ギャンブルは結果が出るまでの待ち時間がいちばん気持ちいい?セックス、薬物、アルコール、高カロリー食、ギャンブル、ゲーム、学習、エクササイズ、ランナーズハイ、慈善行為、瞑想…最新科学でここまでわかった、快楽と依存の正体。気になる科学トピック満載。
投稿元:
レビューを見る
様々な快感が、脳内でどういうプロセスで生成されているかを知る事ができる貴重な一冊。生理学が多々出てくるが興味ある内容なので最期まで読むことが出来た。
投稿元:
レビューを見る
【再読】
「VTAのドーパミン・ニューロンの活性化」
・・・・
何となく、わかったような気がしたが、
難しい!
投稿元:
レビューを見る
要するに、脳が快感物質を出すシュチュエーションを紹介し、それが依存症にどう関わっていくかという事も書かれていて興味深い本だった。
でも、この本で一番ショッキングだったのは、昔の科学実験が、精神患者の脳に電極差し込んで直接電気流すだの同性愛者を異性愛者に変えるために脳をどーのこーのだと大概ムチャだった事だ(いや、現在も行われているものもあるのだろうか?)
性的な反応に対する実験についても記載されてるのだが、本にも書かれていた通り、あまりに特殊な実験なので、実験参加者も嗜好が偏った人間しか集まってないんじゃないのかと思えてしまう。本当に平均的なデータを取るのは難しそうだ。
投稿元:
レビューを見る
ドラッグ、アルコール、高カロリー食、セックス、ギャンブル、その他神秘体験や慈善行為、エクササイズに至るまで、さまざまな刺激がもたらす快感を支える脳内のニューロンレベル、化学物質レベルの変化と依存症についてのお話。すぐ役に立つ内容ではないが、それなりに面白い。
投稿元:
レビューを見る
脳が快感を得る仕組みの研究を、薬物依存、食欲、性欲、ギャンブル依存に分けて紹介。そしてランナーズハイや痛み、瞑想についても解説。
解剖学的には腹側被蓋野(VTA)のドーパミンニューロンが活性化するということ。ドーパミンの放出を増やすかドーパミンの再取り込を妨げることで快楽が増す。
ランニング中に血液中のベータエンドルフィン濃度が上がるが、脳関門を通過できないので直接にランナーズハイの原因とはならない。オピオイド、エンドカンナビノイド等が候補だが結論はまだとのこと。
投稿元:
レビューを見る
偽善依存症…なんて書いてありません。思いついたんです。
ランナーズハイはそう簡単にみんなが感じるものじゃないっぽいですが私は割と頻繁に感じますよ。
投稿元:
レビューを見る
依存はより良く生きるための進化の副作用である。これを消し去る事は叶わない。何故ならば生きる事に直結しているから。化学物質が原因の場合も多いがで、対処は薬に頼るものではなく、生活習慣を変える事が肝要である。何故ならばその仕組みは複雑な組み合わせであり、一つの原因だけの結果ではないからである。
投稿元:
レビューを見る
著者はジョンズ・ポプキンス大学医学部教授で脳神経学を専門としています.
また、脳神経学の一般への解説にも熱心で、本書の他に「つぎはぎだらけの脳と心」と言う本も執筆しています.
この様な経歴の持ち主である著者による本書、題名からも想像がつくように「快感」がテーマです。
全7章からなり、冒頭の1章で人を含めた生物の脳内において快感を与える「報酬(快感)回路」が発見された経緯を解説し、
以降、2章から6章までで薬物、食欲、性欲、依存症、ランナーズハイなどの快感について解説、最終章では、今後の脳神経学の発展の見通しを述べると共に「脳神経学の発展により、人間が思いのままに自己の脳内を操作できる様になったら」と言う前提に立った思索を行っていました。
尚、本書で解説されている「報酬(快感)回路」は以下のようなものです。
快感に深く関係している脳内組織・腹側被蓋野(VTA)。
これが快感を引き起こす何らかの刺激を受けた結果、VTA内にあるその刺激に対応するニューロンが強化され、脳内の構造が変化する。
刺激と快感の時間的間隔が短く、かつ短時間のうちに繰り返し刺激を受けるとその刺激の依存症になる。
上記2つの条件が揃うのであれば、依存症は薬物だけでなく、食事、セックス、運動、社会的評価など人間が心地良いと感じる全てから引き起こされる。
依存症治療薬は「VTAの快感回路を動作しないようにする」と言う戦略に基づき開発が行われていた。
しかし、この戦略に基づいて開発された治療薬には(快感回路が動作しにくくなった為)うつ病になったり、自殺する可能性が高くなるという危険な副作用が現れた。
この他にも、以下のような過去の偉人たちの薬物依存を紹介したり、
古代ローマ帝国の五賢帝の最後の皇帝、マルクス・アウレリウス・アントニウス帝はアヘン依存症
アレクサンドル大王はアルコール依存症
鉄血宰相ビスマルクはランチにワインを2本空け、夕食には少量のモルヒネを使った。
「ヘロイン注射を試した人のうち35%が依存症になるが、タバコの場合は80%が依存症になる」と言った豆知識的にも使える解説がなされていました。
ギャンブル依存、薬物依存、セックス依存、肥満(食物依存)・・・
本書によれば、(どんな依存症であれ)一度依存症になると脳内の構造が変わってしまう為、依存症から抜け出せないのは「本人の意志が弱いのが悪い」とは断言できないとの事。
しかし、だからと言って患者本人は完全に無力という訳ではなく、
・依存症のメカニズムを知る
・他の¨快感¨で心を満たす
等の行動が取れるそうです。
本書でも記載がありましたが「脳について分かっていない事」が沢山あります。
しかし、分かりかけてきた事も沢山あり、それらを解説した本書を読むと依存症等に対する理解が進み、「依存症になるのを回避する」「依存症の人への適切な対処方法の理解」等の点において役立つ知識��身につくのでは無いでしょうか。
解説の面白さも然ることながら、実用という側面からも良著である本書。
お時間のある時にでも一読をおすすめします。
投稿元:
レビューを見る
人が快感を感じるとき、そしてその快感につながる依存症に陥るとき、
脳内のニューロンレベルで何が起きているかに焦点を当てた本。
実に興味深い内容出会ったが、この分野ではまだまだわかってない
事のほうが多く、必然的にこの本もどこか物足りない感じに終わって
いるのが残念。
脳についての研究はまだまだこれからという感じなのかもしれないな。
投稿元:
レビューを見る
第1章 快感ボタンを押し続けるネズミ
第2章 やめられない薬
第3章 もっと食べたい
第4章 性的な脳
第5章 ギャンブル依存症
第6章 悪徳ばかりが快感ではない
第7章 快感の未来
投稿元:
レビューを見る
ネズミに砂糖水を与えると、快感回路が反応する。次にあるボタンを押さないと砂糖水が出ないことを学習させると、ネズミはボタンを押した瞬間に快感回路が反応して、そのあとの砂糖水では快感回路は反応しなくなるそうだ。これはネズミだけでなく人間も含むいろいろな動物で共通らしい。ちょっとショックだった。やはり砂糖水で一番快感を感じたいと思う。それから中毒症状になっている人は快感回路がにぶくなっているのだそうだ。だから例えばアル中の人はお酒を飲まないと苦痛なのだが、お酒を飲んでも、テレビのビールのコマーシャルのようにプファー!って感じで美味しく感じることはないらしい。そういえば、「バーフライ」というアル中のカップル(ミッキーロークとフェイ・ダナウェイ)の映画をずっと前に観たけど、ほんとうにおいしくなさそうにお酒を飲んでいたっけ。