紙の本
ヒトラー
2014/03/27 20:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Maki - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻で、勘違いが、勘違いを呼び、ついには、YouTubeでアクセス数70万回を超えるほどの超人気者となった”ヒトラー”が、現代生活や最新技術に奮闘しながら、周囲の人々に頼りつつ、支持を集め、もう一度政治の世界に踏みこもうとする・・・・ところまでを、下巻では描いている。
人気者となったヒトラーが、下巻では、さらに、人間味あふれ、魅力的な人物として描かれていく。
ユダヤ人を祖母にもつ女性とのやり取りは、生前の、いや、かつてのヒトラーもそう考え、発言をし、人々の支持を集め、その結果、政権を掌握したのであろうと思えるものであった。
「ユダヤ人の事は冗談に出来ない」
正しく、彼にとっては、真実そうなのだから・・・。
読み進めるにつれ、彼に共感し、彼と同じ目線で見ている自分に気がつき、我に返って考えさせられる。
これこそが、著者が、ヒトラーを人間味あふれる、魅力的な人物として描いた理由なのであるが。
著者は言う
「人々の多くは、自分の精神衛生のため、彼(ヒトラー)を一種の怪物として解釈してきた。
(中略)だがそこには、人間アドルフ・ヒトラーに人を引き付ける力があきらかにあったという視点が欠けている。
人々は気の狂った男を選んだりしない。
人々は、自分にとって魅力的に見えたり、すばらしいと思えたりする人物をこそを選ぶはずだ」
と。
「ヒトラーを怪物に仕上げるだけでは、なぜあの恐るべき出来事が起きたかの真の理由はわからない」
というのが、著者ヴェルメッシュの見解だ。
実は、私は著者と同じ見方をしている。
真の理由を知りたく、真の理由に少しでも近づきたく思い、ヒトラーやナチス関連の本を多く読む。
この本は、あくまでも小説なので、真の理由はわからない。
が、読みながら、彼に共感し、彼と同じ目線で見ていたことにより、かつての支持者たちの感情を、心情を、
感じることが出来た様に思う。
紙の本
今の時代だからこそ
2022/10/01 18:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者自身も1960年代生まれとホロコーストを知らない世代なんですね。かつてチャップリンが映画「独裁者」で訴えかけたような、力強いメッセージが根底にありました。
投稿元:
レビューを見る
ファンタジーというべきか、風刺小説というべきか。エンターテイメントとして、とにかく面白く読み終わりました。今のドイツの雰囲気を知る勉強になりますが、ドイツのことをもう少しよく知っていたらもっと楽しめただろうにとも思います。
物語は、現代に蘇ったヒトラーの独白というかたちで進みます。その際、他の現代人との間でほとんど会話がかみ合いません。何しろ彼は自分自身がヒトラーその人だという前提で話し、それに対する人は、彼がヒトラーそっくりさんの現代人と会話しているつもりなのですから。それでいて、お互いに誤解しながらコミュニケーションが成り立ってしまっているのが面白いところ。彼が「コメディアン」として人気者になってしまったのも、また、その「誤解」の積み重ねにによるものなのです。コメディアンとして名を上げたのを足がかりに徐々に「本来」の政治の世界に進んでいこうとする様子も、実在の政治家のようでリアル。随所に皮肉が利いています。
物語の最後に、「ヒトラー」を「ヒトラー」本人と認識して話しかける人物が登場します。その先に何が待っているのか。少し想像してみると、なかなか面白い気がします。ただ、その続編をドイツで発刊しようとしてもひょっとしたら発禁になってしまうかもしれませんね。
翻訳物というのは得てして日本語に違和感を覚えて読み進めるのが苦痛になるものです。しかし、この本は訳者の腕が素晴らしいのか、すいすいと読むことができました。
投稿元:
レビューを見る
上巻前半、ヒトラーがテレビ出始めるまでがちょっとかったるいかな、それなりにはおもしろいけどスピード感を欠くというか。ただ、その後は加速感といい申し分なし。ヒトラー復活のスローガン「悪いことばかりじゃなかった」ってのもある面事実と認めざるを得ない際どいとこ突いてる気がする。トルコ人や南欧東欧系への言葉が、良識ある人間なら口にしにくいことをヒトラーなら言える、って爽快感(というのも問題あるけど)もドイツでバカウケの一因ちゃうんかな?と思ったり。いや、ドイツの情勢とかよく知りませんけども。
投稿元:
レビューを見る
角川の「我が闘争」を読んでいる人ならより楽しめる。
70年の時を経てなぜか復活したヒトラーは、持って回った悪口が内容の六割を占めている「我が闘争」の語り口調そのままだ。
移民政策を斬り、EUを批判し、そして極右政党NPDまでもを痛烈にぶっ叩くヒトラー。その演説調漫談(と皆は思っている)に集まる喝采、そして批判。彼の苛烈な語り口は聴衆を引きつけ、彼はテレビ局の看板スターにまで上り詰めていく事になる。
独善的で、頑なで、偏屈。しかしそれと同時に、激情家で真剣、どこか同情的な面を覗かせる彼は本当に魅力的だ。ヘンなおっさんだが、応援したくなる様な真摯さを持っている。背中を預けたくなる様な自信に溢れている。
「魅力のある、自信満々のおっさん」。味方は心酔し、敵は侮る様な、そんな人物だからこそヒトラーは恐ろしいのだ。頑迷で不合理な、愚かな理論を表明しながら、なぜか肝心な瞬間の機微に長け、紙一重で困難を乗り切る様な頭の良さを兼ね揃えている人物。だからこそ、彼は恐ろしいのだ。
本編では彼は、ヒトラー芸のコメディアンから転身し、再び政界へと乗り出す所で終わっている。それがまたもや第三帝国の悪夢を造り出す序章なのかは、誰にも解らない。オチとしては縫え切らないが、それも含めての黒いエンディングだ。
なぜならこの物語の肝は、物語の外側にある「問いかけ」なのだから。
クリーニング屋で困るヒトラー、他のコメディアンと喧嘩をするヒトラー、秘書の女性を優しく庇うヒトラー、タブロイド紙の猛攻に敢然と立ち向かい、そして勝利を収めるヒトラー。本書と共に彼を応援し、喝采していた「私」にこそ向けられた問いかけだ。
私こそが、あの当時ドイツにいた多くの「私」こそが彼をこうやって支持し、第三帝国を造り上げ、そして世界に地獄を現出させたのではないか。
政界に飛び出した所で終わる本書は、責任を負わない喝采を送り虎の檻を開け放ってしまったのは他ならぬ読者自身である事を、暗に読者に伝えている。
そう、世界の半分を殺戮の業火に巻き込み、史上最悪のヘイトクライムを野放しにしたのは、彼に喝采を送った「あなた」であり、「私」なのだ。
投稿元:
レビューを見る
上巻に引き続き読み終わりました。
やはり、ドイツの風習。風俗。歴史についての
理解がないとあまりよくわからない。笑えない部分が
多いかと思います。またしょうがないと思いますが
翻訳なので、その面においても本当の面白さが
伝わってこないのではないかと。
ただ、ヒトラーの事をまだ厳しく統制されている
ドイツで、ヒトラーが復活して云々のコンセプトは
興味あると思います。それだけにもっと裏が分かっていればと思います。
投稿元:
レビューを見る
とってもおもしろかった。ドイツでこういった本が出せたというのも良い。
本書の彼は、非常に魅力的に感じる。当時、最も民主的な憲法下で選ばれたヒトラーが、その後の歴史の流れはともかく、人々に求められたというのは一つの事実。それこそが、本当に考えなければいけないことではないのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
よみがえったヒトラーは、どんな人物だったのか。果たして戦後に繰り返し語られてきたように愚鈍で高圧的で小心者の独裁者だったのか?だとしたら当時のドイツ国民はなぜそんな「つまらない男」に熱狂したのか?これはそんな疑問から展開する物語である。彼が時代をつくったのと同時に、時代が彼を要請したのではないか。そして時代というのは社会であり、それを構成する我々市民そのものであったのではないか。そんな恐ろしさを感じさせる、シニカルで深い含意に満ちたエンターテインメント。
投稿元:
レビューを見る
思わず、プッ!と噴き出してしまうほどの面白さ。ところどころでブラックジョークをきかせた文章に笑いが止まらない。しかし、ヒトラーをテーマにして作品を描くとは本当にすごい。ヒトラーの「インターネッツ」という発言がじわじわくる。
投稿元:
レビューを見る
あまりの「らしさ」に、あまりの「ピュアぷり」に、あまりの「まじめさ」に、読み進むうちに彼に可愛さまで感じてしました。そこがこの本の怖い所です。まるでミッキーマウス。そう、ヒトラーがキャラ化しているのです。そして、異形をキャラにしてしまうのは異形の側ではなくて、大衆の側なのです。この構図は彼が台頭してきた構図と同じ構図であり、それこそがこの本のテーマなのでは?と思ったりもしました。
投稿元:
レビューを見る
読み終わって、「痛快で面白かった!」と思ってしまった自分に驚いた。
何も知らずに読んだなら、ヒトラーが格好良く、紳士的で、責任感の強い大政治家に感じるだろう。
同じ人物でも、語られ方一つでこうも印象が変わってしまうとは……。
自分の知っていることなんて、どこか一つの視点から見た偏った事実に過ぎないのだろうと考えさせられた。
また、ドイツの歴史をもっと深く知っていれば、より楽しめただろうなと惜しく思った。
投稿元:
レビューを見る
ヒトラーが現在のドイツで生き返った話し。まず小難しいこと抜きに娯楽本として面白いし、吹き出してしまうブラックユーモアもいい。メールのアドレスを取得するくだりなんかは相当笑える。
で、マジメな部分で考えさせられたのはヒトラーが人間としてとても魅力的に描かれていること。いわゆる歴史上のヒトラーは悪魔であり怪物として語られるけど、本物のヒトラーは人間的な魅力に溢れていた可能性があるということ、だからこそ当時のドイツ国民に正当な手続き選挙で選ばれて総統になっているということ。
日本人も当時のことを振り返るとき、一般の国民は全くの無罪で被害者だったのか、ちゃんと考える必要があるとけっこう本気で思う。
古いところでいうと我が島の二十四の瞳であるとか、最近映画化された永遠のゼロなど、悪いやつがいて、国民は被害者であるという視点で書かれているが、本当にそうだろうか、と、考え始める。
投稿元:
レビューを見る
痛快、愉快、本当に面白い。
いわゆる戦中もののタイムスリップ小説って、日本の場合は、ミッドウェイでもし〜だったら、とか、満州でもし石油が見つかっていたら、とかいうもので、どこか右翼的な空気が鼻につく。だけど、この本はヒトラーが現代にそぐわない発言を繰り返す中で、皆笑うんだけど、皆どこか納得してしまう。ユーモアなんだけど、どこかシリアス。このバランスが本当に痛快だった。そして終わり方が、戦中のナチスの暗いイメージでなく、明るい未来が見える感じ。読後感も清々しい。
オススメです。
ただ一つ心配なのが。
この著者はどういう扱いをこれから受けるのだろうね。
投稿元:
レビューを見る
あっという間に読み終わりました。
終わりは?ですが、ここまでヒトラーを自分の主張を正当化して描かれた本が現在のドイツで売れているのも時代のせいなんでしょうかね?
投稿元:
レビューを見る
もっと詳しく当時のドイツの事知ってたら、さらに楽しめたかな〜
続くの!?