紙の本
生死をかけた
2017/06/27 05:21
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間が踏み込んではいけない禁断の科学について考えさせられた。伊藤計劃の意思を受け継いだ、円城塔の思いが伝わってくる。
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
34歳で他界した伊藤氏の作品を、芥川賞作家の円城氏がバトンタッチして刊行。19世紀のフランケンシュタインの技術をワトソンが追う。キックは面白いし、興味をそそられはしたが、それまで。エンタメと純文学を結びつけようという企画に無理がある。駅伝じゃないんだから。
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パラレルな世界、設定に登場人物、そしてストーリー展開。
これだけ好みのものが揃っているのになんという虚無感。
エピローグにハッとするも、最後の世界を堪能できなかったのが残念でならない。
惜しむらくは、円城塔が苦手だったということか、わたしの理解力が足りないことか。
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これは凄かった。どの程度のプロットをオリジナルの著者が用意していたか分からないが、全くなかったとすると、プロローグから創造させる世界観を見事に再現した創造力と筆力に素直に脱帽する。登場人物が馴染の探偵の相棒であることと、実在想像の人物が入り乱れる予感と、死体の再生たる屍者というキーワードから、よくもまあ、ここまでの世界を広げられたものと感心する。芥川賞作家の作品は未チェックで今まで読んだことがなかったが、流石である。SFの醍醐味は虚実を入り混じれて虚が実の様に読者を騙すことであり、読者は虚であるというお約束の下、如何にその虚を楽しむことができるかということだが、本作は本当にどっぷりと世界観に浸り、その余韻を楽しむことができる。ただし、文学的な素養と19世紀の歴史の多少の知識は必要であった方が楽しめる。それにしても本当に多くの虚実を交えた登場人物と歴史、背景、宗教とが、フランケンシュタインという虚を軸に無理なく絡み合い、一つの物語として昇華しているのは見事としか言いようがない。できれば、これをオリジナルの作家で読みたかったというのは読者側の贅沢であり、本作は一つの完成した物語として、まずは楽しみたい。そのうえで、オリジナルの作家であれば、もう少しウェットでダークな語り口と違う結末になったのかもしれないということを想像しながら楽しみことも良いだろう。
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伊藤計劃を読むと世界が変わる。これまでの作品の中でも、物語、言葉の圧倒的な質量だと思う。
ほぼ設計書だけのところからこれを本として世に誕生させてくれた円城塔の熱量にも、それだけで自分の世界が再起動されそうなくらいのもの。
19世紀に活躍したフィクション、ノンフィクションの人物たちがぞろぞろ登場し、近代ガイブン版『リーグオブレジェンド』さながらのエンターテイメントに、敏感で緻密に構築された世界観。両氏の魅力が、弁別不可能なかたちで混ざりあって、まさにたまらない。
どんなに言葉を尽くしても、この本が語る物語をこの本のかたち以外では伝えられない。日本SFの歴史に間違いなく残り続ける一冊だろうと思うけれど、これを同時代に体験できたことを心から幸運だと思う。
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大変申し訳ないがやはりこれは円城塔の作品だ。伊藤計劃の作品ではない。
円城氏の話として捉え切れれば良かったのだろう。生者と屍者の境目が消える、なら生きているとは何を指す? という展開は、そこだけを切り取れば大変熱いものがあるし、文字通り世界を股にかけた冒険譚はガイ・リッチー版ホームズのような迫力がある。面白かった。
でも「虐殺器官」にあったような、生への執着や諦め、といった生々しい力強さはない。良くも悪くも、軽く、すっと流れていく。
面白かったけれど、私の読みたかったものではない。というのが正直なところだ。
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おもしろい! おもしろいよ! 本が好き・映画が好き、て人は読んだ方がいいと思う。
正直理解を超える箇所もあって何が何やらわからなかったりするんだけどね。それを差し引いても読み進めることの楽しさを味わうことができました。
随所に本への愛が溢れていて、自分が気付いてないオマージュもあるのかと思うと、今後の読書生活も変わってくるのではないか。
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正直なところ評価に苦しみます。
すべて理解しきった感がないので、そもそも面白かったとか面白くなかったとか言うべきではないような気もしますが。でも断片的にはゾクゾクするようなおもしろいところもあり、琴線にふれる言葉もあり。最後はやっぱりうわああってなったし。
このもやもや感は、ひとえに円城塔のトーンになじめなかったというのが原因のような気もします(特に現代日本文学は文体で読む本えらぶほうなので・・)。嫌いじゃないし美しいとは感じるんだけど、読みづらいというか、さくさく進めない文体ですね。読むほうの力量が問題になる文章だと思う。
伊藤計劃なら同じもの書いてももうちょっと読みとりやすくしてくれそう。いつも、主題はすごい前衛的だったけど、文章はどっちかっていうと物足りないくらい読みやすかったですよね。このお話をぜんぶ書いてくれてたら、どういう雰囲気になったのかなって気になって仕方がないです。すべて読み終えてからプロローグ(だけがオリジナルですよね?)に戻ってみて、あらためて感じました・・。
でも文学や歴史からの登場人物の引用は、いちいちwktkしました。こんな手法はみたことがない。これだけでも全然読んだ価値がありました。人物の配置のしかたがとても魅力的。あー、カラマーゾフ・・。
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ようやく、読み終わりました^^; 夭折した天才SF作家の途中まで書かれていた絶筆を親友の芥川賞作家が完成させた本です!(◎_◎;) 小説の形はとっていますが、哲学書を読んでいるような感覚でした^^; 19世紀終りを舞台としてはいますが、明らかに、近い将来のこの世界が陥ってしまうかもしれない、一つの最悪の世界、屍者の帝国、、を描いています(−_−;)
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全然サクサクと読み進められなかった。難しいという理由だけではなく、ものすごく淡々としていてそれにのれない感じ。伊藤計劃的エンタメを期待し過ぎたとは思うけど。
部分的にはおもしろかった。人間の意識の話を、未来の人工知能ではなくて過去のしかもフィクションのフランケンシュタインやかなりオカルト的な素材を使って語っていて、でも語っていることは未来のAIにまつわる発想と同じなところとか。精神や知能が生身の肉体から切り離されても機能し得るという題材からは同じような発想が生まれるのかもしれないと思う。
あと最後の終わり方は好きだった。
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伊藤計劃さんが書いたプロローグを受け継ぎ、
円城塔さんが完成させた作品です。
舞台は19世紀末、主人公はのちにホームズ探偵の助手になるワトソン医師。
フランケンシュタインの研究成果により、死者を復活させる技術が開発され、
死者たちは屍者として軍事、
危険労働などの労働力として自由経済を担っている時代。
イギリスとロシアが世界各地で戦争を引き起こしているグレート・ゲーム。
その駒の一つとしてワトソンは軍医として屍者のメンテナンスの技術も身につけ、
戦場へ、そして疑惑を追ってさらに世界を旅していく。
話が展開していくうちに、死者と生者を分けているのはなにか、
というテーマが提示され、死ぬとはどういうことか、
さらには自分の意識とは何かということを考えさせられます。
それはそのまま今の医療の問題とつながっているような気がします。
科学は常に新しい技術を生み出し、そしてそれは世界へと広がっていきます。
その技術の使用には、倫理的な問題をはらんでいる場合があります。
この話の中で常に生み出されている屍者を生産する技術もそうです。
そういう視点は円城さんが科学者だからこそ、伝えたいのかなと思ったりもしました。
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「今回の本はEnjoeTohという小説製造機械にProject Itohというプログラムをインストールしたら生成されましたって言われても普通に信じるなぁ」と想いながら読み始めた。読了してもその感想は変わらなかった。
本当にそんな内容だった。文句なし。
両氏の作品がそれぞれに好きなだけに、期待と不安が入り混じっていたけれど、高いレベルでそれぞれの良さが融合していた作品だった。冒頭だけを手掛かりに、この作品を書き上げた円城氏の技量に唸るばかり。
多彩な登場人物に喜び(そして自分の知識不足に「あれもこれも読んでおけばよかった」と思い)、人間という存在について、意識について、言葉について考える。
読めて良かった。
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サイバーパンクSF。
死者に処置を施すことで人工的なゾンビ(屍者)が兵士や労働力となっている世界。
ワトソン博士がフランケンシュタインを追って世界を回る話。
面白い世界ではあるが物語、特に後半の原理の説明部分に入りこめなかった。
エピローグが伊藤計劃だったのね。
後半の畳み掛けを期待していたので、ちょっと残念。
きっと漫画だったらもっと入り込めると感じた。
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伊藤計劃らしくもあるが、後半は円城塔の持ち前の力技で畳み掛ける。なかなかの秀作。伊藤計劃が生きていればこれもまたどんな作品になっていたのかな、っていうのも想像だけど思わざるをえないが・・・
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特殊な本で、冒頭のプロローグのみをすでに亡くなっている伊藤計劃が書き残し、そこを足がかりに円城塔が書き上げたという小説。伊藤計劃が発端だというだけで読みましたが、確かにこれは伊藤計劃の目論見に近いものではないかと感じました。もちろん本当に書き上げたらだいぶ趣きは違ったとは思いますが、志を引き受けたという感じを強く受けました。伊藤計劃の本を読むことを強くお勧めします。それにしても今の時代はけっこうこの物語を引き受けられる状況にあるんだなぁと読み終えて思いました。
屍者に何かを加えると労働力となり、それが産業革命を支えた…という仮定で、大英帝国の海外進出、アメリカの台頭という時代をフィクションとして作り上げています。すごい力です。
私自身、大学で数学を学んでいた者なので、バベッジの階差機関の登場は納得。こうなるとやがてなんらかの形でコンピューターは命を持ち、街を歩き出すのかなと感じました。