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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.11
- 出版社: 朝日出版社
- サイズ:18cm/106p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-255-00449-5
読割 50
紙の本
文章の品格
著者 林 望 (著)
人が信用を克ち得るかどうかの分水嶺は、「言葉の品格」にある−。ワンランク上の文章上達術や、説得力のある文章を書くコツ、文章を仕上げる前の必須作業など、言葉を磨く方法をてい...
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商品説明
人が信用を克ち得るかどうかの分水嶺は、「言葉の品格」にある−。ワンランク上の文章上達術や、説得力のある文章を書くコツ、文章を仕上げる前の必須作業など、言葉を磨く方法をていねいに指南する、美しい日本語入門。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
林 望
- 略歴
- 〈林望〉1949年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了。作家、書誌学者。バリトン歌手、能楽の創作・解説等でも活躍。「イギリスはおいしい」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。
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紙の本
急がばまわれ
2010/09/27 14:22
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は『NHK知るを楽しむ 日本語なるほど塾』の「リンボウ先生の手取り足取り書き方教室」を加筆、編集して単行本化したものです。ただ、「書き方教室」とありますが、文章の技術論に重きを置いていないところが本書の魅力です。
筆者は、文章の基本は「日ごろの話し言葉」にあると言います。だからこそ、日々の話し言葉を洗練することが、文章の上達に繋がると主張しました。そして、洗練法として「離見の見」という考えを紹介しています。「離見の見」とは、世阿弥がまとめた能楽の伝書『花鏡』に記した考えで、つまりは客観的視線のこと。日常会話のなかで、自分の言葉が相手にいかに伝わっているか、「この意識こそが、じつは文章上達の最短の近道」(18頁)と説きました。
また、独りよがりの文章を戒めています。「文章というものは、自分の思いを「他人に」伝えるためのメディアであって、自分だけで感情を自得してよろこぶためのものではない」(46頁)とした筆者の考えは、公にする文章の本質と考えます。さらに「思いが他人に十分に伝わったとき、文章ははじめてその存在理由を持ったということになる」(47頁)と続けました。文章の存在理由は、日常会話が成立するための条件と重なりそうです。意思疎通のできていない会話が、会話として成立しないことは誰でも理解できることでしょうし、すくなからず誰もが経験していることと思います。
加えて、真似の重要性も筆者は記しています。自分が好きな作家の文章の真似をすることが、文章の呼吸を知ることに繋がるとのこと。そのために文章の筆写を薦めています。そして、仮名、漢字の使い分け、句読点のつけ方、改行のしかたなどの留意点をあげました。ただ筆写するだけではなく、文章の細部に意識を巡らせることが、文章を洗練させ、ついには独創的な文体の体得に繋がるのでしょう。
このことに関連して、筆者は長い年月にわたって読み継がれてきた古典を味わうよう書いています。古典には多くの語彙や描写のヒント、日本の人情や風景の美しさなどが多く含まれている。それらを心に蓄えておくことが、文章を書くときに役立つと指摘しました。現代文の筆写を通じての学びとともに古典からの学びは、文章により一層の深みを与えてくれると筆者は主張しているのです。
「文は人なり」、筆者はこんな諺を紹介しています。文体には人となりが反映するということで、「文章を書いてそれを公にするということは、ある意味で自分を裸で人前に曝すという覚悟がなくてはなりません」(79頁)としました。つまり、文章上達は自分を磨くことから始まると考えてよさそうです。筆者は自己受容を文書上達の第一歩とし、たゆまぬ努力の必要性を説いています。ただテクニックを追い求めてばかりでも、文章上達にはなかなか繋がらない。先人を真似るとともに、執筆以外の経験を重ねることが、文章上達を促す唯一ともいえる確かな道と考えてよさそうです。その第一歩として、入門書たる本書の一読をお薦めします。
紙の本
― イギリスはおいしいが、品格は難しい。 高校生なら読む価値ありか・・・ ―
2009/03/20 01:04
8人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:レム - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、「イギリスはおいしい」で一躍有名になった書誌学者のリンボウ先生こと林望氏の著書だ。 ひところ書物のタイトルにずいぶんと「品格もの」が流行ったが、最近もちらほら出版されているようだ。 リンボウ先生も品格に関する著書を何冊か書かれている。 なお、本書は、NHKの「知るを楽しむ」という番組から起こした本だそうだ。
本書の中で、林氏は自著「イギリスはおいしい」が売れた理由を「離見の見」の哲学を持ち出して説明している。 すなわちこの本の書きぶりが、食文化論にありがちな自己中心的なものではなく客観的表現を用いて語ったがゆえに、多くの読者が引き込まれたのだと考察して自賛している。 それはそれで一つの評価かもしれない。 本書では触れられていないが、ではその客観性をどのように身につけるのか、という点が実は難しいのだが。
この「離見の見」は、世阿弥の『花鏡』にある言葉で、能楽に造詣が深い林氏はこれをさらりと用いたのだろう。 だが『花鏡』には「見所より見る所の風姿は我が離見也 」「離見の見にて見る所は、即、見所同心の見也 」と書かれており、単に第三者的見地を持つべしということのみではなく、自己の殻から離脱して観客と共に視点と価値観を共有し、観客の目線の先を読む(ことで自らの能を舞う)ことが示されている。 林氏のように高い教養がある方は、一言一言に深いバックグラウンドがあるのだから、本書ではそこまで踏み込んだ解説が欲しかった。
そもそも社会生活一般に、多かれ少なかれ何らかの品格は必用とされる。 したがって品格を考えることは特に問題ないだろうし、「品格もの」の本も数多い。 但し、である。 品格を形から手に入れようとしたり、ましてや安易に手に入れようとしたりする考え方、つまり品格を高めること自体を目的対象とする行為があるとすれば、視点がずれていると思う。 例えば、ある人に教養があってそれが品格に現れている場合は、その人が手に入れたのは品格ではなく教養と謙虚な態度だ。 言い換えるならば、教養は身につけるもので、品格はその結果内側からにじみ出るものだろう。 そういう意味で、品格ある文章はそうたやすく書けるものではない。
いわゆる一般の「品格もの」の本の中には、品格を論じつつも行儀(マナー)と混同しているものが少なくない。 ところが文章は、行儀がそのまま品格になって現れてしまう性質もあるので、そこが文章において品格を語る上での難しさなのかもしれない。 ところで、林氏は同じ原稿を複数の雑誌に投稿したりしているが、そういうご自身の姿勢は物書きとしての品格に関わらないのだろうか・・・。
それはさておき、本書の内容は世間一般にある「文章の書き方」物と大差ないものの、古典を含む優れた作品から文章を学ぶことや、いくつかの文章の極意について書こうとしている内容が無難である点で、これから小論文など書き始める高校生には参考になるかもしれない。 より高いレベルを求めるならば、林氏の『文章術の千本ノック-どうすれば品格ある日本語が書けるか』 の方がお勧めである。