紙の本
伝えることの大切さ
2012/05/17 18:21
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第43回大宅壮一ノンフィクション賞は、本書と本書のもとになった東日本大震災の被災地の子供たちの作文集『つなみ』が選ばれて話題を呼んだ。
選考委員の一人猪瀬直樹氏は「津波の怖さというものが大人では書けない文章で表現されている」と高く評価している。
受賞対象となった本書の誕生経緯は次のようなものだ。
2011年3月11日の東日本大震災のあと。ルポライターの森健氏は被災地をめぐり、その惨状をどう伝えるべきか悩んでいた。そんな時に出会ったのが吉村昭の『三陸海岸大津波』という一冊の文庫本だった。吉村の本に載っていた子供の作文に共感した森氏はその企画を文芸春秋にもっていく。そして、自身、被災地へ何度も足を運び、予想外の作文を書いてもらうことになる。
それが、同時受賞となった『つなみ・被災地のこども80人の作文集』だ。
作文を通じて知り合った被災地の人たち。森氏はそのあとも作文を書いた子供だけでなく、その家族にも取材をしていく。「地域や場所によって被害状況も異なるように、個々の被災者には個々の暮らしがあり、家族がある」、そのことに森氏は「取材者として心を惹かれた」という。
もちろん震災から半年以上経っての出版だから、この本に取り上げられている10の家族たちは被災地の復興のみならず、自分たち家族の再出発に懸命に立ち向かおうとしている。
しかし、当然そんな強い人ばかりではない。まだこの時点で気持ちを切り替えられない家族もいるし、作文を書いた子供たちにしてもこれから先どのようなストレスが待っているかもしれない。
被災という言葉を同じであっても、その人たちがもっている感情はそれぞれ違う。
前に向けないことを責めてはいけない。うつむくことも含めて、その人がその人であるという個性だ。
すべての人が頑張れる訳ではない。心が折れることは、被災の大小ではない。
もし、私たちにできるとすれば、そのことを真摯に受け止めることでしかない。
作文を書いた子供たちには、本書の10人めとして紹介されている昭和8年に起きた昭和の大津波のあと同じように作文を書いた牧野アイさんのように、たくましく強く、何度でも津波の恐ろしさを次の世代へと伝える語り部になってもらいたい。
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被災3県の実際に被災した小学生~高校生の作文とその家族の様子を記録した本です。
2011年5月に1度だけ1箇所だけですが実際に被災地を見る機会がありました。目にした光景に言葉が出なかったのは言うまでもありませんが、それよりも実際に被災した人々が前を見ていたことが私には信じられませんでした。
本書のなかでも、「死ぬ直前まで元気だった。自分もそういうふうに死にたいと思っていた。けれど、死ぬ直前まで元気というのは、その元気さを支える日常があってのこと。今の状況は日常を支えるものからやり直さなければいけない・・・これがつらい」と告白している方がいました。
そんな状況で、帰る場所もなくこれから先の目処もつかない状況でなぜ、前を向くことができるのか、その思いでいっぱいでした。
その答えが本書にはありました。「そうするしかなかった。」
しかしそれを自分が本当に理解するにはもう少し時間がかかりそうです。
また、作文が掲載されている子供達は時間的なずれはあるものの、皆変化を遂げています。それは、ある人の言葉をかりるならば「一気に大人になってしまった」ともいえる変化。本書はそれを「誰かが誰かを支え、それによって生かされる、人のもっとも自然で本質的な部分を、被災地の家族はごく自然に体現していった」からと解説しています。
この「人のもっとも自然で、本質的な部分」は現代において何不自由なく生活する多くの人にとっては、意識しなければ感じられなくなっているものだと思います。だからこそ多くの人に本書を読んでもらいたいと思います。
そして今の環境がとても幸せなんだと感じてもらいたい、当たり前なことに感謝できるようになってもらいたい。自分への問いかけも含め、そう感じました。
今回被災した子供達が成人するまでの時間は、私のそれよりも数倍も濃い時間のはず。阪神・淡路大震災は、当時学生だった私には完全に他人事でした。何かをしたいと思うことも、何かをすることもありませんでした。
今回は彼らに対しての尊敬の意を忘れずに、その時間をすこしでも支えていける行動を探して続けていきたいと思います。
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「つなみ」に作文を寄せてくれた子供たち数人と、その家族のその後。
あの作品集は泪泪だったけど、こちらは更に内容が濃い。
被害にあった人々の生活が、更に具体的に想像できる。
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「つなみ」80人の作文集に作文を書いた子どもたちの家族にインタビューをし、子どもたちと家族の被災時やその後を書いたものです。作文の背景がどんなだったか、それは想像以上でした。
子どもはいつも先を見つめるたくましさを持ち、いきつもどりつしながらも、家族で立ち直って行く様子は、本当に頭が下がります。自分は何が出来るのか、支援は細く長く続けていかなくてはならないことを改めて確認しました。
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被災地の子ども80人の作文集「つなみ」の中から10の家族にスポットを当てたドキュメント。「つなみ」に作文を寄せた子どもたちのその後や、作文に書かれなかったそれぞれの家族の事情を、胸をつまらせながら読みました。小さな胸におさめきれない大きな悲しみを抱えながらも、子どもらしい無邪気さで打ちひしがれた大人たちに希望を与える子どもたちの笑顔。誰かが誰かを支え、それによって生かされる多くの人々。そこには、東北の人と人との近さ、ふるさとへの強い愛着が大きな心の支えとして存在している。過去何度も津波の災害から復興してきた地域の底力を感じつつ、一日も早いそれぞれの真の復興を願わずにはいられませんでした。「つなみ」と本書を読んで人間の本質というか、原点に触れたと思いました。さっそく勤務先の学校で、子どもたちや先生方に紹介しました。
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東日本大震災の被災地で、被災した
子供たちの作文集「つなみ」に掲載された子供たちとその親たちの
その後を取材したルポ。
実際に現地に行っても、直後から継続して被災地に足を運んだり、
現地で被災した人に話を聞けるという経験はなかなかできない。
そういう意味で、被災した人たちの生活や心理が、
直後からどのように変化してきたのか、非常に考えさせられ、気付かされる。
個人的に、非常に心に残ったのは、
被災した人たちの多くが、現地に残りたい、そこで住み続けたい、
大震災・津波という恐ろしい経験をした後であっても、
この場所以外に自分たちの居場所はない。
そう考えている人達が多く、それは自分には新鮮だった。
日本は戦後に地域コミュニティが壊れてしまい、
人々が、自分の居場所を失い、漂流するような社会になってきてしまっている。
東北地方にずっと住み続ける人たちは、
日本で失われてしまっているこうした地域コミュニティを残し、
本来の日本の良さをいまだに持ち続けているのではないかと感じた。
被災者の気持ちと日本社会を再考(再興)という二重の意味で、
考えさせられる本だった。
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『つなみ 被災地のこども80人の作文集』の続編ともいうべき本。その中から10人の子のその後とご両親はじめご家族の話を取材されています。作文中の短い一文に込められていた詳細を知ると、前作を読んだ時に、そこまで想像して読んでいなかったことを恥ずかしくも感じ、とても胸が詰まりました。辛い状況の中で思いを込めて作文を書いて伝えてくれたことにありがとうって言ってあげたくなりました。昭和三陸津波と東日本大震災でも被災されたおばあさんの言葉も印象的でした。
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子供たちが作文で描く「つなみの日」。多分作文だけ読んでいたら気づかなかったろう子供たちの思いが丁寧な取材で再構築されている。その家族や大人の物語。「子供たちに生かされる」大人たち、気づかないうちに「大人を生かして」しまう子供たちの力。
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この本の前に「つなみ 被災地のこども80人の作文集」という本があるのですが、そちらは未読です。
でも是非読みたいな、と思いました。
10組の家族が出てきます。
それぞれ子どもの作文と、作文からだけでは分からない家族の物語が後の丁寧な取材によって書かれています。
まず感じたのは、子どもたちの圧倒的な強さです。
父または母をなくした子、両親をなくした子もいます。
でも皆前向きに進んで行こうとする気持ちが、作文には表れています。
もちろん、まだこの後の人生は長く、どのような影響が出てくるかは分かりません。
だけど、少なくともこれらの作文からは「強く生きていこう」という気持ちが感じられました。
そしてその子ども達に生かされる大人達。
子どもがいるからなんとか生きているという感じの方もいます。
「誰かが誰かを支え、それによって生かされる、人のもっとも自然で本質的な部分を、被災地の家族はごく自然に体現していった」と書かれていますが、本当にそうですね。
家があって、そこに家族揃って暮らせる事がどんなに幸せな事なのか。当り前の幸せを噛み締めて、感謝できるようにしないといけない。自分の子ども達にも伝えていかなければならないなと思いました。
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文集「つなみ」を読んでいたのでこちらも購入。作文を書いた子どもたちの背景や家族、その後が丁寧に綴られている。 震災ドキュメントにありがちな、「俺が俺が」的な自画自賛論調や 悲惨さをとりわけ強調するような感じじゃなく、たんたんと事実を追っていく姿勢と、子どもたちへのまなざしの温かさも感じられて、いいなと思った。吉村昭の津波の本にも出てくるおばあちゃんの話と6人きょうだいの次男くんのお話が特に印象に残った。
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地縁血縁を重んじ、家族が結束。唯一絶対とも言える希望を与えてくれる存在が子どもだった。
子どもの物語ってことは、家族の物語ってことなんですね。
地域に根付いている家族。
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吉村昭の三陸海岸大津波に作文を残した子どもが2度めの津波にあっていた
高台へ移転して被害が少ない地域があった 吉浜 あわびで有名
先人の教え
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2011年3月11日、東日本大震災。
その震災にあった子どもたちの作文集「つなみ」がある。被災地の子ども80人の作文集だ。子どもたちの作文は読む人の心をつかみ、この災害を語り伝えるのに適したものだったが、それだけでは伝わりきらない部分もあった。
本書は、10の家族にスポットを当てて、子どもの作文と、その子の家族の状況や思いを取材したドキュメント。
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小学生から高校生まで、被災地の子どもたちの視点というところに興味を持った。この本を作る元となった、「つなみ 被災地のこども80人の作文集」も手にとって見たいと思った。
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小学生から高校生まで、被災地の子どもたちの視点というところに興味をもった。
この本を作る元となった「つなみ 被災地のこども80人の作文集」も読んでみたいと思った。
志學館大学 : ピノコ