紙の本
東西に渡る想像力
2022/05/05 16:53
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本のフィギュアや電気街をモチーフにした、「フルーテッド・ガールズ」に親近感が湧いてきます。故郷オハイオへの郷愁がたっぷりな、「パショ」もお気にいりです。
紙の本
猥雑でパンクな雰囲気のあるハードSF
2021/11/03 20:01
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
下北沢の古本屋で見かけて、即購入。
何年か前から読みたかった2000年代のSF短編集なんだけど、猥雑でパンクな雰囲気のあるハードな作風でかなり良かった。バイオマテリアルの建造物、水資源監視社会、膨れ上がったアジアの大量雇用喪失、どのテーマも今に通ずる普遍的な危機感があって色褪せない。
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エネルギー・資源・産業が枯渇し衰退したさまざまなディストピアを舞台にした10編。
『ねじまき少女』が残念だったので期待していなかったけどこれは
汚水を処理する第六ポンプが故障しメンテナンスを担当する男が修理のすべを求めてさまよう表題作にぞくりとさせられる。
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バチガルピの短編集。
雰囲気はブレードランナー+未来世紀ブラジルな感じ。時間的にはかなり未来なんだろうが、どことなく現代のアジアっぽくもある。
ガチなSFというよりもすこしふしぎな作風でSFはちょっとなーという人でもいけるのではないか。
ただ独特な固有名詞が多々あるのであまり翻訳ものを読まない方には入りにくいかな。
翻訳ものを読む方にはおススメかな。
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この一冊でパオロ・バチガルピという作家の持っているイメージが掴める
人類の未来に対して楽観的じゃない、むしろ悲観的なイメージ
明るい未来ってなんだそれ、もし慰めがあるとしたらそれは暗い楽しみだけ
作中の登場人物は人間臭くて生々しくて、そして物理的に臭そうでいい感じです
新☆ハヤカワ・SF・シリーズには今後も期待
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10 の短編からなる作品集。
歪んだ環境の異世界にゾクゾクする。
「ねじまき少女」と同一世界観な「カロリーマン」と
「イエローカードマン」を読めることも嬉しい。
「第六ポンプ(Pump Six and Other Stories)」(作品集として)
2009 年 ローカス賞COLLECTION部門受賞作品。
「カロリーマン」(掲載作品)
2006 年 シオドア・スタージョン記念賞受賞作品。
「第六ポンプ」(掲載作品)
2009 年 ローカス賞ノヴェレット部門受賞作品。
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海外SFの短編集。独特な用語などが多くすらすらとは読めませんが、同じ世界観の話があるのでそのあたりは読みやすいかもしれません。
環境問題と民族問題をテーマにした作品が多く興味ある人は読んでみてはいかがでしょうか?
個人的には「ポップ隊」「やわらかく」がおもしろかったです。
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2012 3/14読了。有隣堂で購入。
@sakstyleに、覚えている限り初めてバチガルピ作品について勧められた短編「第六ポンプ」を含む短編集。
『ねじまき少女』がかなり好きだった+ネットで評判が良いのを見かけたこともあり、探しだして買ってきた。
案の定面白かった。
以下、各編ネタバレありの感想ほか。
・「ポケットの中の法」
疫病で村を失い、成都に出てきた物乞いの少年が、ひょんなことから手に入れたデータBOXのために陰謀に巻き込まれる。その中にあったのは電子化されたダライ・ラマの意識。
少年がひょんなことから路地裏で事件に巻き込まれ・・・という王道の展開。でもポケットの中にダライ・ラマという格好良さと、ねじまき世界にも通じる、バチガルピの書くアジアの感じがなんとなくいい味を出している。
・「フルーテッド・ガールズ」
封建制が復活している世界で、領主の野望のために身体を楽器に改造された双子の姉妹の、姉の話。
妹と2人、服を脱ぎ、身体をこすり合わせるようにして音を奏でる・・・というポルノショーを演じスターを目指す一方で、恋人を虐待し、殺し、挙句にその肉を客に提供した女領主への復讐を姉は試みる。
妹の存在感が薄いのはなんでなんだろう、と思いつついいところで切ったなあ、という感じ。
・「砂と灰の人々」
人体改造の結果、砂でも鉄でもなんでも食べられるようになり、手足を切断してもすぐ元に戻るようになった人類。そんな人類の中の3人の警備員が、ある日、生身の犬を発見する。
生物学者がやってきて遺伝子サンプルを取ったりはするも、生の犬はいらないから好きにしていいと言われ3人は飼い始める。面倒くさいがなんかいいな、とか主人公が感じだしていたところで犬が大怪我をして・・・。
フルーテッド・ガールズの姉が凄く脆い人間の話なら、こちらは凄い頑健な人間の話。生き物っぽさがそこにはあまりなくて。
・「パショ」
伝統を守る乾燥地の民の、他部族を大虐殺した老人の孫が、その他部族で知識を守り伝える役目を担う「パショ」になって元の村に帰ってくる。
祖父も女の子も自分を受け入れてくれないが、自分は元の村の民だと青年は示そうとする。
落ちはわかりやすい。グローバリズムとかそういう背景を扱っている話。
・「カロリーマン」
ねじ巻き世界の、アメリカ穀倉地帯の話。穀物を支配するカロリー企業の技術を知る人間を逃がす計画に協力を求められた主人公が、知財を守ろうとするカロリー企業の目をくぐろうとする。
ねじ巻き世界の「カロリー」独占の一端である「不稔性」の重要性の話。「カロリー」と「ジュール」の使い分けとか色々面白い。
・「タマリスク・ハンター」
水資源が枯渇した中西部アメリカで、水資源の独占を目論むカリフォルニア州に虐げられる上流の人々の話。主人公は水を吸い取る「タマリスク」という草を刈ることが仕事なのだけれど、こっそり植え替えて仕事がなくならないようにしていた。それが軍にばれたと思いこみ・・・。
水の枯渇は次の世紀の���要な話題だ、と聞く。それを扱っているのが面白かった。目の前に水はあるのに使えない。日本で言ったら四国か。
・「ポップ隊」
不死の技術が開発されたために、出産・育児が禁止された世界で、不法に妊娠・出産を目論む母親たちの摘発と生まれた子どもの「ポップ」を生業にする主人公の話。
現実に不老不死が具現化してもユートピアなんてそこにはない、的な。
自分も「ポップ」の危険を冒す側を選ぶかも知れないが、この話には母親は出てきても父親は出てこない。
・「イエローカードマン」
ねじ巻きにも出てきた元は東南アジアの豪商、しかしマレー半島での中国系虐殺の結果今は難民(「イエローカード難民」)と化した老人の話。
ねじ巻きと同じくタイが舞台で、白シャツもねじまき少女も出てくる前日譚。これは必読。
・「やわらかく」
これはSFではない掌編。突然の衝動で妻を殺してしまった男の話。
わけもわからず泣きたい気分になる感じの話。
・「第六ポンプ」
表題作。食品に含まれる化学物質の影響で知能が低下した人類の話。主人公はその中ではまだまともな方だけど2xとx^2の違いはわからない。そんな人類が、過去の遺産の上に色々動かしていて、もしかするとそれが故障してしまえばもう直せないことに主人公が気づいていく。
ほんと、どれも面白かった。
他にも色々読んでみたいな・・・これからの新作もどんどん邦訳されていくことを待つ。
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『イエロカードマン』は『ねじまき少女』の前日譚なので、組で読むのがいいでしょう。どちらが先でもいいですが、ねじまきを先に読んだ方が話はわかりやすい。
頽廃や崩壊した世界とくくるのはたやすいけど、その中で普通に生きようとする底辺の人を描くのがバチカルピの真骨頂でしょうか?
収録作すべてが「何かが壊れた」世界のお話。
ほとんどに環境問題が絡んでいるのは、作者の経歴のせいかな。
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どの短編も最高に面白かった!
近未来の中国が舞台の「ポケットの中の法」は、雰囲気が抜群。
雨に濡れた、怪物のようにそびえ立つ高層ビル。不気味に光るネオン。
路地裏で物乞いをする乞食の少年。映画になりそうだな~。
「砂と灰の人々」も面白かったです。
砂を食べて養分を摂るようになった人間。(人間と言えるのか…)
そんな彼らの前に「生きた」犬が現れるが…というお話。
荒唐無稽なストーリーながら、妙に人間くさい生々しさがあります。
出産と育児が禁止されるようになった時代のお話「ポップ隊」。
若返りや不死はいつの時代でも切望されていた事ではあるけれど、
それが現実になったら…。こんな恐ろしい世界はイヤだ(笑)
この作品の中では、唯一毛色の違う「やわらかく」はゾッとしますね。
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内容もさることながら、まずは〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉の装丁の心地良さに惹かれて読んだと云っても過言ではない。手塗りという小口塗装のわずかなムラだとか、全体を覆う柔らかなビニールの質感だとか、日頃、文庫だろうとハードカバーだろうと、表紙を外して読む派ではあるが、今回ばかりは質感を楽しみながら読んでみた。
デビュー作『ポケットのなかの法(ダルマ)』のデータメモリーに込められたアイディアや、『フルーテッド・ガールズ』のフェティッシュな世界観。現実の(そしてどこででも起こりうる)問題と地平を同じくする『パショ』等、冒頭から独特な面白さで畳み掛ける。
なかでも気に入ったのは、『砂と灰の人々』『カロリーマン』『ポップ隊』そしてタイトルロールの『第六ポンプ』かな。
人類以外の生態系が壊滅した世界で戦う兵士たちが、ミッション中に絶滅したはずの犬を捕獲したことで始まる犬との暮らし(というのか?)を描いた『砂と灰の人々』。とにかく世界観が異様。砂から栄養分を摂取する人類は、汚染環境に適した新しい生命体のようで、登場人物たちがそこいらの砂をスナック感覚で掴んで食べるのも異様だし、休暇で訪れたハワイの砂浜には汚染されつくした重油まみれの黒い波が押し寄せ、そこでバカンスを楽しむという情景も異様。そんな異様づくしの世界で、前時代の生き残り(犬)との齟齬をアイロニカルな視点で描く。なんというか、いろいろな示唆を含んだ印象深い一篇。
「ねじまき少女」と同じく、ゼンマイが全てのエネルギーになった世界観で描かれる『カロリーマン』は、やはりその独創的なアイディアに尽きますね。後書きにある訳者の説明が簡単明瞭なので少し引用すると、鉱物資源が枯渇し、穀物と筋肉がエネルギー源となった世界で、市場を支配するのが高カロリー穀物を独占しているのが、石油メジャーに代わる「穀物メジャー」。
要するにこの高カロリー穀物を飼料として、遺伝子操作で生まれた家畜の力(筋肉)を使ってゼンマイを巻く。そのゼンマイを動力源とした世界。有り体に云うとこんな感じ。もうこれだけでいくらでも物語が出来そうな、そんな屈強な設定だなあと。「ねじまき少女」も読まねばなあと。
不老不死が確立され、今いる人間だけで生きていくべく出産育児が違法となった世の中を描く『ポップ隊』もまた、『砂と灰の人々』同様に歪な人間観を描く物語。異常な世界に芽生える母性(違法者)を狩るポップ隊に所属する主人公の揺れ動く気持ちが、異常な世界に幾ばくかの光明をもたらすかのよう。そしてタイトルロールの『第六ポンプ』もまた、過去の叡智を喰らい尽くしたどん詰まりの人類を描いた傑作。
現代社会への警鐘をテーマとする物語が大半を占める本作。地続きゆえの不穏さに暗澹たる思いが募るが、どんなに歪んだ世界になっても人間は生きているんだろうなあ…という諦観めいた感情もおぼえる。けして楽しい物語ではないが、斬新かつ独創のアイディアに刮目しつつ、きたる時代に戦きつつ読むべし。
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先に出版された「ねじまき少女」と同じ設定の短編「カロリーマン」「イエローカードマン」を含むSF短編集です。
どの短編も明るい未来というよりは、特権階級と下層民とに分かれた住みにくそうな世界やテクノロジーの発達が止まった世界などデストピア的です。短編のため設定に慣れないまま読み終わってしまうかもしれないので「ねじまき少女」を読んだ後の方が楽しいと思います。
ねじまき世界は、アジアの混沌とした都市の物語ですが、なんとなく日本は科学技術が進んでいるように書かれているのが気になるところ。この設定での日本を舞台にしたスピンオフ読みたいです。
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ポケットの中の法
フルーテッド・ガールズ
砂と灰の人々 ○
パッショ
カロリーマン ○
タマリスク・ハンター ○
ポップ隊
イエローカードマン
やわらかく
第六ポンプ◎
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ポケットのなかの法(ダルマ)
フルーテッド・ガールズ
砂と灰の人々
パショ
カロリーマン
タマリスク・ハンター
ポップ隊
イエローカードマン
やわらかく
第六ポンプ
「ねじまき少女」のバチガルピ短編集。
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『ポケットのなかの法』
活建築が進み貧富の差で住む場所が区別される成都。田舎の村から生活を逃れ流れて来たワン・ジュン。スラムで見かけた男のサングラスを奪おうと後をつけるが・・・。殺害され男。謎のチベット人にある人物に渡すように言われたキューブ。あらわれない人物。キューブの中身を解析中に襲撃してきた男たち。ダライ・ラマとチベットをめぐる陰謀。
『フルーテッド・ガールズ』
領主たちが領地を納める近未来。ベラリ夫人により生きた楽器された少女リディア。リディア、ニアの姉妹での演奏で自分の地位を高めようと考えるベラリ。ベラリに反抗したスティーブン。自由に生きる世界にあこがれるリディアの行動。