電子書籍
古い脳、新しい脳
2023/03/21 02:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
すごく、斬新な考え方が書いてあって、引き込まれました。古い脳と新しい脳に分けた上で、古い脳は、人間の遺伝子の複製と生命の維持を目的とする、その一方で、新皮質は知能。これは、今、どこまで解明されているのでしょうか
投稿元:
レビューを見る
古い脳と新しい脳の関係、それを踏まえた汎用人工知能の定義提案、人工知能が暴走するシナリオのあり方など、興味深い議論も少なくなかった。
投稿元:
レビューを見る
2022-05-07
世界初の商用スマートデバイスPalmを生み出したホーキンスの、本気本。
1000の脳理論ことコラム理論はなかなか刺激的。記憶が偏在している事を見事に表していると思う。
が、意識の問題については疑問。おそらく意図的に知能と知性を混同している。コラム理論で説明しているのは知能でしかない。そして、知性には意識や意思が付随する。動機と言ってもいい。新皮質、つまりモデルには動機が存在しないとも言っているし。
知識とそれを扱う知能を保存し伝えなくてはならないのは確か。だが、知性は残さなくてもいいのか?動機なき知識に本当に価値があるのか?知能と知性は独立して存在しえるのか?
この問題、ワッツが「ブラインドサイト」で提示し、その解説でチャンが反論(というか反対)した問題そのもの。
SFファンではないと明言しているけど、この分野で未来を語るのにそれでは通らないですよ。
投稿元:
レビューを見る
【総合評価 ⒋0】
・革新性⒋5
1000の脳理論については世界の見方を変えさせてもらった。
・明瞭性⒌0
神経科学やAIについての高度な内容を非常にわかりやすい表現で書き表していた。
・応用性⒋0
古い脳と新しい脳という区分は日常生活にも現れてくる教えである。
・個人的相性⒊0
1、2章は良かった。神経科学とAIを理解している著者だからこそ書ける内容であった。ただ、3章については内容が飛躍しすぎに感じた。もっと前半戦を掘り下げて欲しかったというのが個人的な思いである。
投稿元:
レビューを見る
ジェフ・ホーキンス「脳は世界をどう見ているのか」読了。大脳新皮質の構造と役割は座標平面で捉えられるという理論は大変興味深く斬新だった。また、新皮質と旧代の脳幹の隔たりは、ダニエル・カーネマンのスロウとファストな思考と対比して考えると効率良く深く思考するヒントになるのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
図書館で
脳のモデルは座標系、あらゆるものが座標系。
そしてシンプルな分散系。
ディープラーニング深層学習は賢い。ただ知識ではない統計や大量のデータによる分類・推測・予想。
人間の知能こそリスク
知識と知能を伝える
投稿元:
レビューを見る
レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12753800943.html
投稿元:
レビューを見る
脳が情報をどのように認識しているのか、理解できた。そして、それを理解した上でのこれからの時代がどう変わっていくのか、そしてその変化に対してどのような考え方を持つのか私達ははっきりさせるべきだと思った。
投稿元:
レビューを見る
脳が知識や知能を獲得・発達させた仕組みを解き明かすとともに、AI開発を含めた人類のあるべき未来に向けた方向性を提案する一冊。
IT企業家兼脳科学者という特異な経歴を持つ著者は、自身のライフワークとして脳の仕組みを研究する中で、人類の脳は、”遺伝子の乗り物”としての動物的な生存本能を司る「古い脳」の上に、知識や理性を司る「新しい脳」である新皮質を徐々に積み重ねることで進化してきたが、脳の総重量の7割を占める「新しい脳」が外部世界を認識し、知識として蓄積するメカニズムを解明する新説を提案している。
具体的には、「新しい脳」が行なっているのは感知した事物の情報の「モデル化」であり、新皮質に存在する約15万の「皮質コラム」が、事物そのものに付随する特徴的な情報と、それを感知している人間との位置関係の「座標軸」を整理することで、脳は世界の構造を効率的に学習するとともに、新たな情報を感知した際には既存のモデルを使ってその内容を「予測」することができる。
このようなモデルは数多くのコラムが保持しており、複数のコラムによる「予測」を「投票」することで、人間は効率的に外部世界を把握したり、新たな情報を学習したりすることができ、しかもこれは物理的に感知できるものに限らず、言語や数字や民主主義といった概念上の情報にも適用できることから、これらの知識を活かすことで人類は、他の生物を一線を画する進化を遂げることができたのだという。
一方でこのような「新しい脳」の進化がもたらした知能とその成果である新技術などは、人間が相変わらず「古い脳」に支配されていることで、本来あるべき目的外に悪用されるリスクを孕んでいる。著者はだからこそ、AIは「古い脳」の要素を排して「新しい脳」の要素のみを活用することで安全に汎用人工知能を開発することが可能であり、また知識の未来への保存を遺伝子の保存よりも優先するならば、人間自身も含めた遺伝子組み替えは正当化できると主張する。
ともすれば極論として批判されるであろう内容も数多く含まれるが、長年謎とされてきた脳の仕組みに対する有力な新説を提案するとともに、我々が直面しているのは「古い脳 vs 新しい脳」の戦い、つまり人間の存在の目的を相変わらず動物的な「遺伝子の保存」に求めるのか、それともそこから脱却して「知識の保存」へとシフトするのか、という対立軸であるという視点を持つことによって、地球温暖化といった現代社会が抱える問題への対処の難しさの要因も見えてくるのが非常に興味深い。
投稿元:
レビューを見る
最新の脳の研究をしている作者は、パームパイロットを創業者として開発しながらも本当は脳の研究がしたかったそうな。晴れて脳研究にもどって20年近くの研究成果を一般書にまとめた。曰く 大脳新皮質の15万個の皮質コラムは、それぞれが固有の世界モデルの予測をして、予測するための座標系を独自に持っている(はず)。それぞれのコラムが投票をすることによって、一つ(場合によっては複数)の知覚が生成される。詳細なメカニズムはまだ不明だが、この仕組みを1000の脳理論と呼ぶ。
たくさんの予測演算が脳内だ行われ、メモリー空間を整理する適切な座標系が3次元だけでなく 問題によっては高次元で組まれる。数学の方程式を格納する座標系は何次元かは不明だが、個別の問題ごとに座標系を持ち、知らない問題は座標系がないので迷子になるという説明は腑に落ちる。作者1000の脳理論に絶対の自信を持っているようだが、真実はどうかは今後の研究結果を注視したい。
2部・3部は著者のAIや人類の未来に関する想いであり、古い脳と間違った(だまされた)知識が重なり、強権国家やカルト宗教が地球を滅ぼすのが心配というのは同意だが、本書の1部の科学的記述に比べて蛇足と思えたので星3つ。
投稿元:
レビューを見る
ベストセラーだけあって、なかなか面白かった。
遺伝子の複製と生存を目的とする古い脳に対して、新皮質は知能をつかさどる。見る、触れることで、新皮質は常に世界モデルを学習し、予測をするようになり、合理的な判断ができるようになる。しかし、古い脳にも支配されるゆえに、人間は争いや他害をしてしまう。今後の真の汎用型AIには知能をつかさどる新皮質をモデルとすべきで、逆に古い脳をモデルとしない限り、AI自体が人間の脅威になることはない。この考え方は、説得的でかつユニーク。これと関連して、いわゆるフェイクニュースや陰謀論が広まってしまう仕組みも説明されている。
もっとも、皮質コラムだとか、専門的で、少し理解しづらい部分もあるし、古い脳の具体的な定義も少しあいまいな気がした。また、最後の2章は、著者の希望的観測が多く含まれており、少し壮大的すぎる。
それでも、脳の仕組み、AIに興味があれば、読んで損のない一冊。
投稿元:
レビューを見る
なかなか手強い実学書でしたが、なんとか読了。
脳は、所詮、視覚や聴覚等の感覚器から伝わる信号を解釈して学習モデルに従って解釈している、、、って、まんま「マトリクス」の世界観。
あと、第14章で脳をコンピュータに”アップロード”する話は、これも、まんま、アマプラのドラマ「アップロード」の世界観。(そのままじゃん)
ホモサピエンスがその知力により宇宙の存在を認識したとすれば、人類が存在しなければ宇宙も存在しないのと同じ、そういう意味で宇宙は脳内に存在する、、みたいなロジックはなるほどと思いました。我々はちっぽけであると同時に宇宙規模な偉大な存在なのか、と。
人類の未来は古い脳と新しい脳の戦いに依存する。確かに。そして、今のウクライナ禍はプーチンの古い脳が引き起こした悲劇。リスクが思いっ切り顕在化している!
ベストセラーな読み応えでした。
投稿元:
レビューを見る
【はじめに】
著者のジェフ・ホーキンスは、パーム・パイロットを世に出したパーム社の創業者である。IT先端企業を起業し、一定の成功まで導いた間も、その頭の中にあったのは脳の仕組みの解明であったという。そして、経営から身を引いて研究の世界に身を投じた。自らの意識がどのように生まれ来るのかという謎はかくも人を惹き付けるものなのである。
【概要】
脳は世界をモデル化して予測している、という考え方は現在の脳神経科学の世界では主流となっているように思う。中でもフリストンの自由エネルギー理論などが有名だ。本書でも、予測こそが脳の新皮質のもつ普遍的な機能であるとされる。脳は常に予測をしており、感覚器官からの入力に対してその予測が間違っていた場合にはその誤りに注意を向けてモデルを更新する。そういった絶え間ない学習を通じて、脳は世界のモデルを学習し、世界とそこに含まれるすべての構造を反映するように体系化するという。
本書では、その脳内での世界のモデル化がどのようにして行われているのかの仮説を提案している。それが、著者らが「1000の脳理論 (Thousand Brains Theory)」と呼ぶものである。
■ 大脳新皮質 (皮質コラム)
まず、新皮質の物理的構造は、六つの層からなっている。さらにその新皮質に含まれるニューロン間の結合はほとんど垂直方向に層をまたがってつなっている。この層構造を貫くニューロン接続のコラム型構造がその新皮質の構成単位になっていて、そのコラム型構造は脳全体で約15万個あり、それらが脳内にぎっしりと並べられているという。これらの皮質カラムが並行してモデル化と予測を行うことをもって著者は「1000の脳理論」と呼んでいる。
また、皮質コラムの構造が脳内のどこでも同じであることが、新皮質がどこでも同じ原理で動くことを示している。視覚であっても、触覚であっても、言語であっても、高次の思考であってもすべて同じ原理が適用されるはずだというのが著者の考えだ。身体器官からの感覚のインプットをなくした新皮質が他の機能を行うようになることは臨床的にも確認されていて、その考え方をサポートする。脳の領域はすべて同じように見えるにも関わらず、ペンフィールドの身体マップやブロードマンの脳地図を見て、脳の中でそれぞれの分業体制があるように見えるのは、その先にどのような感覚器官がつながっているかによって違っているだけであるというのだ。
新皮質は哺乳類にだけ存在しており、中でも人間の新皮質は大きく、脳の容積の70%を占めている。人間の新皮質がこれだけ大きくなったのは、その構造が単純でかつ汎用的でパワフルであるからだ。進化の過程で新しい機能や構造を発見することなく、新皮質をコピーして増やす方向にさえ持っていけば、生物としての生存に有利となる認知機能を増大することが可能となることから新皮質が大きくなるように進化は働いたと言える。この考えは非常に明快である。進化のタイムスケールから見て非常に短い間に急速に脳の新皮質が大きくなったのは、この汎用性のおかげだと言ってよいだろう。また、われわれが様々な環境の変化に対応できるのもこの汎用性��おかげである。
■ 座標系
では、その共通原理とは何なのか。著者によると、それは「座標系 (reference frame)」を使って世界をモデル化することにあるという。本書内でも例に出ているが、マグカップを手に持って口元に持ってくるにあたっても、三次元のモデル化と身体との関係の構成が必要となり、そのために脳は座標系によって位置と動きをモデル化して予測しているはずだという。その背景には、嗅内皮質と海馬にある格子細胞と場所細胞の存在がある(格子細胞は2005年にモーセる夫妻によって発見され、2014年ノーベル賞が授与された)。
そして、この座標系によるモデルの獲得は、空間や場所の認知だけにとどまらず、一般的な知識に関しても使われているというのが新しい切り口となる。著者によると、脳はこの座標系を使って知識を配置し、その座標系の配置における「動き」が思考であるのだという。哺乳類は、すべての物体の位置と姿勢、そして自分の身体各所との関係を認識するために座標系を発達させてきた。人間はこの新皮質の座標系を、汎用的なアルゴリズムとして知識を含む他のすべての活動にも適用しているのではないかというのだ。
■ 知能・AI
いずれにせよ、新皮質によって実現された知能とは、世界のモデルを学習するシステムの能力だ。結果としてでき上るモデルそのものには価値観も、感情も、目標もない。目標や価値観は、なんであれモデルを使っているシステムによって提供される。そして、人間においてその価値観は古い脳が生み出すものであり、感情も目標も古い脳に依存している。著者が繰り返すように、新皮質は目標を生み出さないのだ。
著者はまた、1000の脳理論で得られた知見からいくつかのAIの未来について論じている。巷で言われるAIが人間の脅威になるかどうかという点については、AI自体では目標を生み出さないという観点でもそのようなことは懸念することはないという。また、AIが意識を持つかどうかに関しては時期は明言しないが意識をもつようになるのではないかという。意識はいずれ「ハードプロブレム」ではなく、プロブレムですらなくなっていくのではないかという。
【まとめ】
第一部の新皮質の汎用性と座標系の話は知的にも新鮮さがあった。よく考えると新皮質がどこでも同じアルゴリズムで動いているであろうことは自明であるように思う。座標系を使ったモデル化が汎用性を持って知能と呼ばれる認知を実現しているというのはありえるようにも思える。それが真実であった場合に導出される結果についての論考がまだ不足しているようにも感じたが、その点は研究の世界で論証が進んでいくのだろうと期待できた。
著者は積み上げられた人間の知識を人間がいなくなった後世や宇宙の中に存在するであろう他の生命体に対して伝えることについて思いをはせる。その点を論じた第三部を書いた理由を、遺伝子よりも知識を優先することを主張するためだという。この辺りの論考が好きな人はいるだろうけれども、自分には少し腑には落ちなかった。
それよりも新皮質が生み出すモデルには価値観も目標もないという点はもっと強調されるべきだと思う。古い脳や身体、感情も含めた総合的な意識の理論というものが構築されていくのではないかと思���ている。
著者の来歴も含めて刺激的な本であった。
投稿元:
レビューを見る
第一部では,著者による「1000の脳理論」が説明されている.また,第二部では,現在のAIと人間の知能の違いについて説き,それを踏まえてAGI(Artificial General Intelligence)を作るための方針と,AGIに対する楽観的考えを示している.AGIに対する楽観性の理由の本質は,知的機械には新皮質的な知能しか存在せず,古い脳による目標/欲求がないことである.第三部では話がガラッと変わり,人間の脳を起因とした人類の存亡リスクと,それを避けるためのアイディアや,地球内の未来の知的生命体および地球外生命体を含む知的生命体たちにどう人類の知識を残していけばよいかについて語られている.
第一部のメモ.
・事実として,大脳新皮質には15万ほどの"カラム"が存在し,似た解剖学的構造を有している.加えて,似た構造のカラムが,それぞれ異なる情報処理能力(視覚情報処理や触覚情報処理)を持つようにふるまう.
・著者は,"カラム"1つ1つが,外界や自身の体の"座標系"のモデルを学習するのだと提案する.
"座標系"を作るやり方をより具体的に言えば,海馬(新皮質より進化的に古い)における格子細胞(外界空間の構造を表現)から進化の過程で派生して形成されたものである.
・考えることとは,座標系を動くことである.数学:まず数学的概念を表すための土台としての座標系を学習する.N次元である.加えて,並列的に,その座標系に載せるべき方程式・定理などを学習していく.演算により,それらの概念間で動きが起こる.
・また,カラム間の情報統合は,遠くに投射する軸索たちによってなされる.統合の流れは,投票である.各々別のモデルを学習しているカラムたちの意見が合わさり,最も多く投票が集まった知覚が意識にのぼることになる.
第二部の,知的機械の持つべき特性
1たえず学習する
2動きによって学習する
3多数のモデルを持つ
4知識の保存に座標系を使う.
近年の,深層学習界隈での「世界モデル」の試みと似た思想だと思った.
その他感想
・脳のネットワーク同期バーストにも,いわゆる投票モデルが当てはまるのでは?
・ロバストなネットワーク型システムのために本質的に必要な"分散性"は数学で表現されているのだろうか?
投稿元:
レビューを見る
脳は物体だけでなく、抽象的な概念も座標系で保存し、理解しているということらしい。そして、感覚を動かすことで認識している。
抽象的な概念と座標系の関係が良く分からなかったが、頭の中を整理出来れば記憶も理解も進むので、何となく理解は出来る。
後半の知識のアーカイブは、考え方としては面白いがその必要性と目的には懐疑的である。