紙の本
旅路の果てに
2012/02/18 16:18
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
アフガニスタンの小さな村に住むエナヤットラー・アクバリ
ある日、母に連れられて隣国パキスタンへ行く事になる。
夜の旅立ち。
宿でのいつもと違う母の態度。
いぶかしげに思いながらも数日を宿で過ごす。
そして、ある朝、目覚めると隣にいるはずの母はいなくなっていた・・・。
隣国とは言え、異国で突然、独りぼっちになってしまった10歳の少年。
生きる糧を得るために各地を彷徨う。
パキスタン
イラン
トルコ
ギリシア
命がけの密入国を繰り返し、ついに5年後、イタリアにたどり着く。
タイトルの由来は、ギリシアにボートで渡ろうとした時、夜の海を見た仲間が怯えて、あんな真っ暗な水の中にはワニがいるかもしれない、と言った事から。
人生には、どんなキケンが潜んでいるか分からない、といった意味らしい。
本書は、エナヤットラー・アクバリがイタリア人作家、ファビオ・ジェーダに語った内容を再構成したもの。
そのため、淡々と語っているような印象を受けるが、それだけに悲惨な部分では、その度合いが増して感じられる。
ただ「本人が過去を振り返って語っている」と紹介されているので、つらい状況の場面でも「最終的にはどうにか乗り越えた」という安心感がある、といえばある。
印象に残るのは「市井の偉人」とでも呼ぶべき人々。
エナヤットの母。
エナヤットを置き去りにしたのは、「究極の選択」を迫られ、子供の身を案じたため。
エナヤットと分かれる前夜にエナヤットと3つの約束をする。
「麻薬には手を出さない」
「石ころ一つでも武器は決して手にしない」
「盗み・詐欺は決してしない。皆に優しく、誰にも腹を立てない」
日本でも、この約束、必ず守れる、と胸をはって言える人は少ないだろう。
エナヤットが通っていた学校の先生。
物静かで、大声を出す事もないが、銃で脅されてもタリバーンの学校閉鎖命令に逆らった人。
命令を伝えに来たタリバーンメンバーとの言い合いでは、冷静で筋の通った意見を言い、相手をやり込めてしまう。
そんな先生が、武装した仲間を連れてきたタリバーンメンバーに殺されてしまう場面は読んでいてもつらかった。
その他にもびっくりするくらい親切な人というのは登場する。
が、その一方、信じ難いほど頑迷な人、というのも出てくる。
当然と言えば当然だし、どこの国にもいる、と言えば、その通りではあるのだが、その落差が激しかった。
ところで、エナヤットは最終的に平穏な暮らしを手に入れる事ができたが、これは幸運な例なのだろう。
よかった、と思う反面、エナヤットのようにうまくいかなかった人々の事を思うと心が痛む。
せめて、募金でもしておこうか。
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読んで良かった。実話ですか。関係ない。泣ける。電車内でもマスクしてれば、
平気で泣けるものですね。序盤とか関係なく、そこここでウルウルしてしまう。
最後の電話のシーンなどは、酷い。トリノの家族も酷い。涙が止まらなかった。
ズルいぞ。自転車も、コーラも、ギリシアの50ユーロも、宿屋とサンダル屋も。
あぁ。もぉ。でも、結局、母親が一番酷い。序盤の行動が、愛情を動機とする
こと云々が語られたとき、果てしない感激があった。働きたいとか学校に行きたい
とか、自由を求める過酷な旅だもの。すごいよ。
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2011.10.02読了。
これがアフガニスタンの現状なのかと思うと本当に悲しい。
私たちにとっては当たり前すぎてありがたみを忘れがちな生活には程遠い生活をしているアフガニスタンに住む人たち。
帰る場所、暖かいベッド、学校へ行くこと、私たちには当たり前でもアフガニスタンでは違う。
そんな幸せを求めて五カ国を旅した少年。
命がけの密入国。
途中で厳しい自然に命を奪われる者、警察に殺される者、強制送還される者。
そして最終的にたどり着いたイタリアで彼は安住の地を手に入れた。
彼はきっと幸運なほうで、彼のように幸運な人はごくわずかなんだと思う。
ちょうど世界報道写真展を見に行った時期に読んだので、タリバーンについて、アフガニスタンについて考えさせられた。
何かできることはないんだろうか...
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恐怖と悲しみ、生きる力強さを感じさせ、心が動きます。
著者が少年の語りを聞き、書き取った事実に基づく物語です。
文庫本程の厚さです。
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この本、2010年に出版されるや、イタリア国内で評判となり、多くの読者の感動を呼んだという。そして、現在では世界27か国で翻訳出版されるまでになっているとのこと。
アフガニスタン人の10歳の少年が、5年にわたる艱難辛苦の末、置き去りにされたパキスタンの国境の町から安住の地・イタリアへ住み着くまでのドキュメントを、聞き語り風に仕立てたドキュメント。ファンタジーなど入り込む隙のない、まさに事実のみが伝えうる非情な実態だ。こんな生死をかけた物語を「冒険」などというひと言では言い表せない。
事実だけが持つ力を感じると共に、いまこうして彼が物語を語れることが感動的。
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タイトルと表紙にひかれて手に取ったら大当たりだった。
アフガン人少年との対話を作家が再話したという小説風ノンフィクション。
エナヤットは10歳のときにアフガニスタンを脱出し、いくつもの国を通ってイタリアにたどりつく。
イタリアにたどりついたのは本人の強い意志によるものだけど、目的地がイタリアだったわけじゃない。
手の届く目標を目の前にぶらさげて一歩一歩進んだ結果、見つけた場所がイタリアだった。
頭も体もフルに使って、とにかく「生き抜く」。
余裕のない場所の大人は、子供相手にも容赦がない。
労働者である子供よりも商品のほうが大事だったり、快適さどころか生命への配慮さえないこともある。
一方、余裕のある場所にいる人は、余裕のない場所を想像できない。
「それって亡命するほどのものなの?」なんて平気で言えちゃったりする。
でも、余裕のない場所にも親切な人はいるし、余裕のある場所にも想像力のある人がいる。
わずかなつながりやチャンスをつないでつないで綱渡りで生き延びる。
エナヤットは助けてくれた人に感謝しつつも、個々の人についてはあまり語らない。
起きたことだけが重要で、そこにいる「人」は重要じゃない(代替可能)という一見ドライな言葉は、とにかく使えるものを最大限に活用しなければならない生活の結果なのだろう。
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アフガニスタンで迫害を受けた少年が8年間に及ぶ密入国を繰り返しイタリアにたどり着くまでの実話。悲しい現実に心が痛みますが、彼はかなり幸せな部類に入るのかも。
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朝日新聞の「読書」欄で紹介されていたもの。
タリバーンから息子を守るために、彼を異国に連れ出し、一人で生きていくことを求めた母親。たったひとりで少年は「不法滞在者」として、パキスタンからイタリアまで長く、厳しい、命がけの旅をするという事実に基づく物語。
事実に基づく話なのに、物語で読むような、困難な出来事が少年を襲う。
けれども、彼は危機一髪、時には奇跡的に、生き延び、ついに安住の地イタリアにたどり着く。これを読むと、神はまだ彼を見放していなかったのだと思える。
最後は油断をしていると、うるっときてしまう。
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タリバーンの迫害を逃れてアフガンから脱出した少年が、パキスタン、イラク、トルコ、ギリシャ、で生き抜きイタリアに(多分)安住の地を見つけるまでの話。実話に基づいているそうで、その国境越えの苛酷さや不法就労の実態に驚くと共に、難民ネットワークのしたたかさや善意の人々の存在に救われる気持ちになり、読み物としても十分に面白い。 日本の難民受け入れ態度も一考すべきという気にさせられた。
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エナヤット!このたった10才の子どもの、奇跡のような逃亡のいや脱出の旅。8年もかけてトリノにたどり着いた彼に心からの賞賛を送ります。そして、それを信じて彼を手放したお母さんにも!
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10歳の少年が一人でタリバンが猛威を振るうアフガニスタンを逃れて不法入国、不法就労を繰り返しながら延々イタリアにたどり着くまでの約8年間の物語.
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アフガンからタリバーンの迫害を逃れるためイタリアへの逃避を描いたノンフィクション。
世界27カ国で翻訳されている本。平和の大切さを考えさせられる。
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アフガニスタンの小さな村に住むエナヤットラー・アクバリ
ある日、母に連れられて隣国パキスタンへ行く事になる。
夜の旅立ち。
宿でのいつもと違う母の態度。
いぶかしげに思いながらも数日を宿で過ごす。
そして、ある朝、目覚めると隣にいるはずの母はいなくなっていた・・・。
隣国とは言え、異国で突然、独りぼっちになってしまった10歳の少年。
生きる糧を得るために各地を彷徨う。
パキスタン
イラン
トルコ
ギリシア
命がけの密入国を繰り返し、ついに5年後、イタリアにたどり着く。
タイトルの由来は、ギリシアにボートで渡ろうとした時、夜の海を見た仲間が怯えて、あんな真っ暗な水の中にはワニがいるかもしれない、と言った事から。
人生には、どんなキケンが潜んでいるか分からない、といった意味らしい。
本書は、エナヤットラー・アクバリがイタリア人作家、ファビオ・ジェーダに語った内容を再構成したもの。
そのため、淡々と語っているような印象を受けるが、それだけに悲惨な部分では、その度合いが増して感じられる。
ただ「本人が過去を振り返って語っている」と紹介されているので、つらい状況の場面でも「最終的にはどうにか乗り越えた」という安心感がある、といえばある。
印象に残るのは「市井の偉人」とでも呼ぶべき人々。
エナヤットの母。
エナヤットを置き去りにしたのは、「究極の選択」を迫られ、子供の身を案じたため。
エナヤットと分かれる前夜にエナヤットと3つの約束をする。
「麻薬には手を出さない」
「石ころ一つでも武器は決して手にしない」
「盗み・詐欺は決してしない。皆に優しく、誰にも腹を立てない」
日本でも、この約束、必ず守れる、と胸をはって言える人は少ないだろう。
エナヤットが通っていた学校の先生。
物静かで、大声を出す事もないが、銃で脅されてもタリバーンの学校閉鎖命令に逆らった人。
命令を伝えに来たタリバーンメンバーとの言い合いでは、冷静で筋の通った意見を言い、相手をやり込めてしまう。
そんな先生が、武装した仲間を連れてきたタリバーンメンバーに殺されてしまう場面は読んでいてもつらかった。
その他にもびっくりするくらい親切な人というのは登場する。
が、その一方、信じ難いほど頑迷な人、というのも出てくる。
当然と言えば当然だし、どこの国にもいる、と言えば、その通りではあるのだが、その落差が激しかった。
ところで、エナヤットは最終的に平穏な暮らしを手に入れる事ができたが、これは幸運な例なのだろう。
よかった、と思う反面、エナヤットのようにうまくいかなかった人々の事を思うと心が痛む。
せめて、募金でもしておこうか。
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ファンタジーっぽい表紙とタイトル。そんなに厚くない本なのですが、重い! 事実に基づいた話ならでの読ませる力、勢いがあります。エナヤット少年の孤独、家族への愛情、何より自由への憧れが、すぐそばに感じられます。
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こんな世界もある。こんな人生もある。日本に生まれてぬくぬくとそだった私はまるで実感わかない話やけど。そのような生き方しかできない人もいるということを知ることに意味があるのか。